憂鬱なる日記
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○月×日
「憂鬱なる日記」・・・こんな題名で日記を書き始めてかなりの時がたちます。
今の関心事はザフトの軍事学校に入ったため一人にしてしまった母と学校の成績くらいと
成ってしまいました。
赤服・・・・エリートになるためには成績は肝心です。
しかし今は亡き父の後を継ぎ立派な軍人になるという目標のためにがんばるしかないと思っています。
さて、仮にも日記ですので今日の出来事を書いていこうと思います・・・・・・。
「MS使用しての訓練では射撃に関しては学校随一、接近戦に関しても問題はない。だが、
MSに乗らず、銃を使った射撃に関してはギリギリといったところだ。」
教官は私にそういいました。自分でも銃に関しては正確性にかけると自負し射撃訓練場に
通いつめているのですがやはり上達しません。MSを使用した射撃ではあんなに簡単なの
に・・・・・。
教官から自分に対する評価を聞いた後、私はやはり悔しくなり射撃訓練場に向かい、ひた
すら的に向かって銃を撃ちますが中心の赤い点には当たってくれません。
「これで中心に直撃した弾が多いほうが少ないほうに飯を奢って貰うってことでどうだ?ウィリス。」
「いいだろう、やってやろうジャン!!」
射撃訓練場にそんな会話をしながら二人の男子訓練生が入ってきました。
そして私の隣二つのレーンを使い射撃を開始しました。
ウィリスと呼ばれた訓練生は標準的な射撃能力でしたが、私が驚いたのはもう一人のスポーツがりの訓練生のほうでした。
なんと一発目で的の中心を銃弾が貫き、どんどんと発射された弾は一発目が的の中心に空
けた穴を通っていくのです。【ワンホールショット】です。
思わずその射撃能力に驚き、しばらく彼の銃を構えた姿を見ていましたが不意に彼がコッチのほうを向き目線があってしまいました。
私は慌てて視線を的に戻し射撃練習を再開しました。しかし凄腕のスポーツがりの訓練生
が気になりなかなか練習が進まない自分に少し苛立ちを覚えていたところ先程の訓練生二
人は射撃を止め銃を片付け始めました。
二人の射撃対決の結果はいわずと知れたものでした。
ウィリスと言う訓練生の方が先に片づけが終わったらしくスポーツがりの髪型の訓練生に一言二言言ってから訓練場を出て行きました。
スポーツがりの訓練生も射撃訓練場を退室するために私の後ろを通ったときでした。
「もうちょっと肩の力を抜いて、銃を構えたときの角度をもうちょっと上げる。んでもって一回深呼吸してから的をしっかり見て撃つ。
通りすがり先輩のアドバイスだ。」
彼は私の後ろでそう言って退室していきました。
「肩の力を抜いて・・・・角度を少し上げて・・・深呼吸・・・・・・・・的をしっかり見て・・・撃つ!!」
彼の言葉を呟きながら実践し引き金を引きました・・・・・・・。
「当たった・・・・真ん中に・・・・・・。」
私の撃った銃弾は見事に的の中心に当たりました。
○月△日
「銃使用による射撃はだいぶ良くなってきたな・・・、だがまだまだだぞ、私が訓練生だったときなんかなぁ・・・・・・・・・・・」
教官は一向に銃による射撃の私の腕に関して完全に認めてはくれません。
それどころか自分の自慢話を始めたため適当に理由をつけて教官室を退室しました。
自分で言うのもなんですが私は嫌な事があっても自分の中に押しとどめてしまうタイプです。
そんな私は軍事学校の片隅にある緑に染まった大きな桜の木の下、ほとんど人が来ないところに行きます。
そこで思いっきり声を出して嫌な事を吹き飛ばすんです。
思いっきり叫びました。
「うわわわあわ、なんだ!?なんだ!?・・・・・・・・イッツゥ〜」
木の上から人が落ちてきたんです。
しかもその落ちてきた人は先日射撃場でアドバイスをしてくれた先輩訓練生でした。
先輩訓練生も昨日会った私の顔を覚えていたのか、「あっ!」と声を上げました。
私は自分の名を名乗り先日のお礼を言うと先輩訓練生も名乗ってくださいました。
ミルズ・ハワード
私より1期先輩でした。
軽く雑談を始めるとミルズ先輩は実技は得意だけど筆記は苦手ということで私と逆だな。と笑いました。私も何故だか笑ってしまいました。
次第に私は今まで溜め込んだ学校での不満をミルズ先輩に話し始めてしまっていました。
先輩は親身になって聞いてくれました。きっと迷惑だったはずなのに・・・・・。
先輩と別れた後・・・・・私はいつものストレス解消法を行った後より、
先輩に不満を聞いてもらったほうが気持ちがはるかにすっきりしていることに気づきました。
何故でしょう?
○月◆日
私はミルズ先輩の言葉に驚きの声を上げてしまいました。
【赤服】に・・・・軍人誰もの憧れ・・・エリートのチャンスが有ったのに先輩はそれを蹴ったというのです。
「だって【エリート】って言葉に縛られたくないじゃん。気楽だよ、自分のペースで進めたほうがさ・・。」
しかしその言葉を聞いたとき私は何故自分が先輩と話していると心が安らぐのか分かりました。
そうです、前の戦争で死んだ父に似ているのです。
父もよく“自分のペースで、国がどうこうじゃなくて自分の家族を守るために軍人になった”・・・・・と言っていました。
・・・・でも、やっぱりなんか違う気が・・・・まぁいいでしょう・・・そろそろ寝ることにします。
◇月×日
今日はとても残念な事を書かなくてはいけません。
・・・・・・・・・・・・え〜喜ばしい事でもあるはずなんですけど。
今日はミルズ先輩が卒業して軍人として旅立つ日でした。
私はいつも通り先輩と会える木の下に行きます。この次期は桜が綺麗なピンクの花びらを散らせていました。
やっぱり先輩は木の上で卒業証書を持ったまま寝ていました。
明日からそんな彼の姿が見れなくなると思うと何故か心にぽっかりと穴が開いているようでした。
「先輩」
「ん?ふぁ〜あ・・・キッカか。どうした?」
「卒業・・・それと軍への配属おめでとうございます。」
眠りから覚めた先輩に形式的な言葉・・・・それだけ言った私は自分でも何故か分かりませんでしたが俯いてしまいました。
「キッカ・・・・顔を上げてみ?」
そう言われて私は顔をユックリ上げるとそこにはすごい顔をしたミルズ先輩の顔があり
私は大爆笑してしまいました。どんな顔をしていたかココに書けないのが残念です。凄まじく変形した顔だったとだけ記述しておきます。
大爆笑した私を見るなり先輩は満足そうに笑いながら頷く。
「そうそう、そうやって笑ってくれよ。笑って送り出してくれた方が俺も嬉しいし、
それにキッカは笑った方が綺麗だぜ。振り返らずにさ、笑って前に進もう!!な?」
どのとき気づいたんです・・・彼の笑顔とその言葉を聞いて気づいたんです。
・・・・・・・・・私はミルズ先輩が好きなんだ・・・・・と。
その後日が暮れるまで先輩と話をして・・・・そして私は宿舎へ・・・先輩は学校の門の方へ別れました。
私は今日で日記を書くのを止めようと思います。
だって振り返らずに前に進みたいと思ったから・・・・目標が出来たから。
決意を込めて最後にココにその目標を書きたいと思います。
目標:ずっと、そして誰よりもミルズ先輩の近くにいること。
たとえ私の心を先輩が永遠に知ることがなくても・・・・。
キッカは日記を閉じてゆっくりと大きく息を吸い・・・そして吐く。
そして身支度を整えると教官の下へと向かった。
キッカにエリートコースへのチャンスが巡って来たのだった。
しかしキッカの言葉は決まっていた。
「私は【エリート】って言葉に縛られたくない・・・・だから私はエリートには行かない。それに・・・・。」
廊下に出たキッカは窓から外にある桜の木を見る・・・・・桜の花びらがそろそろ散り終えそうだった。
キッカは自分の両頬を気合を入れるように自分で軽く叩き歩き始めた。自分の目指した目標に向けて・・・・後ろを振り向かず・・・。
END