電脳のエタニティ

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第五話  〜electron network truth〜

 

 

 

 

 

ENG本部の二階休憩室からフェッロがユックリと一階に降り司令室に入ってくる。

司令室には司令とジョセがいた。

「美里は?」

フェッロに気がついたジョセが聞くとフェッロは“ふぅ”とため息をつく。

「グッスリと寝ているわよ。」

「そうか・・・・・。」

ジョセが呟くと司令は“さて”と呟き口を開く。

「聞きたいことがあるんじゃないかね?ジョセ君。」

「ああ、美里についてだ・・・・・俺が敵にやられそうになったとき彼女の人格が変わった様に

見えた。しかも常識外れのアクト・・・・・そして敵は美里を【鍵】と言った。

教えてくれ、司令!!」

「・・・・・・・・・・・わかった。

まず過去にさかのぼらなければならない・・・・・・わしはある企業家のパートナーとして

世界を駆け回っていた。」

「アルカス・シムカ・・・・・・。」

「ああ、奴には現代では考えられないテクノロジーがあった。そして奴と俺で

創設した会社はみるみるうちに巨大化した。

この電脳世界も出来上がりしばらくたったころ・・・・・奴はわしにこう漏らした。

“ブラックテクノロジーは危険なものだ・・・他の奴に渡すわけにはいかない。”

と・・・・そして奴はこのメインサーバーにそれを何重ものプロテクトを施して封印した。

永遠の城の頂上の部屋にな。さらに最後にパスワードを設定した・・・。

そのパスワードにもプロテクトをかけ・・・・隠した。」

「それはわかったが・・・美里と何の関係が?」

「ふむ・・・・ではジョセ君に質問しよう。君なら大切なものをどうやって隠す?」

「なぜそんなことを・・・・・。」

「いいから答えたまえ。」

ジョセはしばらく考えた後口を開く。

「多重にプロテクトをかけて・・・・誰にも見つからない場所に隠す、か?」

「それがセオリーだな。しかしアルカスは少し違う方法を取った。

自ら思考し、自分自身を守るプログラムを構成し、パスワードを封印し、ガーディアンと

いう別人格のプロテクトをかけた。そして隠す場所は人ごみという名の場所だ。」

「なっ!?」

「巧妙だな・・・パスワードを守るプログラムを人型にして数百万、数千万といる国民の中に

混ぜれば見つけることは困難だ。しかもそのプログラム自身がその事を知らず、また喜怒

哀楽から好きな食べ物・・・・好きな異性まで自分で考えて行動していたら探そうとしても

見つからない。しかも見つかったとしても【フェイルエンジェル】という名の強力な

プロテクトでパスワードを奪うことは不可能に近い。」

「まさか・・・・・。」

「そうだよ、ジョセ君。人型で自分で思考するプログラム・・・それが美里だ。

彼女に現実の肉体時の記憶が無いのはそのため・・・・。

彼女の内部にはブラックテクノロジーへの最終パスワードが隠されているのだ。」

「・・・・・・・・・・・。」

その時だ、司令室の外から何か物音がする。ジョセが急いで司令室から出ると

走り去る美里の背中が見えた。

「美里、待てっ!!」

美里は階段を駆け上りENG本部を駆け上がっていく。そして屋上へと出て、立ち止まる。

ジョセも屋上に到着し、美里に近づこうとしたとき・・・・・。

「来ないでっ!!」

ジョセは足を止める。

「来ないでください、ジョセさん・・・・・・。」

そう言っている美里の肩は震えていた、泣いているのだ。

「私・・・・人間じゃないんですね、すべて設定されたプログラムなんですよね・・・。

笑っちゃいますよね、過去より今が楽しければいいなんて言っちゃって・・・・。

私に過去なんて本当は無かったのに・・・・・。しかも私の中にブラックテクノロジーの

蓋を開けるパスワードがあるなんて・・・・・その事でジョセさんを危険な目に・・・。」

ジョセは黙って歩き出す。美里は叫ぶ。

「来ないでください・・・・来ないでっ!」

ジョセは聞こえていないとでも言うかのように無視し、美里に近づき抱きしめる。

美里は叫びながらジョセを両手で叩き始める。

「離してください、離してよ・・・・私なんか・・・私なんか造られたパスワードを守るだけのプ

ログラムなの・・・・周りを傷つけるだけの・・・・・。」

「何を言っているんだ?美里は。」

「え?」

何も知らないとでもいうかのように発言するジョセに美里は思わず叩く手を止める。

ジョセは美里の涙を指で拭い静かに言う。

「人間だろうとプログラムだろうと、俺が今抱きしめているのはいつも明るくて

優しいがちょっとどこか抜けている・・・甘いものとから揚げが好きで仕事の大切な

パートナーの美里・エルメスという女性がいるだけだ。何の代わりも無い。

だから・・・・泣くな。お前は笑っている方が似合っている。」

顔を赤くしてそっぽを向くジョセを見て美里は笑う。

「ジョセさんがそんなクサイ台詞言うなんて似合わないですねぇ〜、フフフ。」

「む、そう思っても言ったんだから笑うな。」

「あれ〜、さっき笑った方がいいって言いませんでした?」

「フッ、そうだったな・・・・。」

美里は笑いながらジョセから離れて、振り返る。

「それじゃあ私も恥ずかしいけど言っちゃおうかなぁ〜。」

「?」

「やっぱり止めておきます。その代わりに・・・・・。」

そう言ってジョセに近づき美里は背伸びをしてジョセの頬にキスをした。

「私・・・・・ジョセさんに励ましてもらえて・・・・・・私は私だって言って貰えて

嬉しかったです♪ありがとうございます、ジョセさん。」

「いや、まぁ、元気になってもらえて何よりだ・・・・。」

 

 

そんな二人の様子を遠くからフェッロと司令が見ていた。

「彼がいれば大丈夫そうですね・・・・・・。」

「そうだな、ワシらも美里は仲間に変わりはないのだから支えていってやらなきゃのう。」

「ですね・・・・、でも敵は何故美里が鍵だと知っていたのでしょう?」

「わからん・・・知っているのは本人とジョセ、わしとフェッロ・・・・あとは評議員数名だけだ・・・・・・・。

匂うな・・・・評議員と襲撃犯の接点が無いか調べてくれるかね、フェッロ?」

「了解・・・・・。」

フェッロがいなくなった後司令は呟いた。

「大変な事になるな・・・・・・・。」

 

 

 

【そのころ別の某所】

 

 

「ふむ、失敗したか。」

「申し訳ございません・・・・・・。」

煙草を咥えながらキーボードを打っているリースの横でファウストが頭を下げる。

「ま、いいさ・・・俺が自ら行けばいいしな・・・・。」

そう言った時だ、部屋に一人の女性がカスパールを連れて買い物袋を抱えて入ってくる。

「遅かったな、サヤ。」

「ごめんなさい、リース君。カスパールちゃんと途中ではぐれちゃって探してたの。」

「申し訳ないのですわ、ごめんなさいなのですわ、反省なのですわ。」

“それと”とサヤは話を続ける。

「ENGの女性と会ったわ・・・・貴方が鍵と言っていた女性・・・・。」

「あぁ、そいつをさらおうとしてオクタヴィアンがやられた・・・・。」

「そう・・・・。」

サヤの表情が曇る。

「大丈夫だ、今度は俺自身が行くつもりだ、ついて来るか、サヤ?」

「ええ、行くわ。私のアクトがきっと役に立つはずだから。」

リースはキーボードを打つのをやめ立ち上がりサヤの肩に手を置く。

「ジョセもいるぞ・・・・・大丈夫か?」

「貴方についていくと決めたから・・・・・。」

「わかった。タンホイザーもついて来い。」

そう言って歩いていくリースの後ろにサヤと白髪の青年・・・タンホイザーがついていく。

「さぁ宿敵(親友)と再会だ・・・・・。」

リースはそう言って笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

「こっちですよぉ〜ジョセさぁ〜ん。」

そう言って手招きする美里を見てジョセは笑みを浮かべて歩みを進める。

そこはあまり人気の無い上り道・・・・・美里がとっておきの所に案内すると

言ってジョセを引っ張ってきたのだ。

「どうですか?この景色!?」

美里が案内したかった目的地に着き、美里は自慢げにジョセに聞く。

「すごいな・・・・・。」

ジョセが今までいた街を見渡せる丘・・・・・遠くには永遠の白も見える。

「ここ、人もあまり来ませんので静かですし眺めが綺麗ですし私の

お気に入りの場所なんです。司令にもフェッロにもミッシアにも教えて無いんですよ♪

ジョセさんだから教えたんですよぉ。」

「それは光栄だな・・・・・。」

そう言ったジョセの手を美里は景色を見つめながら強く握り締める。

「私・・・・いつも通り生活していいんですよね?」

「あぁ。」

「みんなといつも通り接していいんですよね?」

「あぁ。」

「私・・・・この景色に感動していいんですよね?」

「あぁ。」

「私はプログラムとしてじゃなくて今までどおり私らしく生きていいんですよね!?」

「あぁ。」

最後の質問にジョセは目に涙を溜めていた美里の手を強く握り締めて頷く。

美里は自分で涙を拭いつつ苦笑する。

「“あぁ。”だけですか、隣で女の子が涙目で質問しているのに。

まぁそれが・・・・・・・・・・。」

 

『ジョセらしいな・・・・。』

いきなり背後からの声に美里とジョセは驚き振り返る。

そしてジョセは立っていた男のその姿を見て拳を握り締め走り出す。

「リィィィィィィス!貴様ぁぁぁ!!」

立っていた男・・・・リースの後ろから今度は女性が現れ、言葉を紡ぐ。

『動くな・・・・・。』

女性のその言葉に何故かジョセの体は動かなくなりその場に倒れる。

ジョセにはその女性の事を知っていた。

「サヤ・・・・・何故ここに・・・・・。」

「ジョ、ジョセさん!!」

『眠れ』

倒れたジョセに駆け寄ろうとした美里はサヤの言葉に一気に意識を失い倒れそうになる。

それをタンホイザーが受け止め、肩に担ぎリースの横に戻る。

「ごめんなさいね、ジョセ君。私も意識だけをリースと同じようにこの世界に移動したの。」

「なっ!?」

「私ね、不治の病だったのよ、直す方法があるとしたらこの世界にあるブラックテクノロジーしかないの。ごめんなさい。」

「そういうことだ、俺はサヤの病を治すためなら何でもやってやるさ。」

リースがそう言うと、何かに押さえつけられたように動けないジョセが唸るが、

リースたちはその場を去り始める。

「ま、待て!!」

ジョセが叫ぶとリースだけが立ち止まり倒れて動けないジョセに言った。

「美里だったか?彼女からパスワードを抜くと、彼女はすべてを初期化されるぞ。」

「何っ!?」

「俺は強制的にパスワードを抜くつもりだ。となれば強制終了し初期化が行われる。

もちろん彼女の記憶容量も初期化される。

今までの記憶、お前と会ったことや話した事からこの景色の見える場所まで全てを

忘れてしまうだろうな。しかも再起動できるか分からんな。」

「ふざけるなっ!!そんなことは俺がさせない。」

「フッ、やってみるがいい・・・・期限は三日だ・・・・三日後俺達は行動を起す。

止めてみろ、ジョセ。じゃあな。」

そしてリースが歩き去った後・・・・・ジョセは意識を失ってしまった。

 

 

 

第六話

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