011:英雄

 

「ふんっ!!!」

俺が横なぎに剣を振るうと派手な鎧を着た敵指揮官が血飛沫を上げて倒れ、俺の鎧をさら

に赤く染める。

「つまらんな・・・・・・。」

俺がそう呟き、剣を空に掲げる。そう勝利の合図となるポーズ。

味方から歓声が上がり、敵軍が撤退していく。

 

英雄万歳!!」

ひとたび国に凱旋すればそう呼ばれて迎えられる。

兵士達にとって英雄とは大量殺戮の称号でしかないのに・・・・。

「民衆は何もわかってはいない・・・・・。」

俺は民衆に手を振りつつも呟いた。

 

「わが国を守った貴殿に対して、名誉と・・・・・・。」

城のの王の間・・・・。

俺の目の前で王が長ったらしい言葉を並べる。

どうせコイツ(王)はまた民衆の税を貪り食うだけなのに、

誰がコイツに褒められて嬉しいだろうか?

「よってこの勲章を・・・・・・。」

王が俺の胸に勲章をつけようとするのを手で押さえる。

「申し訳ございませんが、私には不要な物にございます。」

「なに!?」

一気に王の間がざわめく。騒ぐ事でもないだろうに、実にくだらない。

「私は他の兵と同じように戦っただけです。特別な働きはしておりません。」

これ以上こんなくだらない場に居たくない。俺はそう思い、王の側近達の制止を振り切り

王の間を出た。

 

家に帰り剣をベットの傍に置き、ベットに横になる。

つまらない、何故英雄がいいのだろうか?

何故大量殺戮した人間に勲章が渡されるのだろうか?

いや、くだらない。俺は戦い続けるのみだ。

いつもベットに横になりつつ自問する考えだ。

しかしすぐにやめ、目を瞑る。少し寝よう。

いつになるかわからないがまた戦いが起こるのだから・・・。

 

数日後、すぐにそれは現実となった。

最近国力を伸ばしてきた隣国がついに攻めてきたのだ。

剣を構え目線を前に向けると人間の黒い群れがゆっくりと歩いてくる。

「弓隊構え!!」

指揮官がそう叫ぶと弓を構えた兵士が前に出る。

「放てぇ!!!」

矢が飛んでいき敵兵がバタバタと倒れていく。

「歩兵隊!!」

指揮官が声を上げると俺は前に出る。

「突撃!!」

俺は剣を掲げ走る。そして一気に敵兵の中に突っ込む。

「ウオオオォ!!」

俺に振りかざされた剣を避け、敵兵の腕を斬り捨てる。大抵の敵兵はその痛さに転げまわ

る・・・・はずだった・・・・。

「何?」

腕を斬り飛ばされた敵兵は、“初めから斬り捨てられた腕がなかった”かのように残りの腕

で剣を振り上げる。

その敵兵の目は完全に正気を失った狂気な目をしていた。

「クソッ!!」

俺は剣で敵の首を斬りとばす。やっとそこで敵兵は死んだ。

周りを見渡すと他の兵たちも敵兵の異様さに混乱を隠せないようだった。

俺は叫ぶ。

「どうかはしらんが敵は痛覚がないようだ!!急所を狙い、一撃で倒せ!!」

そして俺は斬って斬って斬りまくった。初めは白銀に輝いていた鎧もまた、血によって赤

く染まっていった。

 

初めは勢いのあった敵国の軍だったが次第に勢いが弱まり逆に俺の居る国の軍が敵国首都

に迫る状況になっていた。

「フンッ!!」

突っ込んできた敵兵を一撃の下に切り捨て、俺は一番乗りで首都に切り込むが、そこに兵

の姿はなく、住民や敵軍を指揮していたはずの敵指揮官も居なくなっていた。

「チッ!!逃げたか・・・・・。」

俺は走りを歩きに変え、大通りをゆっくり、警戒しつつ歩いた。しばらくすると町の中心

らしき広場に出る。すると目の前に大きな祭壇。そして・・・・・・

『朝日が昇り

夕日が沈む・・・・。

人が人生もまた同じ。

恐れはしない、そう・・・・、

私は新しい世界へ・・・・・・・・。

新しい世界へ行けるのだから。』

派手な衣装を着た女性が歌っていた。

おそらく自分への鎮魂歌を。

そして俺は敵兵の狂気の理由を知った。彼女は歌で人の心を操る歌姫なのだ。

俺は彼女に近づいていき、そして話しかけた。

「何故そのような歌を歌う?歌姫よ。」

彼女は無表情に口を開いた。

「私は歌を歌う事で死神になりました。次の死は私の番だと思いまして。」

その言葉で、俺は彼女が死にたがってる事を知り、剣を構える。

すると彼女はユックリと目を閉じた。

その目の閉じた顔は恐怖もなく、喜びもなく、ただ義務を達するだけだとでも言いたいか

のようにただ目を瞑っているだけだった。

バカらしい・・・・俺はそう思った。俺は敵意がある奴はどんな奴でも切り捨ててきた。

しかし彼女はただ死を待っているだけだ。殺してやるわけにはいかない。

俺が鞘に剣を収めると、彼女は目を開け初めて感情を俺に見せた。

怒りを・・・・・。

「何故?何故斬らないのですか!?」

「それだけの覚悟があるなら、生き抜いて見せよ。

そして貴女は、貴女の歌によって死んでいった兵の命を背負い

そして歌うのだ。兵の霊を慰めるために。」

彼女の叫びに、何故か俺の口から自然に言葉が出た。

するとしばらく彼女はポカンとしたあと、涙を流しつつ微笑んで、

「わかりました、私は歌姫として歌い続けましょう。」

俺は頷いた。

そして俺が彼女を保護しようとしたとき、彼女は驚きの顔をいきなり浮かべ、俺の前に立

った。ドンッという音と共に何処からかの矢が彼女の左胸に刺さり、彼女は力なく倒れて

いく。俺は急いで彼女の体を支える。

「おい、死ぬな!!」

俺はそう叫びつつ、しっかり急所である左胸に矢が刺さっており、彼女が助からないと判断していた。

何故か俺の顔に涙が伝った。彼女はまた微笑み、声にはならなかったが口の動きで言葉を紡いだ。

「ワタシハウタイツヅケマス。」

そして力なく彼女は目を閉じ、動かなくなった。

彼女は歌姫としてあの世に行っても歌い続けると最後に宣言したのだ。

俺も何か宣言しなければならない・・・。

俺の心の中、悲しみと共にそう考えた。俺は・・・・・・

「俺は誰もが知る英雄になってやる。それまでは何があろうとも戦い続けよう!!」

そして彼女の亡き骸をソッと床に寝かせ振り返る。

「ヒエェェェ!!」

すると彼女を死に追いやった弓を持った敵指揮官が逃げ出した所だった。

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

一気に走り出し、剣を抜き放ち敵指揮官の背中を斬った。

ギャアと言う声と共に倒れた敵指揮官の左胸に剣を突き立て止めを刺した。

「俺が英雄になり、貴女の居る所にいったとき、貴女は歌い続けてくれるよな。」

空を見上げつつ俺は呟いた。

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