第七話 ミズガルズの大蛇

第七話 ミズガルズの大蛇

 

 

 

ヨウがレナスを抱えてヴァルキュリアの操縦室に入るとクリスは慌しくキーボードを

いじり、カジは武装のチェックをしながら感想を述べる。

「すごいわね・・・・通信にノイズ一つない・・・・それどころか確実に味方の通信を拾って

る。これがヴァルキュリアの・・・・。」

「真の実力、ってところだな。武装もコッチの操作がダイレクトに伝わっていて

自分の体みてぇだ。。」

“それにしても”とカジはニヤニヤと笑いながらヨウの方に顔を向け

「で、お二人さんは俺たちにいつまでそのラブラブシーンを見せ付けているわけ?」

「な!?」

一気に顔を赤くしてヨウは急いでレナスを下ろす。レナスは相変わらず表情を変えない。

咳きを一つしヨウは艦長兼操縦席に座る。

「ゴホン、それじゃあクリス、艦隊に通信、これよりヴァルキュリアは第十三艦隊に合流します、と。」

「わかったわ。」

「よし、レナス、ヴァルキュリア全システム起動。」

「はい、マスター・・・・。」

レナスが頷くのを確認し、ヨウは操縦桿を握ると手になじむ感じに少し驚きをしつつ

握り締める。

「よし、いくぞ・・・・・。」

エンジンの出力の上がる軽い振動を感じながらヨウは操縦桿を引いた。

 

 

 

 

第十三艦隊は数を三分の二まで減らしていた。理由は・・・・・。

「あのコードネーム【ベルセルクアロー】が発射態勢でいます!!!」

「くっ!!まだあんなのを持っていたとは油断しましたね。」

地球軍は敵異星人艦隊の中に月軌道上にいたときの三角錐の巨大砲台を、狂戦士を倒す

大弓ベルセルクアローと呼んでいた。一つは破壊したがまた一つ、敵艦隊に現れたのだった。

「プ、プゥ〜」

ルナが冷や汗を流すと、アインが心配そうな声を出す。

そのアインを撫でて落ち着かせつつナルは自分に言い聞かせるように言った。

「大丈夫ですよ、彼らはきっと来てくれます。」

「艦長!!敵機動兵器が複数接近してきます!!!!ベルセルクアローはエネルギーチャージ中!!!!

「迎撃を!!」

迎撃用兵器が火を噴き、敵機動兵器が火を上げて撃破されていくが・・・・

「ダメです、迎撃し切れません!!接近します!!」

迎撃し切れなかった敵起動兵器がどんどん接近してくる。

「くっ!!」

ナルが諦めかけたその瞬間、どこからかレーザーが飛んできて接近してきた敵機動兵器を撃破した。

『お待たせしました、大佐。』

「ヨウさん!!」

フォボスから飛んでくるヴァルキュリアを外部カメラが捉えた。

『可変して蹴散らしますので援護をお願いします。』

「分かりました、全艦援護射撃を開始、ヴァルキュリアを支援します!!!」

 

 

 

 

「レナス、可変開始してくれ。」

「了解しました、マスター。可変開始します。」

操縦室が少し暗くなり可変による振動が伝わり、ヨウの腕に金属の機械が取り付けられる。

「なるほど・・・・これも前よりシックリきているし俺の動きに寸分のズレなくヴァルキ

ュリアの腕が動く・・・・これがヴァルキュリアの100%の能力か・・・・。」

「いえ、まだです。ニーベルゲンの指輪起動・・・・・。」

さらにヴァルキュリアの胴体から五つのリング状のものが発射され、それがヴァルキュ

リアの周りを漂い始める。

「こ、これは何だ?」

「自立兵器【ニーベルゲンの指輪】といいます。用途としましては・・・・。」

レナスが説明を言おうとした瞬間、敵艦隊からの砲撃が飛んでくる。

するとニーベルゲンの指輪がヴァルキュリア周辺を漂うのやめ、敵攻撃の飛んでくる敵

前方に集まり光を放つ。

「あ、あれは。」

「ニーベルゲンの指輪、防御モード開始します。」

当たれば操縦室直撃の飛んできたレーザーがニーベルゲンの指輪の放つ光に当たった

瞬間弾かれた。レナスが再び説明を始めようとする。

「用途としましては・・・・。」

「いや、わかったからいいよレナス。すごいな・・・・。」

「ヴァルキュリア、攻守隙なしってところかぁ?」

「それは違います、カジ様。ニーベルゲンの指輪は大量のエネルギーを消費するため起

動しているときは並行して武装を使用することができません。」

「なるほどね・・・・・って感心してる場合じゃないわ。

ナル大佐からの情報だと【ベルセルクアロー】はあと一〇分で発射準備を終える予想らしいわ。」

「よし、前回同様の方法で行くぞ。」

そしてヴァルキュリアは一気に加速し、ヨウ達にかなりのGがかかる。

「敵艦隊集中的にこちらに攻撃を始めました。」

「うっしゃ〜俺が迎撃・・・・・。」

「いや、いいよ、カジ。ニーベルゲンの指輪で十分さ。」

“あ、そうか・・・・・。”といいカジはショボンと小さくなってしまった。

「あらら、カジが珍しく拗ねたわね・・・・・珍しい。悪い事でも起きなければいいけど。」

「よしてくれよ、クリス。これ以上悪いことが起きたらたまらない・・・・。」

接近してくる敵機動兵器をバークヌーバーでなぎ払いつつヨウが呟く。

「【ベルセルクアロー】発射予定まであと七分です、マスター。」

「ああ、おいカジ!!そろそろお前の出番だぞ!!ニーベルゲンの指輪じゃ接近してく

る敵は防げないんだからな!」

「おうよ!!お任せあれ、だ!!!!」

「あら、相変わらず復活が早いわね・・・・・。」

「俺は不死身だぜ!!いくぞ。」

カジの指がキーボードを走るとヴァルキュリアの様々な武装が敵艦、敵機動兵器を

次々と撃墜していく。

「【ベルセルクアロー】まで距離50キロです。」

「よし、バークヌーバーエネルギーチャージ開始。」

「了解しました、マスター。エネルギーチャージ開始・・・・・・。」

 

 

 

 

【ヨウ達が戦闘を繰り広げている宙域の火星を挟んで反対側】

『フフフフ、あれ(ベルセルクアロー)を送ったのはいいけど、ヴァルキュリアには無

意味な気がするけどね・・・・・。』

「・・・・・相手の成長の程度を見るには丁度いい・・・・。

ヴァルキュリアか・・・・・・・過去にお前を追い込んだ艦だ・・・・・。どうだ?」

『クス♪何が?』

「お前はヴァルキュリアを恨んでいるんじゃないか?と聞いているんだ。」

『フフフ♪愚問だねぇ〜僕は楽しければいいのさ。【昔】のヴァルキュリアとの戦いは

楽しかった。だけど【今】のヴァルキュリアはまだまだ青い果実・・・・熟れるまで待たな

きゃ♪とりあえずヨルムンガルドを呼んであるからぶつけてみようかな。』

「ロキ・・・・・貴様はよく分からん性格だ・・・・・・・。」

『それは君も同じだと思うけどなぁ〜シェニキ。あ、あれ(ベルセルクアロー)が破壊

されたみたい。』

巨大な黒い影が火星をバックに不気味な光を放っていた・・・・・。

 

 

 

 

「よし・・・・・破壊完了したな。クリス、ナル大佐に連絡。」

「分かったわ。」

「ふぃ〜、なんだかすっげぇ疲れたぞ。」

ヴァルキュリアは【ベルセルクアロー】を破壊し、敵艦隊も撤退を開始していた。

ヴァルキュリア乗員全員が一息つこうと思った瞬間、操縦室内に警報が鳴り出す。

「なんだ、レナス!!??」

「ヴァルキュリアより数キロの地点に空間湾曲を感知・・・・・ワープと判断します。」

レナスの報告にカジが叫ぶ。

「なにぃ!!!ワープなんて地球軍は開発もできてすらいねぇのに!!」

「湾曲増大・・・・・アンノーン、ワープアウトしてきます。」

そして出現したのはヴァルキュリアより大きい縦長な戦艦、その戦艦のヴァルキュリア

側の装甲が開き多数の砲門が顔を覗かせる。

「なっ!?」

「アンノーン、近接砲撃・・・・来ます!!!」

凄まじい振動がヴァルキュリア操縦室を襲った。

「損害は!?」

「ニーベルゲンの指輪で防ぎきれず、三発直撃しました。サイドブースター損傷。

ニーベルゲンの指輪、出力70%にダウン・・・・・・・。」

「カジ!!」

ヨウが叫ぶと、カジは無言で頷き、キーボードに指を走らせ、武装を起動させる。

「解析の結果、アンノーンは【甲殻近接艦ヨルムンガルド】と判明。」

「レナス、何故あの艦の事を知ってるんだ。」

「先ほどオーディンによって解凍されたファイルの中に過去の戦争(ラグナロク)の時のデータがありましたので、

そこから・・・・・・・。ヨルムンガルドから通信。」

そしてメインスクリーンに映ったのはスキンヘッドの頭に蛇の刺青をした筋肉質な男。

その耳はレナスのように長く、額には宝石のような物が埋め込まれていた。

その男が口を開く。

『久しぶりだな、ヴァルキュリア。』

するとレナスがスクリーンに向かい一歩踏み出して口を開く。

「お久しぶりです、ヨルムンガルド。トールのミョンニルで撃墜されたと聞いていましたが。

どちらにしてもできればお会いしたくありませんでした。」

スクリーンに映る刺青の男はヨルムンガルドの生体コンピュータなのだろう。

その男が笑みを浮かべる

『そうもいかん。あの方の命なのだから復活しないわけにもな・・・。』

「ロキ・・・・ですか。やはりあなたを撃墜するしかないようです。」

『それはこちらの台詞だよ、ヴァルキュリア。では始めようか。』

そしてスクリーンから男が消える。

「お友達?」

クリスがヨルムンガルドを指差すと、レナスは言った。

「クリス様達の言葉を借りれば悪い意味での腐れ縁です。

空間湾曲を再び感知。ヨルムンガルド、ワープに入ります。」

レナスの言葉と共に先ほどまで外部カメラで捕らえていたヨルムンガルドの船影が一瞬で消える。

おもわずヨウが声を上げる。

「なっ!?消えた!!」

「過去の戦いと戦法が変わっていなければヨルムンガルドの戦法は決まっています。

ヨルムンガルドの装甲は厚く少しの攻撃ではびくともしません。そして武装面では

近接砲撃用の武装しか装備していませんがその数は大中小合わせて数は70を超えます。

その装備を活かしワープで一気に敵艦に接近、近接砲撃を一気に敵艦に撃ちこんで

またワープの一撃離脱の方法を使用してきます。」

カジがレナスのほうを振り返る。

「つまり、近接砲撃戦はコッチにとっちゃかなり分が悪くて勝てる見込みがあるとすれ

ば中長距離砲撃しかないって事かい?」

「その通りです。」

「じゃあバークヌーバーを【ベルセルクアロー】の時みたいに突き刺して発射したらどうなの?」

クリスの提案にレナスは首を横に振る

「不可能です。エネルギーチャージ中の時間を見逃してはくれないでしょう。」

“まいったな・・・・。”とヨウが呟いた瞬間再び警報が鳴り響く。

「空間彎曲を感知・・・・・・来ます。」

 

 

 

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