電脳のエタニティ

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第三話 〜electron network.  Wating period

 

 

 

「ま、待ってくださいよぉ〜!!」

「遅いぞ、美里・・・・。」

美里の叫びにジョセは走る足を止めずに目線だけを右後方で走っている美里に向ける。

煙が見た喫茶からずっと走り続けていたのだがジョセは疲れていない、だが対照的に美里

はかなり疲れた様子で走っている。

「大体ですね、私はジョセさんみたいに体力バカじゃなくて知性的女性なんですよぉ!!」

「それはありえんな・・・・・俺は体力バカじゃないし美里は知性のかけらも無い・・・・

そうだな・・・・うん、バカだ・・・うん。」

「ひ、ひっどぉぉぉぉい!!バカって言った人が馬鹿なんですよっ!!」

“小学生並みの口喧嘩しか出来んのか、美里は・・・。”

「何か言いましたかぁ〜?フフフフフフ。」

ボソッと呟いたジョセの言葉に妖しい笑みを浮かべ、何処からか取り出した銃を

構える美里。慌ててしらんぷりしてジョセは走りに集中する。

「っと、そろそろ煙が上がっていた場所だな。」

「そうですね・・・・・あ、あれは!?」

美里とジョセの目線の先、煙の原因は黒い車が横転していた。

「レイラ氏が乗っていた車だな・・・行くぞ。」

二人が近づいていくと護衛だろうか、黒服の男二人が横転した車の陰から何かに向け銃を

発砲している。その後ろには頭を抱え、しゃがみ込んだレイラの姿。

「ENGの者だ、どうした?」

「見れば分かるだろうが!?襲撃されたんだ!!アイツにな!!」

護衛の目線の先には一人のスーツに髪をツインテールにした、マスケット銃を持っている

少女。その少女に向かって飛ぶ護衛の放った銃弾は何故か少女の前で親指ほどの大きさの何かに弾かれる。

「効かないのですわ、届かないのですわ、無駄なのですわぁ〜♪」

少女はその場で踊りだす。ジョセは護衛から銃を奪い取り少女に向かって弾倉に入ってい

た銃弾を全部撃つ、が、やはり少女の目の前で何かに弾かれてしまう。

「残念なのですわ、何度撃っても無駄なのですわぁ〜。」

「あの銃弾を撃ち落している物体は?っていうかあの少女は誰だ?」

額に手をあて光を遮って遠くの物を見るような格好で美里が呟いた

「犯罪リストには載ってないのであの少女の素性は分かりませんね。ちなみに彼女の前で

こちらの銃弾を落としていたのもおそらく少女の持っているマスケット銃から放たれた銃弾でしょうねぇ〜。」

「銃弾、そんなバカな?」

「多分あの少女のアクトウェポンですねぇ〜、足元に腕輪が落ちてますし。」

「ふむ、アクトウェポンとはなんだ?そしてアクトキーは本部からしかDLできないのでは?」

「二ついっぺんに聞かないでくださいよ!!

えっとですね、アクトウェポンはアクトを持っている人はその人の潜在能力や性格を基に

して専用の武器を構成できるんですよ、たしかフェッロは巨大槍でミッシアは銀の銃だっ

たかなぁ〜。んでもってアクトキーは本部の専用サーバー領域

からしかDLできないはずなんですけどねぇ〜、さっぱりです。」

「しょうがない、とりあえず護衛の方々はレイラ氏を避難させてくれ。ここはENGが受け持つ。」

ジョセが言うと護衛はレイラを立ち上がらせ走り出す。

「私のアクトウェポン【Der FREISCH:UTZ(魔弾の射手)】は逃がしませんわ、恐怖ですわ、殺害ですわ〜。」

少女がマスケット銃を構え、銃弾を撃つ。撃ち出された銃弾は護衛の一人を撃ちぬき、軌

道を変え、もう一人の護衛もそのまま撃ち抜く。銃弾はまた軌道を変えレイラに襲い掛かる。

「危ないっ!!」

美里がレイラをかばって押し倒すと美里の腕を掠めて銃弾が通り過ぎる

「ダメですわ、避けてはいけませんわ、私の銃弾は生きる事を許しませんわ!!」

叫ぶ少女の腹にいつの間にか接近したジョセが拳を叩き込もうとするが少女は後ろに飛び回避する。

「チッ!!」

「危ないですわ、痛いの嫌ですわ、私を殴ろうなんてムカつきMAXなのですわ!!」

少女がマスケット銃を撃つとジョセは片手を突いて横に飛ぶ。普通なら避けられて地面に

めり込むはずの少女の撃った弾は地面スレスレで軌道を変えてジョセに襲い掛かる。

ジョセがとっさに顔を右に傾けると左頬を掠りつつも避けるがまた軌道を変え、今度は後

ろからジョセを襲う。流石に今度は避けきれない。

「ジョセさんはやらせませんよ!!」

その声と共に巨大な弾が猛スピードで飛んできてマスケット銃の銃弾を粉々にして吹き飛

ばす。巨大な弾の威力は凄まじく、弾が通った跡は弾の衝撃波で地面が抉れていた。

ジョセと少女が振り向くとそこには空母のカタパルトを人が持てる位に小型にしたような

長方形の物を構えた美里の姿。

「乙女の柔肌に傷を付けた罪は重いのですよぉ〜お穣ちゃん!!」

「そんなデカブツを担いで言う言葉じゃないな、美里。説得力無さ過ぎだ。」

「あ、そういうことまた言っちゃいますか!?もうジョセさん巻き込んでもベリーグット

にしちゃいますからね、減点じゃなくてボーナス得点にしちゃいますからね!!」

「悪いがこれはガンシューティングゲームじゃないと言っておこう。にしてもそのデカブツはなんだ?」

美里は得意げに胸を張り

「私のアクトウェポンで名前はG−judgment。正式名称はハイパーヴェロシティーガンです♪」

「ハイパーヴェロシティーガン?」

「まぁ簡単アッサリ言っちゃえば電磁レールガンっていったところでしょうか。」

「ほぉ〜、電磁レールガンか、なるほど・・・・・・って電磁レールガンだと!?

軍事常識から考えてレールガンは小型化が難しいと言われているんだぞ!?ましてや携帯化など・・・・・・・・・。」

美里は人差し指を頬に当て、少し考えてから一言。

「私の得意分野(アクト)が創造だから問題なしってことで万事OK♪って事で。」

「OK?ハッハッハ、問題ありすぎだ美里。っていうかこの国、電子国家だからって

物理法則無視しすぎだぞ。」

「そこはノーマルな頭で真剣に考えちゃいけませんよ。私みたいにもっと柔らかな発想で。」

「ハッハッハッハ、美里の発想は柔らかいを通り過ぎてドロドロアメーバ域に達しているぞ、いや、マジで。」

「アハハハハ、じゃあジョセさんはダイヤモンド以上の堅さの発想しか持っていないんですね。」

いつの間にか美里とジョセは引きつった笑顔で額を突き合わせにらみ合いを始める。

無視される形になってしまった少女はマスケット銃を持つ手を震わせながら怒り出す。

「無視ですわ、存在が薄いのですわ、忘れられてるのですわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

『うるさい、餓鬼!!!』

「うっ!惨めですわ、辛いですわ、寂しいですわ。」

美里とジョセに怒鳴られて少女はひざを抱えていじけてしまった。

「ジョセさんはだいたいですね・・・・・・・。」

「美里、君は何でそうやって・・・・・・・。」

「ちょっとお二人さん?」

隠れていたレイラが状況に見かねて出てくる。

『なんですか!?』

「いや、ね、あっちで凹んでた襲撃少女がこっちに向けてマスケット銃構えているけど

痴話喧嘩していていいのかしらと思ってね。」

『へ?』

「死ねですわ、死ねですわ、死ねですわ!!!」

ジョセはレイラを抱えると後ろに飛び、銃弾を回避する。同じように回避した美里が

G−judgmentを構え、弾を撃つが衝撃波に態勢を崩しつつも少女は美里の放った弾を

避ける。

「避けやすいのですわ、うすのろですわ、カメですわぁ♪」

少女の放った銃弾が軌道を変えてジョセに襲い掛かる。ジョセは左手にレイラを抱えてい

るため避けきれるはずも無かった。

「ジョセさん、アクトを!!アクトを使ってください!!」

「わかった、ボードオープン!!アクトキー。」

≪ボードオープンしました、アクトキーを表示します≫

ジョセはレイラを急いで地面に下ろし鍵を腕輪の鍵穴に差し込む。

≪アクト解放≫

その瞬間少女の放った銃弾がジョセに当たったように見えた。

「アハハ、死んだのですわ、撃ち抜いたのですわ、雑魚ですわぁ!!」

「まだ判断するのは早いと思うぞ。」

少女が笑うのをやめ、ジョセを見るとジョセの右手には先ほどは付けていなかっただろう

白銀に輝く篭手。そしてその篭手を付けた右手の握り拳を開くとそこからポロリと一発

の銃弾が落ちる。そしてジョセは改めて自分の右手を見つめる。

「これが俺のアクトウェポン・・・・・。」

「マグレですわ、間違いですわ、私の弾頭に貫けないものなど無いのですわ!!」

「行くぞ、美里!援護しろ。」

「わっかりましたぁ〜!!」

G−judgmentを構え、弾を撃つと同時にジョセは一気に走り出す。

「危ないのですわ、危険なのですわ、デンジャラスですわぁ!!」

美里の放った弾を避けながら接近してくるジョセに狙いを定めてマスケット銃を撃つ。

ジョセは篭手で銃弾を弾き、走る。弾かれた銃弾がまた軌道を変えてジョセに襲い掛かる

が、美里のG−judgmentから撃ち出された弾が衝撃波と共に少女の弾を撃ち落す。

「終わりだっ!!」

少女に篭手の付けている拳を叩きつけようとした瞬間、一つの手がその拳を押さえつける。

「この勝負は預からせてもらう。」

少女をかばうように前に立ち、ジョセの拳を受け止めたのは一人の帽を深く被った白衣の

男。

「ありがとうなのですわ、サンキューなのですわ、感激なのですわ、ファウスト。」

「カスパール、帰るぞ。」

「逃がすか!?」

ジョセが再び拳を振るおうとしたとき、今度は後ろから剣を突きつけられる。

「ファウストはこの勝負を預かるといったはずですよ。」

後ろに立っていたのは剣を持った白髪の青年。

「それでは皆さん、御機嫌よう。」

ジョセに突きつけていた剣を鞘に収め、懐から何かを二つ取り出し、一つを美里の方へ投

げ、残りの一つを足元に落とす。すると落とした物体が破裂し凄まじい光がその場を包む。

「閃光弾!?」

思わず目を閉じてしまったジョセが再び目を開けるとそこにはカスパールと呼ばれたマス

ケット銃を持った少女も。ファウストと呼ばれた白衣の男も、ジョセに剣を突きつけた白

髪の青年も居なくなっていた。

「逃げられちゃいましたねぇ〜、あの人達は何の目的でこんなことしたんでしょう。」

ゆっくりと美里が服についた砂埃を掃いつつ近づいてくる。

「分からないな・・・・だがレイラ氏を助けられただけよしとしよう・・・・・・。」

“そうですね”と美里が言うと丁度遠くから聞きなれた声が聞こえる。

声のほうを向くとフェッロとミッシアが走ってくるのが見えた。

「遅すぎですねぇ〜増援・・・・・・。あとでから揚げ弁当おごってもらわなきゃ♪」

「そうだな、腹もへった。にしても何故にから揚げ弁当なのだ?」

「だからそれはですねぇ〜・・・・・・。」

 

その後、フェッロ達によってレイラは安全な場所まで運ばれた。

本部に戻った美里達に待っていたのは食事ではなく壊れまくった本部の片付けなのは

言うまでも無い事だろう・・・・・・・・・・・。

 

 

 

 

【某所】

暗い部屋にキーボードを打つ音が聞こえる。そしてスクリーンの光で一人の男の顔が見え

る。伸ばし放題の髪に無精ひげ・・・そして白衣を着た男・・・・・リースは煙草を咥えひたすら

キーボードを打っている。その後ろに一人の影が立つ。

「リース、計画の方は順調かい?」

「ん、まぁまぁです。」

「そういえばあなたの言っていた男、この国に来たみたいね。ボチボチ腕は立つみたいね。

目の前で見させてもらったわよ、貴方の部下の一人を退けたのを。」

リースのキーボードを打つ指が一瞬止り、後ろに居た人物を振り返る。

「まぁそれはそうでしょう、しかし我が部下達も本気を出していませんので。」

“それより”と話を続ける

王女へのルートは手に入りましたか?」

「ええ、これよ。」

リースはCDを渡されそれを解凍し見始める。

「ほう、細かい道までしっかり載ってますね・・・・、これで・・・・。」

リースはスクリーンに目線を戻す。スクリーンの光がリースの後ろにいる人物の顔も浮かぶ。

「計画を実行に移せそうです。」

「ええ。それは良かった。」

そう言って影は部屋を出て行った。

「さてさて、これで俺は手札をそろえたぜ、ジョセ。お前はどんな手を見せてくれるんだろうな。」

リースはキーボードを打ちながら呟いたのだった。

 

 

第四話

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