EARTHGUNS

B

 

 

「あの〜・・・。」

鉄格子の向こうで表情を変えずたたずんでいる兵士らしき人物に話しかけるが返答なし。

「はぁ、無視・・・か。」

水無瀬はアースと呼ばれたロボットの中で金髪の女性に銃を突きつけられ、軍用ジープで連れ去られ、牢に入れられて数日が経っていた。

時間も通常通りに戻っており、確実に水無瀬は学校を無断欠席更新中であることに間違いはない。

さる事情で一人暮らしをしている水無瀬のことで捜索願を出す人もいないだろう。

ボロボロの簡易ベットで不貞寝を決め込もうとしたとき、牢へと入る扉がユックリと開く。

そしてある人物が入ってくると兵士は敬礼をして出迎える。

「普通いきなり牢に入れられたらもっとわめき散らすと思ったんだけど結構タフなのね。それとも鈍感なだけ?」

「衣食住が最低限保障されてれば問題ないさ。慣れれば学校に行かない事を除いて普段と変んないし。」

入ってきたのは軍服を着た金髪の女性・・・・怪物と一緒に戦い、そして水無瀬を拘束し牢に入れた女性である。

「あっそ。それじゃあこれに着替えてくれるかしら?」

牢内に女性が投げ入れたのは将官用らしき軍服であった。

水無瀬が言われたとおりに着替え始めると女性は視線を水無瀬から自然に逸らす。

「ん?顔とこういうところで視線を逸らす所だけは女らしいんだな。」

「五月蝿いわね、あんたの着替えなんて見たくないだけよ、悪い意味でね。」

水無瀬が着替え終わったのを見計らい、女性は牢の鍵を開け外へ促す。

先ほどまで水無瀬を見張っていた自衛隊員は水無瀬が着せられた軍服を見て慌てて敬礼する。

「ん?なんで敬礼なんかしてるんだ?さっきまで完全無視だったのに。」

「貴方が、少尉の階級章をつけているから。貴方を見張っていた彼は軍曹、貴方より階級が下。だから敬礼したの。なんの不思議も無いでしょ?」

「いや、大きな不思議が一つある。俺は軍隊に入隊した覚えは一欠けらもない。」

「あとで説明するわ、ついて来て。」

牢から出た水無瀬は女性の後について廊下を歩く。

「そういえば貴女の事はなんて呼べばいいんだ?」

女性は厳重な警備システムで守られている扉に付くディスプレイにパスワードを打ち込む。

視線だけを水無瀬に向ける。

「私の名前はサクラ・ケブフォルス・・・階級は中尉。呼び方はどうでもいいわ。さぁ、はいって。」

サクラに促され、扉を潜るとそこは巨大な格納庫であり、水無瀬の乗った人型ロボット“アース”、

サクラの乗っていた白い戦闘機“ムーン”が並んで格納されていた。

「ようこそ、対アンノーン基地、アース用格納庫へ・・・水無瀬 翔君。」

アースの足元に少佐の階級章をつけた初老の男性が立っていた。

「聞きたいことが沢山あるんだけど・・・。」

「ふむ、初対面でいきなり質問かね・・・?まぁよかろう。一つずつ答えていこうか?」

水無瀬はゴホンと咳払いし人差し指を立てる。

「彼女の事はサクラと呼び捨ての方がいいと思う?それとも“さん”とか“ちゃんとか付けたほうがいいと思う?」

「わしは呼び捨てのほうがいいんではないかと思うぞ、そのほうが親密に・・・・。」

その瞬間、殺気を纏ったサクラの鋭い回し蹴りが水無瀬の背中に直撃し水無瀬はぶっ倒れる。

そしてサクラはそのまま初老の男をにらみ付けると男は押し黙る。

水無瀬は蹴られた腰を摩りながら空いた手で指を二本立てる。

「2つ、貴方は誰だ?」

「自衛隊対アンノーン用特務部隊の最高指揮官 宮部 葉桐少佐だ。皆は階級だけで“少佐”と呼んで貰っておるよ。

あぁちなみにこの部隊は自衛隊のどの指揮系統にも属さなくてね、階級の呼び方も自衛隊のそれとは別なのであしからず。」

少佐は葉巻に火をつけて吸い、煙を吐く。

「では、少佐・・・アンノーンというのは?」

「それは中尉・・君が説明したまえ。」

サクラは明らかに面倒くさそうに溜息をつく。

「まず影時間は分かるわね?ある特定の人物以外の全てのものの時間が止まり空が白く染まる時間のことよ。

貴方も特定の人物に入るわね。

影時間はアンノーンと呼ばれる怪物がこの世界に現れるときになる現象よ。」

少佐は携帯灰皿に葉巻の灰を落とし、サクラの説明に続く。

「アンノーンが何故現れるか、なぜ影時間があるのかは今だ不明だ。」

水無瀬は顎に手を添えてしばらく無言で考えをめぐらせる。

「じゃあ何で俺はその影時間に動けたんだ?」

少佐が合図を送ると整備員らしき男がキーボードを操作すると、アースの装甲が開き内部に青く光る球体が様々な機器に接続された状態で現れた。

「地下深くで発見された鉱物内から発見されたレアメタルだ・・・・と思われていたが・・・。」

「いたが・・・何?」

「この球体は生きているのだよ。鉱物生命体とでも言うべきかな。ちなみにムーンにも搭載されている。」

「はぁ?」

「理解しがたいだろうね。でも事実だ。そしてこの鉱物生命体に選ばれた者と、鉱物生命体の側にいるものは影時間も動ける事が分かっている。」

少佐はすっかり短くなった葉巻を捨て・・・数秒間を空けて口を開く。

「つまり君はこの球体・・・アースに選ばれた者だったということだ。」

 

 

第四話

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