バッドラック 〜another skill〜

バッドラック 〜another skill

 

 

第七話

 

 

ケンがアルにワンピースを買ってあげたりロリコン疑惑の噂を撒かれたりした日から数日後・・・。

「コレは・・・・。」

新型戦闘機が運び込まれたと聞き、格納庫に来たケンはその新型機を見あげて呟いた。

ケンが街から横須賀基地に戻るときに上空を飛ぶのを見た機体だった。

「この機体はX−09A・・・試験機ですが実戦に関するデータ採取のためにこの基地に運ばせていただきました。」

柔らかい女性の声にケンが振り返るとポニーテールの髪形で整備服を着て優しく微笑む女性が立っていた。

「貴女は?」

「私はゼギル・テノール技術曹長です。X−09Aのココへの運搬とこれからの整備を担

当します。どうぞよろしくお願いします。」

「いや、俺がこの機体に乗るわけではないから俺に頭下げられても・・・・。」

ケンがそう言うとテノールは不思議そうに首を捻り、自分の持っていた資料を見る。

「ちょっと確認させていただきますけど・・・・貴方のお名前はケン・ナカタ。階級は大尉でよろしいんですよね?」

「え、そうだが・・・・。」

「資料ではウィルクス艦長から貴方用の機体として新型機納入の要望が連合軍補給部にあ

りましてそれでこの機体をこの横須賀基地に運搬してきたのですが・・・。」

“はぁ〜”とケンはため息をつき納得する。

「すまん、じゃあ間違ってはいない。俺のようだ・・・・。」

テノールは“よかった”と安心したように微笑み、資料に目を通しながら話し出す。

「丁度いいですからココでX−09Aのスペック等を簡単にお伝えしておきますね。

全幅:19.0m・(折り畳み時)12.54m
全長:23.84m
全高:4.37m・(折り畳み時)4.39m
自重:16,900kg
最大速度:M2.7
戦闘行動半径:1080km
乗員:2名

です。主翼や副翼の水平翼、ガナード翼すべてが状況によって形を変える可変翼です。

特に主翼に関しては全開にした状態で前進翼・・・高速飛行時は折りたたみ、通常の主翼形態

となります。あとこちらを・・・・。」

テノールはケンをコクピット内に誘導する。するとコクピットの様子が通常と少し違うことに気づいた。

「このスクリーンは?」

そう、操縦桿の奥、計器などが並ぶ場所に大き目の丸いスクリーンが置かれていた。

それをケンが指差すとイキナリスクリーンがつき

“コンニチワ、ケン・ナカタ大尉。”

「アレェ〜レギンレイブダァ〜。」

「うわっ!?」

いきなりどこから出てきたのか現れたアルがコクピットを覗きこみながら言うと思わず

ケンは驚きの声を上げてしまう。

「いきなり顔出すな!!・・・いや、まて。今何ていった?」

「ウン、ダカラコレ・・・レギンレイブデショ?ッテイッタヨ。ソレガドシタ?」

ケンがアルから視線を外しテノールに目を向けると、テノールは嬉しそうに口を開く。

「いや〜EMの技術って感心しちゃうくらいすごいですね♪この基地まで来るときに

組み込んでたAIが性能不足で心配だったんですけど。そこにちょうどEMの機体と超高

性能なAIがあるじゃないですか、これは使うっきゃない♪という感じで使っちゃいました。」

「アルの物とはいえEMの部品やAIだろ?大丈夫なのか?」

「大丈夫だと思いますよ♪」

X−09Aのボディに頬づりしながら言うテノールを見ながら苦笑したケンだったが

スグに真面目な顔に戻る。

「それと頼みがあるんだが・・・・。」

「何でしょうか?」

「副座を取っ払って単座にして欲しい。」

ケンがそう言うとアルが驚きの顔を浮かべる。

「何デヨ!!私ガ乗ルカラ副座必要ダヨ!!私モ兄ヲ止メルノ手伝イタイ!!」

ケンはその言葉に今まで見たこともない冷めた瞳をアルに向ける。

「何を言っているんだ、アル。君は一応捕虜なんだ。乗せるわけにはいかない。」

「デモ・・・呉カラコノ基地ニ来ルトキハ・・・・。」

「あの時は緊急だったからだ。」

ケンに静かに感情無く言われるとアルは目に涙をため走り去っていく。

「いいんですか?泣かしちゃって。」

「・・・・・・副座はいつ取れる?」

「あ、はい。え〜と難しい作業ではないんですけど、今日はシステムチェックやら何やら

しなくてはいけないので明日になりますね。」

「そうか・・・では頼む。」

そう言って歩き去ったケンを見送りながらテノールは首をひねった。

「ん〜、副座ってケン大尉のNGワード?」

間の抜けたテノールの言葉に、格納庫にいた整備員全員が“違うだろ”と心の中でツッコ

ンだとかツッコまなかったとか・・・・。

 

 

海岸に一人の少女が立っていた。白い長髪が特徴的で目を真っ赤にはらしていた。

そう、先ほど格納庫を泣きながら飛び出したアルだった。

格納庫での一部始終を見ていたランはゆっくりとアルに歩み寄る。

「大尉もね、別にアルちゃんを苛めるつもりで言ったわけじゃないのよ?」

「危険ハ承知ノ上デ言ッタノニ・・・・・・。」

ランの言葉にすぐさま反論の言葉を返すアル。するとランは苦笑する。

「確かにアルちゃんを危険に晒したくないっていうのもあるんでしょうけどね・・。」

「?」

「大尉ね・・・・・昔、相棒を戦闘で亡くしてるのよ・・・・。」

ランのその言葉にアルは驚きの表情を浮かべる。

「大尉の相棒は副座でナビをしていたらしいわ。で、偵察任務中運悪くEMの戦闘機に見

つかって・・・撃墜は免れたけれどEMの戦闘機の機銃が副座を直撃、大尉の相棒は即死だっ

た。・・・・・それを自分の操縦技術の未熟さが原因だと思った大尉はそれから単座の機体でし

か出撃しなくなったの。」

 

 

 

 

ケンはレーダーから消えた敵機にホッとし後ろの副座にいる相棒に話しかける。

「やったな、何発か喰らったけどなんとか逃げ切れた・・・。」

しかし後ろから返事はない。危険だがシートベルトを外し、後ろを振り返る。

そこには血まみれで死んでいる相棒の姿。

事実を受け入れられず、自分が今飛行中の戦闘機の中だということも忘れ、狭い隙間から

手を伸ばし相棒に触れようとしたそのとき・・・・何かが自分の腕を掴んだ。

その何かを見ようと視線を腕に動かすと、それは相棒の血まみれの腕・・・・視線を再び上げ

ると目の前には相棒の痛みに悶えた血まみれの顔が・・・・・・。

 

「っ!?」

ケンはいっきに上体を起こし飛び起きる。“夢か・・・”と呟き、頭を抑え・・・・しばらく黙り

込んだ後、まず自分が汗だらけなのに気づく。そして次に緊急の警報が鳴り、地震かと思

う思うほどの振動と、外からの爆音に気づきベットから飛び降りパイロットスーツに袖を

通し、格納庫に走っていく。

格納庫に到着するとすでにテノールが発進準備を進めていた。ケンはヘルメットを被りコ

クピットに乗り込み、テノールに聞く。

「出られるのか?コノ機体は?」

「問題ないです・・・・ただ・・・・・。」

「ただ・・なんだ?」

バツが悪そうにしているテノールの目線の先・・・急いでコクピットに乗り込んだため気づ

かなかったが副座に小さな白髪の少女の姿。

「アル・・・・お前は何をやっている?」

「私ガ“ナビ”ヤル。」

冷たいケンの質問に何の反応も見せずただ淡々と答えるアル。

ケンは脱出用の装備品の中から拳銃を取り出しアルに突きつける。

「俺は前にも言ったはずだぞ、副座には誰も乗せないと。降りろ!!」

しかしアルは降りる気配を見せない。

「私ハ兄ヲ止メタイ。ケント一緒ニ戦イタイ!!撃ツナラ撃ッテイイヨ。」

真っ直ぐな目でアルに睨まれ、引き金に指をかけつつも引けないケンにアルはニコリと笑い言った。

「私ハ絶対ニ死ナナイカラ・・・ダカラ安心シテヨ。」

ケンは“ふぅ”とため息をつき拳銃を下ろす。そのときのケンの顔は冷たい表情から

普通の表情に戻っていた。

「わかったよ・・・・、ナビ頼む。」

その言葉にアルは嬉しそうに喜び副座のスクリーンなどを弄り始める。

“負ケマシタネ、大尉”

コクピットの丸いスクリーンにそう映し出される。X−09Aに組み込まれたAI、レギ

ンレイブは随分人間性溢れるようだ。先日にある程度このAIについてテノールから説明

を聞いていたケンは驚きもせずそのまま作業を続ける。

「うるさい、レギン。さっさとシステムチェック。」

“エンジン正常・・・・、可変翼制御正常・・・、火器管制正常・・・、オールグリーン。

基地司令ヨリ作戦通達ガ有リマシタ。読マレマスカ?”

「ああ。」

“現在、当基地はEMのステルス爆撃機ノ爆撃ヲウケテイル。出撃デキル機体カラ空ニ上

ガリ基地上空ノ制空権ヲ確保セヨ。以上デス大尉。ゴ質問ガ有リマシタラ出来ルダケ簡潔

ニワカリヤスクオネガイシマス”

それを聞いたケンは“一言多い”と言いつつ副座にいるアルにヘルメットを投げる。

「乗るからにはしっかりナビしてくれ!」

「マカセテヨ♪ガンバッチャウ♪」

ケンはそのアルの嬉しそうな顔を見ると自分の出撃前の緊張がほどけていく事に少し驚き

を感じながら席に座りなおす。

「出撃する、整備員は離れてくれ!!」

「了解、コールサインはそのままブラックバード1です。お気をつけて!!グットラック!!!!」

テノールや他の整備員が親指を立てて離れていくのを確認するとキャノピーを閉め

タキシングでゆっくりと格納庫から滑走路へと向かう。

滑走路はなんとか飛べる程度には損壊を免れていた。しかも丁度EMの爆撃部隊の一波目

が通り過ぎた所であった。ケンは無線を繋ぐ。

「こちらケン。ナカタ大尉。コールサイン“ブラックバード1”、これより離陸する。」

『こちら管制塔。了解、ブラックバード1。先に上がったブラックバード2、ブラックバ

ード3が上空で援護してくれるそうだ。基地の防空を頼む、グットラック!!』

ケンは一気にX−09Aをフルスロットル、アフターバーナーを吹かし加速を開始し

スグに高度を上げ始める。

「これはすごいな・・・。」

体の一部のようにダイレクトに機動するX−09Aにケンは驚きの声を上げる。

『大尉、新型ですか?』

その無線と共にX−09Aの右隣にビオシーのF−22が並走して飛ぶ。

ケンが左に視線を向けるとそこにはすでにランのF−22が並走して飛んでいた。

『しかも夫婦喧嘩は決着がついたみたいね♪』

「ラン中尉・・・それ以上言うと本気で落とすぞ?」

『あら、ごめんあそばせ〜』

そんな無線のやり取りを遮るように、アルが叫ぶ。

「来タ!!EMノ爆撃機ダヨ!!」

“数ヲ計算・・・・計6機デス。他護衛機多数確認。マズハ後続ノ味方機ヲ上ゲル為ニ滑走路

ヲ死守スル事ヲ提案イタシマス”

アルとレギンレイブの報告を見聞きしたケンは無駄話を止め、指示を始める。

「全機に通達、爆撃機を全滅させ制空権を確保し、後続の奴らを上がらせるためにも滑走

路を死守しろ!!ブラックバード1ヘッドオン!!」

X−09Aは可変翼を動かしながら加速し、接近中のEM爆撃機に突っ込んでいった。

 

 

 

第八話

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