電脳のエタニティ
第二話 電脳混沌〜electronic network chaos〜
「あぁあそこの八百屋、新鮮だよ〜とか言ってるんだけど、あの野菜もプログラムで
構成されてるんで新鮮も腐ってるもへったくれも無いんですけどねぇ〜」
「ふむ・・・・。」
メインストリートを美里に連れられENGの制服を着たジョセはユックリ歩く、
ジョセの町案内を美里が買って出たのだ。
「あ、そのわき道は行っちゃダメですよ。『キター』とか『イッテヨシ』とか
独特の言葉が飛び交っていますから洗脳されちゃいますよ。」
「だが美里捜査官、君はよく行くんじゃないか?」
ジョセが前回の戦闘での美里の言葉を思い出し言うと嬉しそうに美里が手をたたく。
「えぇ、結構行きますよ、よく分かりましたねぇ〜。ちなみに司令はあの道の常連で
、この前ミッシアを連れてあの道行ったら、ミッシアったら一週間部屋にこもって
独り言をブツブツと言っていて・・・・・・・・。」
“可愛そうに・・・・・・”
ジョセはそのミッシアの姿がリアルに頭の中に浮かび、同情しながら正面に目線を向け
ある建物に気づく。
「あの城は何だ?美里捜査官。」
ジョセの指差した先には丘の上に巨大な城が立っている。
「えっと私は美里と呼び捨てでいいですよ、メンドイし。っとまぁあの城ですけど
あれはこの国の要、メインシステムを視覚化したんですよ。通称永遠の城(エターナルキャッスル)といいます。
あそこは捜査官でも入れないんですよ、入れるのは他の国々のトップとこの国の評議員
六人だけで・・・・・・、あ、評議員って言うのは国のトップの権力を6人に分けているんで全
員一致するまでトップ決定とか出来ないんです。」
説明しているときに二人の横を黒塗りの車が通り抜ける、その後部座席には一人の老女が座っていた。
「あ、あの車の中にいた女性、あの人も評議員の一人でレイラ・セオリーニさんっていうんですよ。」
「あの老女・・・・・・・。」
美里は歩みを止め、振り返り近くの喫茶を指差す。
「少し休んでいきましょうよぉ〜。」
「あぁ、構わないぞ。」
そして席に着き美里はメニューを見始める。
「私はパフェ三つでいいかなぁ〜」
「そ、そんなに食べるのか?」
ジョセの言葉に美里は少し口を膨らませる。
「女の子は甘い物とから揚げ好きですよ、これでも少ない方です!!」
「から揚げは美里だけだと思うぞ・・・・うん。」
“そうですかねぇ〜、でジョセさんは何に?”と言いつつ美里がジョセにメニューを渡し
ジョセがメニューに目を通すが一つの項目に冷や汗を流しだす。
「この“熱血!!熱き魂の汗”ってなんだ?というか誰の汗?いやその前に飲み物か!?」
「あ、それを度胸試しに飲んだ四人組が全員即倒して一週間意識不明になったそうですよ。」
「そんなもの置くなぁ!!」
イスを蹴り倒し思わず立ち上がる。
「そんなに挑戦したいからって興奮しないでくださいよ、ジョセさん。」
「美里、君の脳内解釈はどうなってるんだ?もしかして君のシナプスは時代遅れの電話回線か?」
「最新の光ファイバーです。っていうかジョセさんって面白い事いいますね・・・・・まぁ、あ
れと天才は紙一重と言いますし。」
「いや、回答になってないと思う・・・・フォローにもなってないし。
まぁいい、俺はコーヒーでいいか。」
注文を済ますとすぐに注文した物が運ばれてくる。
「早いな・・・・。」
「それは、プログラム構成するだけですから。いっただきまぁ〜す♪」
コーヒーを一飲みしジョセは“そういえば”と話を始める
「美里は何故この国に来ようと思ったんだ?」
「・・・そうですねぇ、ハム・・・あぁおいしいぃ♪
私、五年前以前の記憶が無いんですよ・・・・いわいる記憶喪失って奴で。」
「記憶って、それはアクセス時などに損失する場合があるから常にこの国に入国時にサーバーにバックアップが置かれるはずだが。」
パフェを食べるためのスプーンを指揮棒のように軽く振りながら美里は言う。
「そうなんですけどねぇ〜、なんか私だけ無いんですよ。司令にも調べてもらったんです
けど、私の本体も記憶のバックアップも見つからないって状態で。」
“まぁ”と間を取り、パフェを一口、口に含む。
「今が楽しいからそれでいいですけどね。」
「君は強いな・・・・、記憶が無いのは不安だと思うが・・・・。」
「ん〜、フェッロもミッシアも司令もいますからね、そして今は貴方も。」
「そう言って貰えると俺も嬉しい・・・・。」
「じゃあじゃあ私からも質問いいですか?」
「ああ、別に構わない。」
美里はパフェを一口食べて、スプーンを置き、真剣な顔でジョセを見つめる。
「ジョセさんって・・・・好きな人いるんですか?」
ジョセは驚いて飲みかけていたコーヒーを噴出しそうになる。
「・・・・ゴホッ、ゴホッ・・・君はいきなり何を言うんだ!?」
「いやぁ〜やっぱ女の子はそういう話が好きなんですよ〜、で、いるんですか?」
ジョセは少々顔を赤くしながら“ゴホン”と喉を鳴らす。
「い、今のところいない・・・。」
「じゃあ、じゃあ近くに貴方の事が好きになっている女性がいたらどうします?」
「なんでそんなことまで・・・・・・いわなければならないのだ・・・・?」
ジョセがそう言ってコーヒーを飲もうとした瞬間、いきなり爆音が響く。
「なんだっ!?」
周りを見回すと二箇所で爆発が起きている。
「煙・・・・・爆発ですか・・・・・?」
「一箇所は永遠の城への幹線道路・・・・・もう一箇所は本部か!?
ボードオープン、通信、本部へ。」
≪ボードオープン、通信します、ご相手はクルーガー・フェッロ様≫
『何っ!?』
いきなり緊迫したフェッロの声。
「そっちから煙が見えるが何が!?」
『なにがも何もへったくれもクソッタレも無いわよ、バグの大量出現して
誰かに操られるように本部を襲ってきたのよ、もう捜査員総出で駆除しなきゃなんないの!!」
「でももう一箇所煙が上がっているんですけど。」
しばらく間を空けた後フェッロが言った。
『わるいけど二人で処理してくれる?アクトキーは送っておくから。』
「えぇ〜!!!もう一箇所も大量にバグが出てたら二人じゃ対処できませんよ!!」
『ぱっぱとコッチ片付けていくからそれまで粘ってちょうだい!!』
美里がまだ何か言おうとするのをジョセが手で制す。
「わかった、これよりもう一箇所の現場に行く。ただ下手すると足止め程度しか出来んからな。」
『上等。じゃあ頼むわ、こっちも・・・・・。』
窓の割れる音共に通信が切れる。
「行くぞ、美里。」
「えっ!?マジで行く気満々ですか!?」
「当たり前だ、被害を防ぐのがENGの役目だろう。リースを探し出すのが
一番だが、ENGに入ったからにはやらなくてはな。」
そしてジョセは走り出す。
「ま、待ってくださいよ、ジョセさ〜ん!!」
「ったく、うざったいわね・・・・・。」
発砲音が響く中、机の影に隠れ、サブマシンガンのマガジンを交換しながらフェッロは愚痴る。
マガジンを交換し終え、机から上半身の乗り出しサブマシンガンを乱射し、また机に隠れ
ると、机にビー玉のようなものが数発食い込む。
「数は後衛に道化師タイプ6、前衛に騎士タイプ8か・・・・。」
道化師の姿をしているバグと騎士タイプもいる。道化師タイプのバグが手に数個のビー球
を取り出し、息をフッと吹きかけると銃弾のようにビー球が飛んでいく。
「で、なんで一気にこんなにバグが出てしかもこの本部を狙ったかわかったの、ミッシア!?」
「わかんないよ!!」
フェッロの横で必死にキーボードを打ち原因を探るミッシア。
「まったく・・・・本部が襲撃されるなんてなぁ・・・ハッハッハ、ひょ〜ほっほ♪」
その道化師バグが打ち出す弾の嵐を一人楽しそう奇声を上げながら避けまくる男がいる。
司令と呼ばれた老人だ。
“あのバカクソジジイ・・・・”とフェッロが頭を押さえる。
「ホッホッホ、ダンス、ダンシング〜♪」
「なにやってるんですか、司令!!」
顔だけ机から出しフェッロが叫ぶと
「おお、フェッロ君、楽しいぞ、君もどうだね?ヒャホウ♪」
「ヒャホウ♪じゃな・・・・・うわ!」
怒鳴ろうとしたフェッロに弾が飛んできたため屈む。
司令に弾が当たらないと思ったのか道化師タイプバグは数個のボールを取り出しお手玉をしだす。
そしてさり気ない動作でそのボールを司令に投げる。
「お、次はお手玉かぁ〜なつかし・・・・・うぇっ!?」
司令の前に落ちたボールがいきなり炸裂すると爆発が起き、その爆風で
司令が屈んでいたフェッロ達の上空を通り過ぎ、司令室に飛んでいった。
「わが人生に悔いなしぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」
その後司令室からバカな老人が激突しただろう高級机の吹っ飛ぶ音がする。
『アホ・・・・・。』
その場にいた捜査員全員が改めてため息をつき言った。
フェッロとミッシアの横にポロッと何かが落ちてくる。それを見て
『ゲッ!!』
フェッロとミッシアは一気に机の影から逃げ出す、その直後爆発・・・・・。
受身を取って爆発の衝撃を殺し、起き上がってフェッロは叫んだ。
「もう怒ったわよ・・・・・・。ボードオープン、アクトキー!!」
≪アクトキーを表示します≫
フェッロは現れたアクトキーを右腕の腕輪の鍵穴に指し込み、外す。
「G−astrayの威力、その身で思い知るがいいわ!!」
≪アクト解放≫
腕輪が外れてフェッロの手の中に現れたのは人一人よりさらに長く大きい中国風の槍。
フェッロはその槍を頭の上でブンブンと思いっきり回し、正常位に戻し構える。
騎士タイプバグが巨剣を振りかざし襲ってくる。それをフェッロは槍・・・・G−astrayの
柄で受け止める。そして巨剣の軌道を逸らし、柄の先で巨剣を握る手を叩き、巨剣を落と
させ、穂で隙だらけになったボディに突き刺し、上に斬り上げに一刀両断に叩ききる。
そして道化師タイプの飛ばす弾を、自分の前方でプロペラのようにG−astrayを回転させ
弾き、一気に距離を詰め道化師タイプバグを一突きのもとに倒し、横から襲おうとしてい
た騎士タイプバグの剣の持っていた腕を斬り捨て、胴体に柄を叩きつけ吹き飛ばす。
「どんなもんよ!!!」
動きを止めて胸をはるフェッロの後ろから騎士タイプバグが剣を振りかざそうとしたその
時、どこからか複数の銃弾が騎士タイプバグに叩き込まれ騎士タイプバグが倒れ、砂埃を
上げる。
「あぁもう、白衣がボロボロじゃないかぁ〜!!」
騎士タイプバグに銃弾を撃ち込んだ本人であるミッシアが回転式の銃をかまえている。
その銃は天使の絵柄で彩られた銀の銃だった。
「さすがG−Heavenね、普通の銃とは威力が違うわ。」
「アクトとはいえ巨大槍一本で暴れまわるフェッロには劣るよ、まったくね。」
銃倉から空薬莢を出して新しい銃弾を装填する。
「残りは道化師タイプ5、騎士タイプ5か・・・・。」
ミッシアが呟くと“援護宜しく!!”と言ってフェッロが一気に敵バグの中に突っ込んでいく。
「身勝手すぎっ!!」
ミッシアは叫んで突っ込んでいくフェッロに向かって弾を撃とうとする道化師タイプバグ
に銃弾を叩き込む。
騎士タイプバグ二体が一気にフェッロに襲い掛かるとフェッロは二本の巨剣をまとめて
柄で止める。そして片方の騎士タイプバグを蹴り飛ばし、残りの騎士タイプバグを
横に真っ二つにする。そして先ほど蹴り飛ばした騎士タイプバグが立ち上がろうとするの
を上に乗って押さえつけえG−astrayを上から突き刺す。突き刺したG−astrayを引き抜
き右にジャンプするとフェッロが先ほどまでいた場所に道化師タイプバグの飛ばした弾の
嵐が降り注ぐ。
「コッチを忘れないでよ!!」
さらに追跡してフェッロに弾を浴びせようとしていた道化師タイプにミッシアが銃弾
を叩き込む。
「残り道化師タイプ4、騎士タイプ3!!うわっ!?」
ミッシアの頭の上を騎士タイプバグが飛んでいき司令室に突っ込む。
「騎士タイプ2!!んで、道化師タイプ残り2!!」
フェッロは二体の道化師タイプバグを串刺しにして、高笑い
「ホッホッホッホッホ♪私に叶うはずが無いでしょうがぁ〜」
「あう、フェッロが異常なハイテンションになってるし・・・・・、とりあえず道化師タイプ全滅!!」
ミッシアに頭を撃ち抜かれ道化師タイプの残りが倒れ、消え去る。
「こっちもラストォ―!!」
騎士タイプもフェッロに突き抜かれ倒れる。
「ざっとこんなものね・・・・・さてと・・・・・。」
「早く美里達の所に急行しなきゃね・・・・・・・・ん?」
いきなり司令室から騎士タイプが瓦礫を掻き分けて起き上がる。
「まだ生きてたの!?」
『まてぇ〜わしだ、わし〜!!』
ミッシアとフェッロが戦闘態勢をとると起き上がった騎士タイプバグから
声がする。戦闘態勢を解いてフェッロが口を開く。
「もしかして・・・・・・・」
『そうじゃ、わしだよ、わし!!』
「新手のオレオレ詐欺・・・・・いえ、わしわし詐欺ねっ!!!」
「なるほど、さすがフェッロ
きっとか弱い老人だと見せかけて同情で金を騙し取ろうとする手口だね。」
『ちゃうわ、ボケェェェェ!!司令だよ、司令!!』
フェッロの発言にミッシアが頷くと鎧を勢いよく脱ぐ。するとそこには服がボロボロになった司令が姿を現す。
「爆発で吹き飛ばされて、やっとこさ起き上がったら突然騎士タイプが飛んできて
ワシの上から被さるし、いったい何がなんだか・・・・・・って何ワシを無視してさっさ
と美里ちゃんとこ行こうとしてるの、何、新手の老人虐めか〜相談所に行っちゃうぞぉ。」
フェッロとミッシアの二人は司令を一切五感からシャットアウトして壊れた入り口のドアをまたいで外に出る。
本部とその周辺以外は被害はなさそうだ、しかし・・・・・・。
「あそこだね・・・・・・。」
「確かに煙が上がっている・・・・・早く行くわよ!!」
「わしの話をき、ウギャ!!」
わざわざ後ろから追いかけてきた司令を二人は殴り飛ばし、美里とジョセの向かった現場に走り出した・・・・。
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