第二幕・・・・・開眼の時

 

 

第二章

 

 

 

「この館はどこまで広いんだよ、まったく・・・・・。」

長い廊下を歩きながら百志は深いため息をついた。

無線で連絡を取っている永樹とゼクスも同じ状況らしく、犬の発見には至っていたなかっ

た。先程まで外で吼えていたドーベルマンの泣き声も聞こえなくなり屋敷は静まり返っていた。

カタッ

そんな中での物音に百志は視線を巡らすと、遠くで小さな生物らしき影が動いたのが見えた。

「いた!!おいっ!ゼクス、永樹!いたぞ、早く来い!!!」

無線でそう叫び百志は影を追うように走り出し、影が廊下の曲がり角を曲がったので

百志も追いかけて曲がった。

 

ガブッ

「ガブッ?ってうぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

「ハッハッハッハッハ♪ひぃ・・・ひぃ・・・腹がよじれるぅ・・・。」

「フフフ、その・・なんだ、仲が良いな・・フフフ♪」

百志の悲鳴に駆けつけた永樹とゼクスは目に入った光景に笑わずにはいられなかった。

「うぅ・・・これが仲がいいと見えるのか?お前らの目はイカれてるぞ・・。」

百志の頭部に異様なものがくっ付いていた・・・・いや、噛み付いていた。

依頼のあった犬が百志の頭部にかぶりついていたのだ。見事に頭からタラタラと血が流れ

ている。

「でもこの犬が本当に回収依頼のあった犬なの?」

「間違いないだろう、その首輪についている特徴的な球体のキーホルダー・・・。

依頼人から渡された写真の写る犬がしているのと同じものだ。」

ゼクスが写真を見ながらそう言うと百志は犬を引き離そうとしながら歩き出す。

その時だ、いきなり館の壁が壊れ、百志達は吹き飛ばされる。

「チッ、なんだ!?」

「影だよ、百志さん!!」

そう叫びつつ永樹は持っていたショットガンを影に撃ち込むが影は“吸収”の能力がある

ので銃弾はどんどんと影に吸収してしまう。

「・・・・やっかいだな。」

ゼクスは背中に背負っていた筒から二本の刀を取り出し、すばやい動きで接近して影を斬

るが表面部分で突っ掛かりそのまま影に吹き飛ばされる。

「キャッ・・・。」

「おっと、むやみに突っ込むな。さてどうするかな・・・・。」

吹き飛んできたゼクスの体を受け止めた百志はそう呟きながら影を睨みつける。

「おい、百志。犬はっ!?」

「うおっ!!いつの間にかいねぇ!!」

驚いて見回す百志を見て「ばかものがっ!!」と叫び、ゼクスは犬が逃げて行っただろう方向へ走り出す。

「おい、影はどうするんだよっ!!」

「まかせるっ!!」

「まかせるってさ、百志さん・・・。」

苦笑いを浮かべながら目の前にいる影を永樹が睨みつけると百志はため息をついた後

手にグローブをつけて構えを取った。

 

 

 

「はぁ・・・はぁ・・いったいどこへ・・・・・?」

ゼクスは走りながら周りを見渡すが犬の姿が見つからない。

廊下をくまなくまわしながら歩いているとゼクスはあるものを見付けた。

それをゼクスがゆっくりと拾い上げるとそれは月明かりに照らされて光った。

依頼のあった犬の毛であった。近くに犬がいることを確信したゼクスが再び歩みを進めよ

うとしたその時遠くからゆっくりと足音が聞こえ、ゼクスは刀に手をかけつつ足音のする

方に目を凝らす。そこから現れた者はその場に似つかわしくない姿をしていた。

道化師・・・・・・・・。

そう、ピエロの姿をし、仮面をかぶった男。男はゼクスの捜していた犬を抱きしめていた。

『これですかな、貴女の探している犬は?』

道化師が仮面の所為かくぐもった声を発するとゼクスはゆっくりと刀を抜く。

「そうだ、できればこちらに渡して欲しいのだが?」

『よろしいですよ、でもその前に。』

「?」

『貴女には捕まって頂きましょう!!』

道化師が右手をゼクスに向けると突然右腕から黒い液体のようなものが飛び出しゼクスに

付着・・・いや、巻きつき動けなくしてしまった。

「な、なんだこれは!?」

『眠りなさい。』

いつの間にか動けなくなったゼクスの目の前に移動していた道化師がゼクスの額を指でツ

ンと軽く突くとゼクスの意識は闇の中へと落ちていった。

道化師はゼクスの体を開放すると肩に担ぎ、その場を歩き去ろうとする。

「まてよっ!!」

道化師が振り返ると、そこには百志の姿があった。

「ゼクスを返してもらおうか!!仮面野朗!!!」

「やれやれ、私はこれでも忙しい身なのですがね・・・・・、さっさと死んでください。」

ゼクスの時と同様に道化師の腕から黒い液体が飛び出し、まるで生き物のように百志に襲いかかる。

百志が後ろに飛びのくと黒い液体は先程まで百志がいた床を抉り取る。

その光景に驚きを感じつつも百志は懐からハンドガンを取り出し道化師に撃つ。

しかしこんどは黒い液体が盾のような形になり銃弾を防ぐ。

銃が効かないと判断した百志は銃を投げ捨て道化師の懐に入り込み拳を繰り出すがこれも

黒い液体が防ぐ。そして黒い液体はそのまま鋭い刃物の形になり百志に襲い掛かり、

百志は腕に少し掠りつつも回避に成功する。

「お前、影か!?」

「影ではありません・・・・しかし人間でもありませんよ。それではこちらからも質問で

す、何故貴方はこの少女を助けようとしているのですか?赤の他人なのに?」

「仲間だからだ!!」

百志がそう言うと道化師は仮面の奥で大きなため息をつく。

「貴方はこの少女の価値をわかっていないようですね・・・・。」

「何?」

その時だ、窓を割って焦り顔の永樹が割り込んでくるとそれを追ってくるように影を壊し

て大型の影が乱入してくる。

不意に道化師に担がれていて、先程までピクリとも動かなかったゼクスが少し動き出し

手で包帯の巻かれた右目を押さえる。

「チッ、面倒なことになりましたね、軽く目覚めてしまうようです・・。

今回はこの少女はお返しいたします、それからこの犬も・・・・。それでは・・・。」

道化師はそう言ってゼクスを床に寝かせるとまるで闇に溶け込むかのように消え去る。

影をそのまま永樹に任せてゼクスに近寄った百志はゼクスのある変化に気づいた。

「うう・・・・ぁぁぁ・・・。」

「目が・・・・赤く?」

何かの拍子に外れた包帯の下の右目は赤く光っており、ゼクスはうなされている。

そして永樹と戦闘中の影がゼクスの赤い瞳の視界に入った瞬間・・・・・

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

ゼクスが悲鳴を上げた直後だ、夜なのに空がとても明るく見えた。

そして百志は気を失った・・・・・。

 

 

 

「・・・・っ・・・いったい何が・・・。」

百志が何かにぶつけたのだろうか、頭部の痛みで目を覚ましゆっくりと目を開ける。

そして意識がはっきりしていくと共にフィールドバックする気絶する直前の映像。

ハッとなって百志が周りを見回すとそこは何もなく、立派であった屋敷は無残にも全壊し

ており屋敷の外の家々も凄まじい衝撃によって全壊していた。

「そうだ、ゼクスや永樹は!?」

ゼクスは瓦礫の山の上で意識を失っているのをすぐに見つけた。

傷は負っているもののゼクスの命に別状はない事を確認した百志はゼクスの体を抱え、永

樹を探す。

「永樹!!どこだ、永樹!!!!!」

百志が大声を上げると遠くで瓦礫が少し動き、そして瓦礫をどかして傷だらけの永樹が姿を現した・・・・。

 

 

数時間後・・・食事処【菊花】

百志はゼクスと依頼のあった犬を抱えて永樹と【菊花】にもどっていた。

 

「・・・てなわけなんだが。」

「なるほどな。」

紅実から治療を受けつつ、百志が東京の廃墟で起こったことを一茶に話すと一茶は調理の手を休めて、

視線を窓の向こうの空の方へと向ける。

座敷席では永樹が蒼実から手当てを受けておりその横にはゼクスが布団に寝ていた。

「確かに俺も空から一本の真っ直ぐな光が東京の廃墟に落ちていくのが見えた。そして

その直後に凄まじい破壊音と爆風みたいなものが起きたのが遠目でわかった。

少し調べては見るがたぶんあまり情報を得られないと思うぞ。」

「構わない・・・俺はあれがいったいなんだったのか、知りたいんだ。」

『なら、ご説明いたします。』

その言葉共に一人のスーツを着た男が入ってくる。

「あんたは?」

「私は・・・公安警察所属で近田といいます、以後お見知りおきを。」

そう言ってスーツの男・・・近田はニコリと作り笑いを浮かべた。

この笑いがさらに百志達を深い闇へと誘うのだった。

 

 

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