EARTHGUNS

 

 

 

「・・・・・・なのでこの公式は・・・・。」

教室の中に教師の声が響く。

居眠りする生徒、ひっそり友人と話をする生徒、机の下で携帯電話を弄る生徒。

そして、窓の外・・・・空を見続ける生徒。

「水無瀬・・・水無瀬っ!!」

「ん?何だよ光也?」

窓の外を見ていた生徒は横の席に座る親友に小突かれ前を向くと教師が睨んでいた。

「水無瀬・・・先生の話より外の様子の方がそんなに気になるか?」

水無瀬と呼ばれた生徒はまずそうな顔をして頭をかく。

「いや〜空が青いな〜と・・・・・っ!?」

水無瀬は若干寝癖の残る髪を弄りながら“またか・・・。”と呟く。

彼の視界はありえない光景が広がっていた。

つい数秒前の状態で全てが止まっているのだ・・・教師は自分を睨んだ状態、親友の光也はまずそうに俺を見ている状態で・・・・

他の生徒も外の景色も写真のように動きを止めていた。

そう、“水無瀬以外の時間”が止まっていた。

しかし、止まる前と違う光景が一つだけある。

「白い空・・・・か。」

時が止まる前は青かった空がまるで何もかかれていないキャンパスのように真っ白に染まっていたのだ。

水無瀬は数ヶ月前からこの現象を感じていた。

初めてこの現象に陥ったときは走り回り、なぜ自分だけ動いているのか・・・パニックになった。

しかし、しばらく待てば再度世界は動き出す・・それが分かってからは時間が止まっている間、寝るなどして過ごしていた。

「ん?何か飛んでいる!?」

その白い空を何かが飛んでいるように見え、水無瀬は目を凝らすが何も見えなかった。

「気のせいか・・・。」

十数分後、世界は再度動き出す。

「お、今日は早いな。」

「水無瀬・・・・お前いきなり何を言ってるんだ?」

思わず呟いてしまった言葉に教師は呆れ顔を浮かべ、教室のいたるところから小さな笑いが洩れてきていた。

水無瀬は窓の外を見る・・・・・空は青かった。

 

 

 

「お前さ、最近変だぞ。」

「ん〜?」

屋上で焼そばパンを食べる水無瀬を見て、光也は溜息をつく。

「授業中は外ばかり見てるし、たまに変なこと呟く事が多くなったし。」

水無瀬は口の中のパンを牛乳で一気に飲み干し、“ふぅ”と息をつく。

「別になんでもない・・・なんでもないさ。」

そう呟いて立ち上がった水無瀬は転落防止用のネットに手を置き、景色を見回す。

すると学校の敷地の外を女性が歩いていた。

金髪のボーイッシュな髪、テレビに出ている女優やモデルなど比にならないくらい綺麗な顔立ち。

水無瀬はその女性をじっと見てしまった・・・・すると女性はいきなり立ち止まり水無瀬のいる屋上を見た。

慌てて水無瀬は顔を逸らす。

「何やってんだ、水無瀬。」

「あ、いや・・・あっちにすげぇ美人が・・・。」

「ほう、どれどれ・・・・って居ないじゃねぇか。」

光也に言われて慌てて視線を戻すと先ほどまで立っていた場所に女性は居らず、他も見回したが何処にも見つけることはできなかった。

「やっぱお前最近変だぞ・・・どうしたんだよ。」

「・・・そうかもしれない・・・疲れてんのかな、アハハハ。」

「いつもぼ〜としてなにもやらない奴が何言ってんだよ・・・。」

呆れた表情で光也が校舎内に戻っていく。携帯を見るとそろそろ午後の授業が始まる時間だった。

水無瀬はもう一度女性が居た場所を見回し・・・そして校舎内へ戻った。

 

 

 

「ええ・・居ました。はい・・・。」

女性は歩みを進めながら携帯電話の通話を切り、バックにしまった。

「水無瀬 翔・・・・か・・・・。」

女性は空を仰ぎ見た・・・空は青い・・・青かった。

 

数日後

軍港に20m以上の巨大な荷が大型船数隻で曳航され入港していた。

「やっと届いたか・・・・。」

軍服に身を包んだ初老の男が呟いた。

「はい、少佐・・・“例の物”を組み込んだ・・・我々人類の希望です。しかし・・・・。」

「動かない・・・か、我々の希望は・・・。」

「はい・・・・。」

「何時までも彼女だけでは抑えきれないのだがな・・・・。」

少佐が空を見上げると空ではまるで巣を守る鳥のように真っ白に染まった戦闘機が飛んでいた。

 

 

 

 

水無瀬はゆっくりと家への帰り道を歩いていた。

いつもなら光也も一緒に帰るのだが、その日は部活の用事があるという事で帰れず一人で帰っていたのだ。

交通量の若干多い大通りに出て、信号が赤だったので立ち止まっていると横断歩道の向こうに数日前、

学校の屋上から見かけた金髪の女性が歩き去るのを見つける。

「あの女性はっ!!」

おもわず追いかけようと道路へ飛び出してしまう水無瀬・・・しかし信号はまだ赤のままだった。

それにすぐに気づいた水無瀬だったが横からは大型トラックがすぐそこまで迫っていた。

轢かれると思い、目を瞑ってしまうが自分が吹き飛ぶ感覚は訪れなかった。

目を開けるとトラックが自分からほんの十数センチの距離でピタリと止まっており、

空は白く染まっていた。

「ふぅ・・・この時間に初めて感謝するよ・・・。」

その時だ、遠くの方で巨大な爆発が起こった。

何もかもが時を止め、水無瀬以外動けない“空が白い時間”にだ・・・。

「しかも爆発は学校の方かっ!?」

水無瀬は走る・・・・すると上空を轟音が通り抜けていく。

それは純白の戦闘機・・・それは水無瀬と同じで学校へ向けて飛行していた。

「なんなんだよ・・・くそっ!!」

学校に着いた水無瀬の視界に飛び込んできたのは、見たこともない学校が隠れるほど巨大な怪物だった。

球状の本体に無数の触手のような腕がついていた。

そんな怪物を無数の爆発が包む。

空を見ると先ほど見た白い戦闘機が搭載されたガトリング砲の砲弾を浴びせようと凄まじい速度で降下してきた。

すると煙を突き破って怪物の腕がまるでゴムのように伸びて白い戦闘機に襲い掛かる。

素早い機動でそれを避けた白い戦闘機はガトリング砲を怪物に浴びせる。

怪物は態勢を崩したように倒れ、学校の一部に接触し破壊する。

破壊された学校の破片がどんどんと地面に降り注ぐ・・・。

 

 

 

 

 

 

軍港に凄まじい警報が鳴り響く。

「おい、どうなっているんだ!!何故“あれ”が突然動き出したっ!?」

少佐の言葉に副官は叫ぶ。

「わかりません!!起動もできなかったはずなんですがっ!?」

軍港に巨大な鉄の巨人とでも言うべきものが立っていた。

そしてすぐにその巨人は背中のブーストを吹かし白き空へと飛び出していった。

「追うぞっ!!追跡装置くらいはついているのだろう!!」

「はい、今、車を回しますっ!!!」

少佐は巨人の飛び去って行った空を見上げた。

 

 

白い戦闘機と怪物の戦いは激しさを増し、建物の瓦礫や校庭の砂が巻き上げられた状態だった。

戦闘機を狙い、空振りした怪物の腕がさらに校舎を破壊する。

そして破壊された校舎の瓦礫が次々と地面へ落下していく。

「なっ!?光也!!」

瓦礫が落下する先にはバックを肩に掛け直す態勢で止まった光也が立っていた・・・

しかし光也は動かない。

水無瀬は駆け出し、光也を突き飛ばす。

しかし、突き飛ばした勢いで水無瀬は態勢を崩してその場に倒れこんでしまう。

瓦礫は容赦なく落下してくる。

水無瀬は手で頭を覆い、目を瞑る・・・・。

が、瓦礫は落下してこなかった・・・目を開け、上を見ると巨大な黒い鋼鉄の手が瓦礫を受け止めていた。

「何なんだよ、これは・・・。」

鋼鉄の手の主は、水無瀬に跪く様にしていた。

その大きさは怪物と同等・・・重厚な装甲に守られた本体に鉄道車両以上に太く鋼鉄に包まれた腕と脚部・・・

そして人間と同じように精細な動きをする手・・そしてまるで戦国時代の冑を連想させる頭部・・・

そう、まるでロボットアニメからそのまま飛び出してきたような人型巨大ロボットがそこにはいたのだ。

ロボットは瓦礫を受け止めた手とは逆の手をゆっくりと水無瀬へ差し出す。

「俺にどうしろっていうんだよ・・・・。」

水無瀬が困惑していると、怪物は邪魔な物を取り払うかのようにその人型ロボットの無防備な背部を

無数の腕を鞭のようにして叩きつける。

しかしロボットは微動だにせず、水無瀬に手を差し出す態勢を崩さない。

水無瀬は先ほど助けた光也を見る。光也はやはり先ほどの体制のまま動かない。

ユックリと唾を飲み込んだ水無瀬はロボットを見上げる。

するとロボットの胸部が開き、コクピットらしきものを見せる。

「俺に乗れっていうのか・・・・・。」

水無瀬が迷っている間にもロボットは何度も怪物の攻撃を受けている。

白い戦闘機は怪物に攻撃しているがあまり効果のないようだった。

「くそっ!やればいいんだろ、やってやる!!やってやるよ!!」

水無瀬が手の上に飛び乗ると、ロボットは手をコクピットへと近づけて水無瀬を促す。

水無瀬がコクピットに乗り込むと胸部は自動的に閉じる。

「とは言ったもののどうやって動かせばいいんだ?」

そう呟いたときコクピットに光りが灯り、目の前のディスプレイに文字が表示される。

“E.A.R.T.H.”

「EARTH・・・・・アース?この巨大ロボットの名前か?」

そのディスプレイに水無瀬が手を触れると座席の左右から操作用と思われるトリガー付きのレバーが現れる。

足元にあったペダルを踏んでみるとロボットはゆっくりと立ち上がった。

するとコクピット中に外の景色が360度映し出される。

「すごい・・・。」

感心したのはつかの間・・・・正面一杯に怪物の腕が迫ってきていた。

「うわぁ!!」

思わず右スティックを前に倒すと、ロボットは右腕を前に出し、怪物の一撃を受け止める。

水無瀬はそっと左スティックを前に倒すと、ロボットの左腕もそっと前に出る。

スティックについているボタン操作をするとロボットは手が動き、握ったり手を開いたりする

右のペダルを踏むとロボットの右足がゆっくりと一歩を踏み出し、左ペダルを踏むと左足が1歩前へ出る。

「コツがつかめてきたぞ・・・・。」

再び目の前に怪物の腕が迫ってきた。それをロボットは受け止め握る。

そして怪物の腕を引っ張り、怪物を一気に引き寄せ、空いている逆の手で殴りつける。

殴られた怪物は勢い良く吹き飛んでいく。

「これなら行ける、行けるぞ!!」

そんな時、ディスプレイに“RECEIVING”と表示され、それに触れるとディスプレイの

端に小窓が表示された。

「あ、貴女は!?」

小窓に表示されたのはヘルメットを被った女性・・・、校舎の屋上から景色を眺めているときに見かけた金髪の女性であった。

 

 

つづく。

第2話
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