灰色のプラトーン

灰色のプラトーン

 

3.雪原の鍵

 

 

目の前にあるカメラの撮影中ライトが消えると、ジオンの情報将校の軍服を着た男は“ふぅ”と緊張を解いて溜息をつく。

「お見事な演説だったな、ランディ・スー中佐。ギレン・ザビも顔負けだ。」

「お世辞はよしてくれ・・・ヒルマン大尉・・・いや、元大尉の方がいいか。」

扉を開けて撮影用の部屋に入ってきた連邦の軍服を着た男・・・ヒルマンの皮肉を皮肉で返したランディはギロリとヒルマンを睨む。

「あの女パイロットはどうした、ちゃんと殺したのか?」

「いや、逃げた先に連邦のMS小隊がいたんでな、退いたよ・・・・・・。おそらく俺達の小隊を処理しにきた部隊だな。」

ランディは“まぁいい”と持っていた原稿らしきものをクシャっと丸めてゴミ箱に投げ込む。

「パイロット一人がどうこうできる問題じゃあないから問題はないな。それより“あれ”はちゃんと回収したんだろうな?」

「もちろんだ・・・・回収した“あれ”の中に“I’s”とやらがあるんだろ?今、部下に“あれ”の中を探らせているよ。」

「あぁ、“I’s”さえあればお前たちは一生遊んで暮らせる金が手に入るんだ。」

「アンタはどうするんだ?“I’s”とやらを手に入れて何を?」

そう聞かれたランディは不敵な笑みを浮かべた。そして何か話そうとした時だ。

「ありません!!」

その場に飛び込んできた部下の言葉にランディとヒルマンは驚きの表情を浮かべた。

「そんな馬鹿な!?あれは十字架の形にカモフラージュしてある!!もう一度探せ!!」

「いや・・・探す必要はねぇよ・・・・・十字架ならあの女が持っていやがった!

おい、出撃するぞ!!女を取り返す!」

ヒルマンの言葉を聞いて部下は敬礼をして部屋から退室していくと、ヒルマンも困惑する

ランディをほっといて、MSドックへと歩きだした

「ちっ・・・情報は細かに伝えておけよ・・・・ジオンの無能野郎が・・・。」

 

 

ジムのコクピット内でルカは首からぶら下げている十字架を握りながら何かを呟いていた。

My God, My God,why have you forsaken me?

Why are you so・・・・・・・・え〜と続きは何だったかしら?」

why are you so far from saving me, so far from the words of my groaning?、だ。」

思わぬ所からの言葉にルカはその言葉を発した主の方を見る。

「あんた、キリシタンなの?」

「お前には関係ないだろう。黙っていろ、でないと・・・。」

「はいはい、殺すんでしょ。まったく・・・・・・。

まぁ私は友人がキリシタンでそいつが祈ってるのを聞いていただけなんだけどねぇ。

元気かなぁ〜、シュウ。」

ルカは首から下げている十字架を自分の目の前に持ってくる。

「私のザクさ、戦闘中に頭部メインカメラが破壊されちゃってね。その代用としてジムの

頭部を拾ってきたんだ、その頭部の部品に引っかかってたんだよね・・・この十字架。」

「だから何だ?」

「い〜え、キリシタンな連邦パイロットもいるんだなぁ〜と思っただけよ。おっと黙るから殺されるのは勘弁ね。」

そんな会話をしているうちに2機のジムは目標の基地が“あった”場所に着く。

『こりゃ〜徹底的にやったねぇ〜、この辺じゃ使えない小型トラックまで丁寧に破壊してるよ。』

「よし、エルアド曹長はそのままジムキャノンで周辺警戒しろ。俺は降りて調べる。」

「ちょ、ちょっと私はほっとくわけ?お〜い!!」

ルカを無視してテスはジムのコクピットから地面に降り立つ。

「さて・・・まずはアレだな。」

そう言ってテスが入り込んだのは半壊した巨大輸送機の中に入っていく。

テスが食堂らしき広い部屋を覗くとそこには“動かなくなった人間”の山が築かれていた。

「やれやれ・・・。」

くだらないといった感じで溜息をついたテスはユックリと輸送機内の会議室に入っていく。

臨時的に様々な機器が置かれたその会議室はかなり狭く感じるのだが、その機器は全て銃

弾により破壊されていた。

「収穫はなし・・・・か。」

「あぁぁぁぁ!!」

輸送機から出てきたテスの耳にルカの叫び声が聞える。

「ちっ、勝手に動き回るからだ・・。」

テスは懐から銃を取り出し、声の聞えた方へ走る。

MSの格納庫内に入ると、破壊された複数のMSの中の1機を指差して固まっていた。

「私のザク・・・せっかく取り付けたメインカメラが取り外されてるぅ!!ジムの頭部だから取り付けるのに苦労したのに!!」

「・・・・ぅだな・・・・。」

「ん?あんた、なんか言った?」

「いや・・・・なんでもない・・・・ん?」

通信が入ったらしくテスはまだ固まっているルカから少しはなれ、無線機で会話を始める。

しかし、しばらく通信をしているとテスは表情を険しくしてルカの元に走っていき、ルカ

の手を掴んで引きずるようにジムへと歩みを進める。

「ちょっと!!いきなり険しい表情でどうしたのよ!?」

そのままコクピットに入り込むと、テスはコクピット内のスクリーンを起動させる。

そのスクリーンには熱弁を振るうランディ・スー。

「ランディ!?」

「まずいな・・・・。」

「何が?別に演説なんて私達に関係ないんじゃない?」

「違う、演説の中身はギレン・ザビの“それ”と変らないさ。問題はランディ・スーの後ろのスクリーンに映ってる映像だ。」

そう言いつつテスはジムの全ての機能を起動させていく、エルアドのジムキャノンもビームスプレーガンを構える。

ランディの背後に映る映像は連邦のジムが無抵抗なジオン兵をなぎ倒していく映像。

「この映像は連邦はもちろん、ジオンにも流される。ジオンの兵隊たちは連邦に対する風当たりを強くするだろう。

まぁこれも今は関係ない・・・・問題はこの映像を見たジオン軍が現在この基地に接近しているという事だ。」

 

 

 

 

 

ジオン補給基地より十数キロ・・・。

「隊長、後少しで例の補給基地に着きます。」

雪原上で首から十字架をさげたジオン軍パイロットが言うと、隊長と呼ばれた老練なパイロットは声を張り上げる。

「よし、補給基地周辺にまだ連邦のMSが数機確認されている。

同胞の無念を我々が晴らすのだ!!シュウ少尉?」

「了解・・・・全員ザクに乗機!!戦闘準備!!」

十字架を下げたパイロット・・・・シュウが叫ぶと、シュウを含む数人のパイロットが各々の

ザクへ乗り込んでいく。

「ルカ・・・・仇は取ってやるからな・・・・!!」

シュウはザクのシステムを起動させながら呟き、胸の前で十字を切った。

 

 

 

第4話

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