【PROLOGUE】

 

 

 

 

 

 

【PROLOGUE】

アメリカ合衆国、NY・・・・・ビルの屋上・・・・・そこに二人の男がいる。

一人はスーツを着た短髪の男、もう一人は髭、髪の毛伸ばし放題の白衣姿の男。

「どこへ行くんだ?リース。」

スーツの男が尋ねると白衣の男はポリポリと頭を掻き口を開く。

「電脳国家に行くつもりだよ。もう現実世界で集めるべきデータは手に入れたからな。」

「サヤを殺してデータを盗んでか?一体何をするつもりだ、俺はお前が逃げる限り追わなければならない。」

「知りたいか?じゃあ追って来いジョセ、俺はELにいる!!!」

リースと呼ばれた白衣の男は一気に後ろに走り出し屋上の端に立つ。

「リース!!!」

スーツの男、ジョセが銃を構えて走り出した瞬間リーダスは飛んだ、そして重力で落下を始める。

「EL・・・・・・・・。」

リースの落下した場所、すでに人ごみが出来ている場所を見ながらジョセはそう呟いたのだった。

 

数ヵ月後

 

第一話 電脳国家 〜electronic network states

 

「う〜ん、お腹空いたなぁ〜」

電子掲示板を見ながら女性が呟く。その姿は凛とした顔に長い栗色の髪をポニーテールで

纏め、右手に腕輪をし何かの制服だろうか、薄い赤のスカートと右胸の所にENGのロゴ

の入っているスーツを着ている。

「データボードオープン♪」

≪ボードオープンします≫

女性の掛け声と共に何もないはずのところに透明なスクリーンとキーボードが出現する。

「ランチ・・・・・今日のオススメは京風ピラニアカルフォルニアバーガー・・・・って何この料理・・・。

すごい矛盾しているネーミングセンスだね・・・・。」

女性は青い顔をしながらキーボードを叩きはじめた。

 

2150年、世界に国土も民族もない国が出来た、その名は

【電脳国家エーラルリンク(略してEL)】

名の通り電子ネットワークの中にある国家。この国家に入国するには専用のカプセルに肉

体を預け精神だけをネットワークに入れるのだ。

ネットワークの中はすべてがプログラムで構成されており、街並みが再現され食事も味覚

を楽しむ程度なら出来る。その他【ボード】と呼ばれる端末により様々な事が

その場でできるようになっていた。

 

「いつもどおりから揚げ定食にしよう・・・・・お腹壊したくないし。」

≪から揚げ定食予約しました、ボードクローズします。≫

スクリーンとキーボードが消え、女性は町のメインストリートを歩き出す。

すると悲鳴とともに女性と逆の方向に人々が走り出す・・・・・いや逃げている。

「うむむむぅ〜、ランチタイムの前になって何で出てくるかなぁ〜」

人の流れに反して歩いていくとそこには人の数倍はあるだろう首の無い騎士の姿。

巨大な剣を振り回し、建物やその場にあったテラスのテーブルなどを破壊している。

「騎士タイプかぁ・・・・・ボードオープン!!」

≪ボードオープンします≫

「通信・・・本部。」

≪通常回線と専用回線があります。≫

「専用回線・・・早くぅ!!」

≪通信繋がりました、ご相手はクルーガー・フェッロ様≫

スクリーンに金髪の髪を三つ網に纏めたつり目の女性がスクリーンに現れる。

『状況は?』

「え〜とバグ、騎士タイプ一体、被害は多少プログラム破壊は見られますけど微々たる物

かな。あれ、司令は?」

『あのクソジジイは今部屋で熊の木彫り抱いて空気イス十二時間の刑に処してるわ。

無断で私の原寸大フィギュアを作っていたものだから。』

フェッロの後ろで“完成度75%のところでぇ〜” と男性の声が聞こえる。

フェッロはさり気なくその声を無視する。

『それは置いといて騎士タイプなら増援はいらないわね、いい?』

「あぁ〜それはいいんですけど、から揚げ定食を予約してたんで受け取っといてもらえますか?」

フェッロの後ろで再び“置いといていいのかぁ〜ワシは捨てられたのかぁ”と男性の声が聞こえるが

フェッロが手に何故か持っていたハンマーを後ろに投げると鈍い音がして男性の声が止む。

『はいはい、わかったわよ。じゃあ気をつけて。』

「は〜い。あととりあえず側頭部にハンマーが直撃したっぽいクソジジイさんの止血位してあげてくださいねぇ〜」

『善処する事にする。通信切るわよ。』

≪通信終了しました≫

「さて、アクトキー。」

≪アクトキーを表示します。≫

女性の目の前に鍵が現れそれを女性は腕輪にある鍵穴に差し込む。

すると腕輪がカチという音と共に外れる。

≪アクト解放≫

女性は腕を軽く回し、

「う〜ん、G3自動小銃でいいかなぁ・・・転送開始。」

と言うと手に自動小銃が構成され現れる。

「こちらですよ、首無しさん!!」

引き金を引き、デリート(消去)のプログラムの弾丸を飛ばす、が

首なし騎士の鎧に弾かれる。

「あぁ―!!プロテクト付けてるなんてバグのクセに生意気すぎ!!」

しかし先ほどの銃撃で首無し騎士は女性に気づき、剣を構えて走ってくる。

女性が右に飛んだ直後に振り下ろされた巨剣が地面を割る・・・・・。

横から巨剣に銃弾を集中させると巨剣が銃弾を撃ち込まれた場所を中心に折れた。

「これで暴れる事はできな・・・・・へ?」

首無し騎士は右手に持っていた折れた巨剣を捨て、左手に新たな巨剣を構成し、

女性に向けて振り落とす。

“それは反則だよぉ”

といいながら女性は左に飛び何とかその一撃を避けるが、壁際に追い込まれてしまった。

「ピンチ・・・・かな。」

首無し騎士が巨剣を女性に振り落とす、女性は諦めて目を瞑るが巨剣がいっこうに降りて

こない。目を開けるとそこには・・・・・。

「ふむ、日本で習った体術がこんな所で役に立つとはな。大丈夫か?」

女性の前に立っているのはスーツの男、その男は自分と同じくらいある巨剣を白刃取りしていた。

「だ、大丈夫ですよぉ。それより・・・・・・。」

「この状態じゃ話し難い、ちょっと待て。」

女性の言葉を遮り、スーとの男・・・・ジョセは白刃取りしている手を横に曲げ、巨剣の軌道

を逸らし、がら空きになった首無し騎士の腹に拳を叩き込む。

首無し騎士は吹き飛び、女性とは逆側の壁に叩きつけられる。男はそれを見た後女性を振り返り、右手を差し出す。

「俺はジョセ・シュバイツァー、国際警察の者だ。」

女性はジョセの差し出した右手を握り返し口を開く。

「あ、え〜とENG(Electronic Network  uardian)所属、美里・エルメス捜査官です。」

「ENG・・・・・国家警察のようなものか・・・・それで美里捜査官、あの時代遅れの騎士はなんだ?」

「いわいるバグという物でデータが何らかの理由で損傷、改変を受けて

不安定になるとたまにああなってしまうんです。最近多いんですよ。」

そんな会話をしていると、騎士バグが起き上がる。

「あまり効いていない様だな・・・・かなり力を入れたつもりなんだが。」

「あ、もしかしてジョセさん、この国に着たばっかりだったりします?」

「その通りだ。」

「ああ、やっぱり♪」

突進してきた騎士バグを再び殴り飛ばしジョセは首を捻る。

「外とここは何か違うところがあるのか?ほとんど外と一緒だと聞いているのだが。」

「えぇ〜とまずは『ボードオープン』と言ってみてください。」

「ボードオープン・・・・。」

≪初期化開始・・・・・・・・完了、ボードオープンします≫

するとジョセの目の前に美里と同じようにスクリーンとキーボードが出現する。

「これは・・・・?」

「これがボードと呼ばれるこの国独特の携帯端末です。まぁ持ち歩きのノートPCの

高性能版と思っていただいてOKですね。」

「なるほど。いや、これは後ほど聞くとして何故あのバグには俺の攻撃が効かないのだ?」

「簡単に言えばこの国は電脳空間にあるからです。私達の体から建物まで全てがプログラ

ムなんですよぉ、バグももちろんのことですから、何か特殊な物を破壊するには特殊な道

具が要る様にこの世界ではクラッシュ(消去プログラム)を武器や拳に添付しなきゃ破壊はできないんです。」

美里はニッコリ笑いながら“まぁ”と話を続ける。

「簡単に言えば念じちゃえばOKですよ、無意識に殴らないで“ぶっ壊れろ”とか“死ね”

とか“逝ってよし”とか念じるんです・・・・・・。」

「最後のは微妙だがわかった・・・・早速やってみよう。」

後ろからいつの間にか接近した騎士バグが剣を振り下ろすがジョセはその剣を掴み叩き折

り、拳を再び騎士バグの体に叩き込む。騎士バグは損傷はしているもののまだ動けるようだった。

「一番効果があるのは攻撃のときに叫んじゃう事ですよ。」

「それを早く言ってくれ・・・・・。」

剣を折られてもなお腕を振り回して襲ってくる騎士バグ・・・・・ジョセは大きく息を吸い叫

びながら拳を繰り出した。

「粉砕ッ!!」

ジョセの拳が当たった瞬間、騎士バグは砂の様に散っていった、文字通り粉砕したのだ。

「お見事です♪にしてもジョセさんは何故この国へ?」

「ある男を追っている・・・・・。」

美里は腕輪を付け直し言った。

「そういうことでしたら、本部に来てもらうのが良いですね、メインサーバーに接続できるのは本部しかありませんし。ついてきて下さい。」

 

 

「はい、ここですよ〜。」

騎士バグと戦った場所からメインストリートを少し歩くと美里の制服の色と同じ

色をした建物が現れる。その建物の扉に手をかけ美里はジョセを振り返る。

「ここがENG本部です、どうぞ。」

そして二人が入ると受付に一人の女性がいる。フェッロだ。

「あら、お帰りなさい、美里。え〜とそちらの方はジョセさんですね。」

「何故俺の名前を?」

「美里から連絡受けたときに失礼だとは思ったけどちょっと調べさせてもらったわ、ジョセ元捜査官さん。」

「あれ、元って。」

ジョセは苦笑を浮かべため息をつき

「こんなに早くばれるとはな。」

「つい一ヶ月前に志願退職・・・・・って経歴には書いてあったわね。」

「リースという男を追っていた・・・・・。」

フェッロは“やれやれ”といった感じでキーボードを叩き

「そのリースって言う男もあなたに追われて最後は自らビルから投身自殺したんでしょ。

追うって言ったってねぇ〜」

「しかし奴はこの国にいるといって飛び降りたっ!!!!!!」

受付の机を叩きいきなり怒鳴ったジョセにその場にいた全員が驚く。美里など尻餅までついてしまっている。

「す、すまない。だが国際警察の上の奴らはこれで捜査終了だといった。

だから俺はやめて独自に捜査する事にしたんだ。」

「でも、捜査権はないっと。」

フェッロが言うとジョセは黙り込んでしまう。すると美里が何か思いついたように手をたたく。

「それじゃあここで雇うっていうのはどうかなぁ。」

「あのねぇ〜だから彼の調べたがってるリースは死んでるし、そもそも司令の許可を貰わ

ないと・・・・・・・・。」

「別に良いよ・・・・許可。」

受付奥の部屋からENGの制服を着た頭に包帯を巻いた老人が出てくる。

「多分、ジョセ君だったかな、君の言っていることは正しいだろ。」

「え?なんでです、司令?」

フェッロが疑問の声を上げる。司令と呼ばれた老人は髭をいじる。

「いやな、そのリースが飛び降りた時刻と同じ時間にこの国に0.1秒間だけだが

この国への不正進入の感知プログラムが作動したんでな。

ジョセ君、リースは飛び降りる前か後でもいいが携帯電話か小型ノートPCを

もっていなかったかい?」

「確かに携帯電話を右手に握り締めていた・・・・。」

「やはりなぁ、不正進入の一つの手段だわ。まぁそれも高度な技術が必要で

一般人に出来るわけは無いがな。」

「奴は私と同じ国際警察の者でその前はFBIで電子戦を専門にしていた。」

「やっぱりなぁ、こりゃぁ久々にこの本部も忙しくなる。」

「え、でもただの不法入国ですよね、手配を回しておけばいいじゃないですかぁ?」

美里の言葉にフェッロも頷く。司令はやれやれといった表情で言う。

「バグが増えたのもリースって奴が不法侵入した時期と一致するだろうが。」

司令の言葉にその場の全員が驚きの顔を浮かべる。

「まぁという事で忙しくなるだろうから人手もいるでしょ、それにジョセ君も

美里君と同じようにアクターだから戦力になるだろうしね。」

よく見るとジョセの腕にも美里と同じ腕輪をつけていた。

「この国に入国したときに付けられたのだがこの腕輪は何なのだ?」

「は〜い、それは僕が説明しま・・・・・アデッ」

声がした方に向くと一人の子供が足元まで来ている大人用の白衣を着て倒れている。

自分の白衣を自分の足で踏みつけて転んだのだ。その姿を指差してジョセは言う。

「あの子供は?」

「あぁ、彼はENG技術課の課長ですよ。名前はミッシア」

「あぁ〜あ、大丈夫?そんなブカブカな白衣着ているからよ。」

美里がジョセに説明すると、フェッロが子供・・・ミッシアを助け起す。

「いいの!!さてとその腕輪だけどね。その腕輪はアクトの

制御のために付けられるんだよ。」

「アクト?」

白衣のポケットに手を突っ込みながらミッシアがジョセの前まで近づいてくる。

「特殊能力さ。現実世界で言う特化した才能の電脳版といったところだよ。

そこの美里さん・・・彼女は想像力が人並み以上に発達しているからアクトを発動させる

と自分の想像した物を手元に構成して作り出すことが出来るんだ。ジョセさんのアクト、

入国の検疫所だと有るか無いか調べられるだけだし、まだ実際見たこと無い分からないけ

ど騎士バグを素手で吹き飛ばした面からいっても多分格闘系のアクトだろうね。」

“なるほど・・・・・”と呟くジョセの横でミッシアの説明は続く。

「まぁ誰もが持っているというわけじゃないし、その腕輪をつけている限りは使えない。

使うにはいちいち本部に許可を貰うかここの捜査員でなくてはいけないのさ。」

『で、どうするんだい?』

司令、フェッロ、ミッシア、そして美里に同時に言われ、ジョセは冷や汗を掻きながら一歩引き

「こ、これからよろしくたのむ。」

その言葉に美里は“やった〜♪”と喜びながら飛びはね、フェッロは“制服用意しなきゃ”

と急がしそうに倉庫に向かっていき、ミッシアは研究室に戻ろうと歩みを進めながら“興味深い研究材料が手に”

と言ったところでやっぱり転んだ。司令は髭をいじりながら司令室に戻ってしまった。

「あ、そういえば・・・・・。」

そう言い、美里は周りを見回して何かを探し出し見つからなかったらしく

探しものがあると思ったのか司令室に入っていく、と共に美里の叫び声。

「ああぁ!!!私のからあげ定食、何司令が食べてるんですかぁ、バカァァァァァァ!!!」

その後司令室から、花瓶が割れる音から何かが机から落ちた音、銃撃音やエグイ打撃音、

そして司令の恐怖の意思のこもった叫びが聞こえてくる。

「なんだかすごい不安だ・・・・・・。」

ジョセはそんな音を聞きながらこれからのことを思いガックリとうな垂れた。

 

 

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