「One day」

One day」


寒さに凍え力尽き枝から落ちる小鳥は
自分を哀れと思わない……


「何、読んでるんだい?」
 いきなり声をかけられたエリシアは、はっとした。
 油落とし専用のワックスタイプ石鹸のきつい香りが鼻につく。
 エリシアが慌てて振り向くとノイン隊長がタオルで手を拭きながら立っていた。
 恐らく自機であるヴァルキリーガンダムの整備でしていたのだろう。
「の、ノイン隊長…すみません、本に集中していたので部屋に入って来たのも気がつきませんで

した」
 ばつが悪そうにそう言うエリシアにノインは笑いかけた。
「気にする事はないよ。それに、このチームでは敬語はいらないからね」
「はあ…そうですが、習慣で…」
「まあ、慣れてくれ。ハイマンはすぐ順応したよ」
 そう言って横をみるとルドルフ・ハイマンがテーブルの上にごろ寝してる。
「…あ、あいつは特殊なんです、まったく、もう!」
 ノインはエリシアが手に持った本に気付いた。
「その本は詩集だね。エリシアはそういった感じのやつも読むんだね」
「ああ、たまには……それに、これ…」
 エリシアは少し言葉につまりながら言った。
「…これ、親友の形見なんです」
「友だちの?」
「ええ、前にいた部隊で一緒だった。とってもいいパイロットだったんですよ。…それといい奴

だった…」
「そう…」
 寂しげに答えるエリシアにノインはそれ以上尋ねはしなかった。


 その時、轟音が響いた。
 窓ガラスがビリビリと振動する。
 外を見ると巨大なモビルアーマーがジンに誘導されながらエリシアたちのいる建物の横を進

んでいた。
「随分、大きいですね。…モビルアーマーに見えない」
「試作機ブルタリティスだな。ちょっとした巡洋艦級だよね」
MSの10機分はありそう」
 何ヶ所かに設置されたモア・アイが時々、何かに反応しているのか頻繁に動いていた。
「あれは人工知能を積んだ無人機の試作でもあるんだ」
AIか……マリアと同じですね…あっ! ごめんなさい」
「謝ることないさ。マリアはたしかにAIだしね」
 マリアとはMSヴァルキリーガンダムと接続されアンドロイドタイプのAIで武器管制、機体

コントロール、生命維持装置等の管理を行う。ノインが死んだ恋人と一緒に開発したものだった。

その姿は恋人の姿を模してる。かつての恋人と一緒に製作した事もあるがノインがマリアに思い

入れがあるのは誰が見てもあきらかだった。
 それについて触れないことは部隊の中では暗黙の了解だった。

「それより、みなよ、あの装備。君のブレード・ガンダムにも負けてないよ」
 ブレード・ガンダムはエリシアの愛機で大量の白兵戦兵武器を装備した接近戦用MSだ。かつ

てグフイグナイテッドのテストパイロットはエリシアはそのスキルと実戦での勇猛果敢な作戦

行動からブレードのパイロットに抜擢されていた。

 横切るブルタリティスには大口径のガトリングガンが何ヶ所かに取り付けられていていた。そ

れに付随するモア・アイと別ビーム火器類。この無人モビルアーマーには死角なし、といった感

じだ。
「ほんとだ。何口径あるのかしら? あれはブレードの装甲も耐えられないかも」
その時、モアアイのひとつが窓のエリシアとノインに焦点を合わせた。はっとする二人にガトリ

ングガンが向けられ突然、高速回転した。当然、発砲などされず、ただ砲身が高速回転するだけ

だったがターゲットにされた方はあまり感じのよいものではなかった。
「何か感じ悪い…」
「ちょっとした悪戯さ。気にすることはない」
「それにしても…」
 ちらりと横を見るノインはテーブルの上に気持ち良さそうに寝ているルドルフを見た。
「ルドルフはすごいね。この音の中でも寝てられるんだから」
「でも、テーブルの上なんてはしたないわ」
エリシアはルドルフのそばにいくと本の角で頭を小突いた。
「はにゃぁ…もう食べれませしぇん…」
 何の夢を見ていたのかルドルフはそう言って勢いよく飛び起きた。拍子にエリシアの腕に当た

り、持っていた本が落ちた。
 落ちていく本の下には誰かが飲みかけのコーヒーが置いてあった。まずい事に落ちた本はコー

ヒーカップを直撃し、表紙にコーヒーがかかってしまう。
「あーーーーっ!」

「あれ? エリシア? おはよう」
 寝ぼけ眼でエリシアを見るルドルフはのん気にそう言った。その態度が益々、エリシアの気持

ちを逆なでした。
「おはようじゃないわよ! なんてことすんのよ! 大事な本なのよ!」
「え?」
 見ると本の表紙にはコーヒーの茶色の色がどんどんしみこんでいる。慌ててふき取るエリシア

だったが無駄なあがきだった。
「なんだよ、本くらいで…」
 その一言で、ついにエリシアの線が一本飛んでしまう。
 バチン!
 ルドルフの左の頬に真っ赤な手形がついた。ルドルフは勢いで椅子を倒してひっくりかえって

しまう。
エリシアの方は、一撃を加えた後、怒って部屋から出て行ってしまった。

「大丈夫? ルドルフ」
ノインにひっぱられて起き上がるルドルフは涙目で殴られた頬を押さえた。
「な、なんだよ。たかが本の事で!」
「確かにオーバーかもしれないけど、あれはエリシアにとって大事なものらしいからね」
「はあ? 隊長もエリシアの肩もつの?」
「そういうわけじゃないけど、さっき死んだ戦友の形見って言ってたから」
「えっ?」
 ルドルフの顔が珍しく真面目になった。



「各機能正常、核エンジン安定」
 基地に設けられた無人モビルアーマー"ブルタリティス"のモニター室では機能をチェックす

る作業が続けられていた。室内には、幾つものコンピュータ端末が置かれていた。ある端末は機

能の一部の専用モニター。また別の端末は駆動システムモニター専用の端末。ブルタリティスか

ら送信されてくる大量のデータを収集、分析していた。
「順調だな。結構だ」"ブルタリティス"コントロール室主任は満足げにそう言った。
「主任、bRコンピューターが不安定なんですが」
 部下の一人が主任にそう声をかける。
「ウイルスかもしれん。チェックしておけ」
「了解」
「ところで最近、ここのホストに侵入しようとしている奴がいるらしい。情報管理部からも注意

の通達があったばかりだったし気をつけないとな」
「ウイルス攻撃ですか。一体どんな奴がそういったことするんでしょうかね?」
「さあな、敵国かテロリストか暇つぶしの学生か……」
「ネットに国境なしですね」
 主任は肩をすくめた。

 別のスタッフが書類を抱えて入ってきた。怪訝な顔でそのスタッフを見る主任。
「これ、装備火器のリストです。操作プログラムがまだ入力されてないそうですが…」
気弱そうな若者は申し訳なさそうにそう言った。
「何言ってる? 今日は移動テストだけだったろ? 付いてる武器は飾りだ」
「いえ、実弾テストも今日、行うそうです。実弾も装備済みです。聞いてません?」
「聞いてないよ! まったく…」
 主任の声が荒くなる。今までも連絡の不備等で火器装備チームとはトラブルがあったので、彼

には大分、鬱積したものがった。
「あ、あの…ぼく、操作プログラムの転送をしちゃいたいんですが…いいですか?」
「勝手にしろ!」
 主任は若いスタッフを怒鳴りつけた。
「は、はい。コンピューターはどれを…?」
「いくつか空いてる! どれからでも送信できるから好きなのを使え! 」
 若者は、慌てて近くにあった空いていたコンピュータの前に座った。
 彼は、早く自分の部署に戻りたい一心で素早くキーボードを叩いた。

 Enter?

 表示が出るとすかさずキーを押す。
 ハードディスクの回転の音がかすかに聞こえてくる。
 火器操作のプログラムがブルタリティスの人工知能に転送されていった。
「あっ、主任、転送はbRコンピュータから送られちゃってますよ」
「あン? 何? ウィルスチェックはどうした?」
「いえ、まだ…」
「まったく…どいつもこいつも…」
 主任は火器班のスタッフを睨みつけた。
「え? また何か……?」

『転送終了。正常に機能されます』

 転送が終わると機械音声が、そう告げてきた。
「…まあ、いい。とっとと自分の巣に帰れ!」
 火器装備のスタッフは慌てて部屋から出て行った。
 モニター画面にブルタリティスのモア・アイがズームアップされる。
 主任は立ち上がってしばらく黙ってモニターを眺めていた。
「何か異状は?」
「各機能正常に作動してます」

 まあ、大丈夫だろ……念のため、帰還したらAIのチェックはしとくか…

 主任は再び椅子に座り込んだ。



 その日の午後、ヴァルキリー、ブレード、エアの三体のガンダムは数時間後に行われる予定の

テスト運用の為、整備が行われいた。
 パイロットでMSの開発者でもあるノイン隊長は整備スタッフに混じって愛機バルキリーガン

ダムのシステムチェックを行っていた。
「あら?」
AIマリアが何かに反応を示した。
「どうした? マリア」
「ルドルフさんがいます」
 そう言われコクピットの外を見るとエリシアの愛機ブレード・ガンダムのそばをうろつくルド

ルフ・ハイマンの姿が見えた。
「ルドルフさんが出撃前にMSのそばに近づく確率は12%です」
「しかも自分のエアのそばじゃないよね。なんだろう?」

 辺りを落ち着きなさげに見渡すルドルフの態度はどう見ても怪しかった。
「何してるの?」
 その声に驚き、振り向くとエリシアが腰に手を当てて立っていた。
「エ、エリシア? こんな所で何してんの?」
「新装備のウエポンの説明を受けに来ただけよ。それにこれは私のブレード・ガンダムよ。愛機

のそばにいたっておかしくないでしょ? それよりおかしいのはあんたよ。なんでブレードのそ

ばにいるの? あんたのエアはあっちでしょ」
不機嫌そうにエリシアはそう言った。
「そ、そうでした」
 慌てて去ろうとするルドルフだったが途中で立ち止まり振り返った。
「あのさ、エリシア…」
エリシアはとっくにその場から離れ、整備スタッフから何かの説明を受けていた。
「まだ、怒ってる……よね」
 ルドルフはポツリと独り言をいいその場を離れていった。

 その様子を遠くから眺めていたノインとマリア
「エリシアさんとルドルフさん…なんだか変ですね。二人とも今までのデータにはない行動で

す」
「さっき、ちょっとあってね…まっ、元々仲のいい二人だからなんとかなるでしょ」
「楽観的なんですね」
 マリアは心配げに立ち去るルドルフを見つめていた。



 ガンダム特殊部隊が発進した直後のことだった。
 ブルタリティスのモニタールームは混乱していた。
 試験運転中のブルタリティスが突如、コントロールルームと接続できなくなっていた。 正確

にはブルタリティスが接続を一方的に切ったのだ。
 突然の行動にいくつかの可能性があがったがそのひとつにウイルスの侵入が影響していると

いう事があった。あるいはウイルスではなくブルタリティスのコントロールを狙ったプログラム

の不法介入。
 とにかくブルタリティスは今、モニター室のコントロールを離れ自らの判断で行動していた。

同行した数機のジンを撃墜したことで事態はさらに深刻になっていった。
 暴走したブルタリティスの進攻方向は市街地を目指していたのだ。
 訓練発進中の全MS部隊にブルタリティスの進攻阻止命令が出された!
 当然、ノインたちガンダム特殊部隊にも連絡された。


 すでにグフイグナイテッドのアルファ中隊がブルタリティスの暴走を止めるべく攻撃を開始

していた。しかし、ビームシールドに阻まれグフのビーム兵器は通用せず、白兵戦に持ち込もう

と接近するにも強力な中距離火器で近づくグフを次々と撃墜していった。戦力は既に半分になっ

ていた。
「大尉! この戦力では無理です! 奴は止めれません!」
「あきらめるな! 援軍は向かっている。なんとか足止めするんだ」
「しかし…」
 その後、部下からの通信は切れた。
 ブルタリティスのビームがグフを直撃したのだ。
「ちぃ!」
 隊長機はブースターを吹かし飛び上がり、急いでその場を離れた。
「このままでは市街地に侵入されてしまう…」


 ガンダム部隊は爆発するグフの映像を確認していた。
「あれね」
「気をつけろ。基地からの情報だとブルタリティスの迎撃火器は半端じゃないぞ」
「なんとか懐に入ってしまえば、このブレードなら…」
「無理すんなって。ここは慎重にいこうぜ」
「うるさいわね。ねぼすけ! あんたは目を開けてブレードの援護をしてな!」
「はいはい…ちぇ、エリシアの奴、まだ怒ってんのかよ」
「何か言った!」
「い、いえ、何も…」
「ロック反応! 迎撃ミサイルだ!」ノインが叫んだ!
 ブルタリティスから発射された数十のミサイルがガンダム部隊めがけて飛んできた。
 ミサイル探知とほぼ同時にヴァルキリーのファンネルが一斉に空中の全方向に射出された。フ

ァンネルの銃口がミサイルに向けられるとビームが発射され次々を撃墜していく。
「さっすが、バルキリー!」ルドルフが興奮気味に叫んだ。
 爆風を抜けて1基のミサイルが飛び出た。
「一発逃した! みんな気をつけろ」
 生き残った一発のミサイルは最も近くにいたブレードを探知すると方向を変えた。
 超高温で加熱された二つのヒートワイヤーがブレードを囲むように宙に舞う。ミサイルはブレ

ードに接触する前にその胴体を真っ二つにされてしまった。弾頭部分は爆発も起きずに地上に落

下していった。
「ひゅー!、やるなぁ、ネーさん」
 ミサイルを狙っていたエアはビームライフルを下げた。

 視界にもはっきりとブルタリティスが見えてきいた。
 未完成な巨体はあまり速度を上げず市街地を目指していた。
 まわりをグフイグットが旋回しながらビームライフルを放っていた。
「懐かしの愛機ね」
 エリシアは、かつて自分がテストをした事のあるグフイグナイテッドを見ると思わずそう独り

言をいった。

 その時、唐突に通信が入った。
「こちらアルファ中隊だ。援軍は3機だけか」
「だけってなによ! なめないでよ!」
「い、いや、すまん。ただブルタリティスは予想外に強力なんで…」
「部下がすみません。こちら指揮官のノインです。他の部隊も既に出撃してます。それまで我々

でなんとかしましょう」
「了解。ブルタリティスには全方位にビームシールドが展開されてる。注意してくれ」
「了解」
 アルファ中隊長は通信を切ると呟いた。
「やれやれ、きついパイロットだな……あれが噂の"ガンダム"特殊部隊なのか?」

 バルキリーのファンネルが一斉にブルタリティスめがけてビームを発射する。しかし青白い閃

光が立体形をえがきブルタリティスを囲み、ビームを跳ね返していった。
 エアもガトリングガンめがけてビームライフルを発射した。しかしガトリングガンのまわりに

もビームシールドがありビームを跳ね返してしまった。

「だめだ。さっきのアルファ隊の言うとおりシールドだらけだぜ!」
「ビーム系がだめなら!」
 背負った大型のヒートソードを引き抜くとブレードはブルタリティスに突っ込んでいった。
 ブルタリティスの全ガトリング砲が突っ込むブレードに向けられる。
「ちぃっ!」
 ガトリングガンが高速な回転をしながらブレードに発砲される!
 方向転換して回避しようとしたがガトリングガンのレーザーサイトは正確にブレードを追尾

していった。
 避けきれず急遽、大型ヒートソードを盾にしたが、強力な無数の弾丸に耐え切れずヒートソー

ドは爆発を起こしてしまった。
 衝撃で吹き飛ぶブレードのそばにエアがかけよった。
「大丈夫か! エリシア」
「こ、このくらい!」

 射撃の為に飛んでいたファンネルが再びバルキリーに戻ってきた。
「ビームシールドでファンネルが役に立たない。近づければなんとかなるんだが…」
「イノン、あれは私と同じAIを使った無人モビルアーマーでしょ?」
 マリアがイノンに声をかけた。
「そうだ」
「私がブルタリティスに侵入してみます」
「だめだ! 基地からの連絡では奴はウィルスに感染て"ああ"なったんだ。ブルタリティスに侵

入いたら君も感染してしまう」
「さっき基地からワクチンを転送してもらいました。私は大丈夫です。それにあれを止めないと

大勢の市民が…」
「だが、基地からの接続も拒否されてるんだぞ」
「方法があります。私なら大丈夫」
 確かにマリアの性能なら強引な他の人工知能への強引な侵入も可能かもしれない。しかし、そ

れは同時にマリアを傷つける可能性のある行為だった。イノンは迷っていた。
「きっと、"彼女"でも同じ事をする」
 彼女とはイノンのかつての恋人のことをいっていた。

 彼女なら……彼女なら…か

 確かにそうかもしれない。

 イノンは決断した。
「…わかった。君を信じる。やってみようか!」
「ありがとう、ノイン……火器管制と飛行サポートから一時はずれます」
「わかった」ノインはキーボードを叩いてマリアの機能をヴァルキリーから外した。
「軍用のデジタル回線は拒否されています。ですが自分の位置を特定するためのGPSの回線は開

けているはず。そこから……」
 マリアがゆっくりと目を閉じた。
「たのむぞ、マリア…」




 突然、ブルタリティスからの砲撃が止んだ。
 マリアの侵入が成功したのだ。
「どうしたんだ?」
 ノインから通信が入る。
「今、マリアがブルタリティスに侵入して一部の動きを制御している。しかし長くは持たないだ

ろう。今のうちの攻撃するんだ!」
「了解!」
 ブレードが残った大型ヒートソードを抜いて足元を狙った。
 しかし、閃光弾が目の前に放出され強烈な光が放たれる。ブレードのモニターが一瞬、ロスト

した。エリシアは目標を見失ってしまった。
「しまった!」
 モニターが回復したとき目の前に迫っていたのはブルタリティスの巨大な足だった。昆虫の様

なその特殊合金の脚には先端がヒートソードになっていた。それはブレードを突き刺そうと振り

下ろされた。
「くっ!」
 慌ててその場を離れようとしたが遅かった! ソードはブレードのコクピットに迫る。
だめだ…
 エリシアがそう感じた時。機体に衝撃がおきた。
 しかしそれは被弾の時とも違う別の衝撃だった。
 気がつくとエア・ガンダムがブレードをかばいヒートソードに貫かれていた。
「だ、だいじょうぶかい? ねーさん」
「ルドルフ…あんた…」
「なぁーに、左肩を少し破損させただけっ! まだ戦れるぜ!」
 コクピットの左部がショートを起こし小さな爆発が起こった。
 その様子が通信モニターに映し出された。
「ルドルフ!」
「だいじょーぶだって……たくっ、めんどいなー!」
ヘルメットのシールドにヒビが入り僅かに血が額から流れているのが見えた。
 エリシアはその姿を見て死んだ友達の事を思い出した。

「このやろう!」
 エアは、ブルタリティスの脚をつかむとエンジンを逆噴射させた。
「さあ! エリシア! さっさと決めちゃってよ!」
 ブレードがヒートソードをつかみなおし立ち上がった。
「…このぉぉぉぉぉ! あたしの大事なトモダチをぉ!」
 別の脚がブレードを狙ったが、今度は不意をつかれたわけではない! ブレードは難なく迫る

ヒートソード付きの脚をヒートソードで切り落とした!
 切り離された脚の先端が数十メートルはなれた大地に突き刺さる。
 ブリタリティスの全モアアイがブレードに向けられた! しかし、懐に入り込まれたブルタリ

ティスには、もはや敵を迎撃する装備は無かった。
 ブレードはヒートソードを逆手で持つとブルタリティスの腹から切り裂いた!
 分断される装甲から幾つもの火花が散る!
Gatcha!(いただきだ!)」

 ビームシールドも発生していないその隙をついて生き残ったアルファ小隊のグフたちが一斉

にビームライフルを発射した。
 ブリタリティスの内部に集中砲火が浴びせられ砲撃は動力炉にも命中した! コンマ数秒で

爆発するだろう。ブルタリティスのほぼ真下にいたブレードとエアは2体とも推進装置を破損さ

せていてブースターを使った離脱ができなかった。なんとかその場を離れようとしていたが動き

は悪い。
 その時、ファンネルが猛スピードでブレードとエアに接近してきた。危機を察したノインが飛

ばしたのだ。
 ブレードとエアはそれつかまるとファンネルに引きずられ、猛スピードでその場から離れた!
 その直後、ブリタリティスは爆発を起こしピンク色の火炎と眩い閃光が辺りに広がった!


「やったな、エリシア」
「あんたのおかげよ。ルドルフ」
「あれ、もう怒ってないんだ。ねーさん」
「馬鹿!」
「へへ、それよりブレードも損傷してんだろ? 緊急キットの点検でもしといたほうがいいんで

ないの?」
「緊急キット?」
エリシアはルドルフの言葉を不審に思いキットの仕舞ってあるハッチを開けた。
「あっ…」
 そこにはコーヒーに濡れてしまった本と同じものが置いてあった。
「ったく、同じやつ探すのめんどかったんだぜ」



 基地に戻りドッグに運ばれる損傷の酷い2体のガンダム。
 それを見送るガンダムチームの二人がいた。
 エリシアの手にはルドルフから送られた新しい詩集が持たれていた。
「まったく、あんたって奴は…」
「なんだよ、それくらいしか思いつかなかったんだよ」
「あのねぇ、同じ本だから意味があるわけじゃないの。友だちの思い出のあるものだったから意

味があったの!」
「え? ま、まあ…そうだろうけどさ…気に入らないわけ? それが俺の精一杯なんだよ。いら

なけりゃ、捨ててもいいんだぜ」
「馬鹿ね! 気に入らないわけないじゃない!」
 エリシアはそういうと基地宿舎に向かって歩き出した。
「じゃ、気に入ったってこと? 許してくれるってことなのー?!」
 叫ぶルドルフにエリシアは振り向かずに本を持った方の手をあげた。
「こいつには新しい思い出ができたの! 捨てられるわけないじゃない!」
 ルドルフにはそれは見えなかったが、振り向かなかったエリシアの顔がやさしく微笑んでいた。

 新しい本、新しい思い出、新しい友情…そして……


寒さに凍え力尽き枝から落ちる小鳥は
自分を哀れと思わない……




おわり



本当はマリアがブリタリティスに侵入して対決のシーンとブリタリティスのファンネルとガン

ダム部隊の戦闘シーンがあったのですが長くなってしまうのとエリシアとルドルフの話の印象

が小さくなってしまいそうなのでカットしました。
オープニングとエンディングの詩は「ハイネの詩集」らしいです。映画で使われていたのが印象

に残っていていたので使いました。まあ、自分なりの詩の解釈もあるんですが、本音は、ただ単

に使いたかったからで、実は意味を話にあんまりかぶせていません。(;´`)>
しんで書かせてもらいました。どうもありがとうございました。(´▽`)ノ

delta66

 

 

 

すごいです!!

おっと失礼しました、いやあまりの面白さに興奮してしまいました、はい^^

私以上にキャラの特性を理解してらっしゃるし、話的にも面白いですね。

ルドルフがいつも以上にかっこよく見えましたよ!!

delta66さん、私の代わりに話、書きま・・・・・ゴホン、いえ何でもありません(笑

 

本当に素晴らしいと思います。投稿ありがとうございました、delta66さんm(_ _)m

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