〜第9独立ユニット部隊潜水母艦ハンガー〜

 

第9独立ユニット部隊の面々の神兵・Mのコクピットに設置されている小型画面に

アサコの顔が映る

【アサコ】:『皆さん出撃準備はOKですか?』

画面には目もくれず黙々と自機のシステムチェックを続けつつユンスクが答える

【ユンスク】:「問題ない。」

【アサコ】:『そうですか。現在さつきさんが偵察に出ているので、報告を待って出撃です。』

【エンリ】:「敵戦力は?」

【アサコ】:『こちらの予想としてはいつもの定期便。』

定期便・・・・それはサハリン先行部隊(9独立ユニット部隊)にロシア本国から定期的

に攻撃してくるY.A連の水中ユニット部隊をユンスク達はそう呼んだ。定期便は毎回、

ユンスク達が簡単に退けられる程度の戦力を投入してくる。これがY,A連の戦術なのか

限界なのかはわからなかた。

【シャオ】:「定期便かぁ〜メンドクサ〜。」

【ウィン】:「ハッハッハ、まぁそう言うなって。本隊が来るまでの我慢だ。それでもやる

気が出ないんだったら今夜の夕食をかけて撃破数で勝負すっか?」

その時通信が入る

【さつき】:『こちら偵察ユニット。』

【アサコ】:『さつきさん、様子は?』

【さつき】:『いつもの定期便だと思われます。潜水空母一隻、護衛の水中ユニット三機。

後は予想ですが空母内に六機ほどユニットを搭載しているようです。』

【エンリ】:「空母をまず落とした方がいいですね。空母からユニットを出されると勝てる

には勝てますけどシャオさんの言うとおり面倒くさいことになりますから。」

【アサコ】:『そうですね。では、各機に命令。敵護衛ユニットを混乱させつつ敵潜水空母

を沈めて下さい。その後、敵護衛ユニットを掃討して下さい。偵察ユニットは一時帰還。神兵・Mに乗り換え再出撃をお願いします。」

【さつき】:『偵察ユニット・・・・了解。』

【ユンスク】:「ユニット部隊了解。出撃する。」

そして神兵・Mは魚雷発射と同じ要領で出撃していく。

 

 

 

 

【エンリ】:「敵、レーダーに捕らえました。こちらには気づいていません。」

水中の岩陰に隠れているユンスク達の神兵・M。岩を挟んで反対側を敵水中護衛ユニットが通過する。

【ユンスク】:「よし、敵の通過後背後より強襲する。ウィンとエンリは敵ユニットを混乱

させる事に専念。俺とシャオは敵潜水母艦を攻撃する。いいな?」

【全員】:「了解!!」

そして敵ユニットが通過した直後

【ウィン】:「ほんじゃ、まぁ行きますか!!」

ウィンとエンリのユニットが大型魚雷ポットを射出する。しかし何故か当たるはずだった

魚雷は逸れて近くの岸壁にぶつかり爆発した。

【ウィン】:「うへ!!なんで魚雷が外れんの!?直撃だと思ったのによぉ〜」

攻撃によりユンスク達に気づいた敵ユニットが会頭して水中用小型魚雷ポットを撃ってき

た。

【ユンスク】:「敵は魚雷用の妨害電波を出しているようだな・・・・・・、全員散開!!

水中接近戦用クローで蹴散らしつつ目標の水中母艦を素早く落とせ!」

その命令とともに一気に神兵・M4機が突っ込んでいく。

【シャオ】:「オラオラオラ〜!!」

大型魚雷を発射しようとしていた敵水中ユニットの懐に一気に潜り込みクローで貫いた。

が、横からもう一機の敵ユニットが小型魚雷を撃ってくる。

【シャオ】:「ちッ!!」

シャオの機体が自分の魚雷を避けたのを確認するともう一度撃とうとする

【エンリ】:「よそ見厳禁ですよ!」

エンリの神兵のクローが敵水中ユニットを串刺しにする。残り敵水中護衛ユニット一機。

【ユンスク】:「ふん!」

【ウィン】:「どりゃ!!」

左右から神兵2機に貫かれ最後の一機も爆発した。

【ウィン】:「おっしゃ〜空母を落とすぜ!!」

【ユンスク】:「まて!そんな急ぐな!!」

敵潜水空母に突っ込んでいくウィンの神兵・M・・・・・・しかしいきなり何処からか大

型魚雷が飛んできて敵潜水空母を沈めてしまった。

【ウィン】:「うわぁったったった・・・・。」

潜水空母の爆発に巻き込まれウィンの神兵は水中で錐もみ状態で吹っ飛ばされる。

【ウィン】:「ったく、だれだ―!!」

【さつき】:「あら、いたの?気づかなかったわ・・・・・・。」

魚雷の飛んできた方向には一旦帰還して戻ってきたさつきの神兵・Mがいた。

 

 

 

      〜第9独立ユニット部隊潜水母艦休憩室〜

【ウィン】:「ったく酷い目にあったぜ〜」

【シャオ】:「でも、ウィン兄も調子ノリすぎだぜ。」

ウィンは紙コップに入っていたコーヒーを一気に飲み干しグシャッと握りつぶす

【ウィン】:「でもよ〜俺が突っ込むのがわかっていながら、あの冷徹女・・・。」

そのとき休憩室の扉が開きさつきが入ってくる。

【さつき】:「・・・・・・・・。」

【ウィン】:「・・・・・・・・。」

二人は一瞬にらみ合った後、互いに目をそらす。しかし休憩室に重い空気が漂う

【シャオ】:「うぅ、すごい険悪ムード・・・・・。」

さつきは販売機からミルクティを取り出しウィン達とはかなり遠い席に座る。

【ユンスク】:「お〜い、指揮官が呼んでるぞ・・・・・・ってなんかタイミング悪かったか?」

【シャオ】:「大尉〜〜〜。」

休憩室に入ってきたユンスクはウィンとさつき、双方から睨まれる結果となった。

 

 

 

 

 

 

 

【アサコ】:「悪い知らせです・・・・・・。」

司令室に入ったユンスク達に聞かされた第一声はそれだった。

【ユンスク】:「と、言うと?」

アサコはイスに座りため息をつく

【アサコ】:「こちらに向かって潜行していた本隊が敵の大部隊の強襲を受けて艦数の半数

を消失したそうです。」

【全員】:「!?」

【アサコ】:「ただ、幸いな事に沈められた我が方の潜水艦のほとんどが護衛艦で潜水空母

は損害が少なくてすんだ事です。」

【ウィン】:「じゃあ作戦には支障は無いんだな。上陸したら地上兵器以外用は無いからな。」

アサコは首を横に振る

【アサコ】:「いいえ、支障はあります。上陸までのあいだで・・・・・。」

【シャオ】:「?」

さつきがふぅ〜とため息をつく

【さつき】:「つまり、護衛艦がいない分、水中で戦闘のできるユニット乗り達の負担が大

きくなるって事ね・・・・・・。」

【アサコ】:「そうです、護衛艦がいない今、潜水空母は丸裸です。空母には地上の母艦で

あるマザーΣも積まれています。ここで沈められるわけにはいかないのです。ですから水

中で唯一戦闘のできるユニット【神兵・M】に護衛を任せるしかないわけです。」

【ユンスク】:「で、指揮官はロシア付近のY.A連の海軍力はどのくらい残っていると思

う?」

【アサコ】:「わかりません・・・・・ただ・・・・。」

【エンリ】:「ただ?」

【アサコ】:「水中で我々を抑える気は無い事は確かです。」

【ユンスク】:「まぁそれは定期便がよい例だな。あれはどっちかというとこちらの戦力を

少しでも削ごうとしていると考えた方がいい。」

【アサコ】:「その通りです。となるとY.A連は必ず決戦の舞台を決めているでしょう。」

スクリーンが映し出される。進行図が映し出される

【アサコ】:「ヤクーツクにロシア最大のY.A連要塞があります。ここで相手は決戦に備えていると思われます。難攻不落と呼ばれた要塞です。苦戦は必死でしょう。」

しばらく司令室が無言に包まれる

【エンリ】:「みんなで生きて故郷に帰りましょうね・・・・・。」

シャオが叫ぶ

【シャオ】:「当ったり前だろ!!」

【ウィン】:「俺がいる限り安心していいぜ!!」

【さつき】:「その自信は何処から出てくるのかしら・・・・・。」

またウィンとさつきがにらみ合う

【ユンスク】:「まぁまぁ・・・・・・、どっちにしてもまずは本隊との合流が先決だ。で、司令官。本隊の到着は?」

【アサコ】:「修理などで2日ほど遅れて明後日にはこちらにつく筈です。」

【ユンスク】:「じゃあ、少し自由な時間をくれないか?ここの所、戦い詰めだったからな。」

【アサコ】:「いいでしょう、ただし今日一日だけですよ。」

【シャオ】:「やっほう〜!!」

 

 

 

 

ウィンは海が見える丘に歩みを進めていた。天気のいい日ならロシア本土が見えるらしい。

林を抜けると丘がある。しかし先客がいた。さつきだった。ウィンは引き返そうとする

【さつき】:「なんで・・・。」

その言葉にウィンは引き返そうとする足を止め振り返る。するとさつきは胸にあるペンダ

ントを見ながら涙を流していた。ウィンには気づいていないようだった。

【さつき】:「なんで・・・あなたは死んでしまったの。なんでこんな私をかばったの?」

カサッ

ウィンはいつも無表情なさつきが涙を流しているのに驚き足元の草を踏み鳴らしてしまった。

さつきがウィンを見る。まだ涙でぬれた顔で。

【ウィン】:「あの、そのな・・・・。」

何か言おうとしたウィンの横を一気にさつきが走り去る

【ウィン】:「あっ!」

ウィンは動けなかった。さつきが涙を流した事にショックを受けた。しかしそれ以上に自

分があれほどムカついていたさつきに・・・・さつきの涙を流した顔に見惚れていた自分

に驚いたのだった。

               第五話へ

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