灰色のプラトーン

灰色のプラトーン

 

4.ユダ

 

「ミラー伍長、基地との連絡は?」

『だめです、ミノフスキー濃度が高くて通信できません。ジオンザク編隊依然接近中。』

テスタメントのジムはホバートラックとジムキャノンを従え、全速力で走っていた。

「ねぇ、私が出て行って説得するっていうのは?」

「無理だな、お前は助かっても俺達はなぶり殺しだ。それに俺はお前を信用しているわけではない。」

ルカの言葉にテスタメントは呆れたような顔をする。

「はいはい・・・どうせ私はジオンのおバカなパイロットですよぉ〜」

「自覚しているんだな。」

ルカが鬼のような形相で首を絞めるジェスチャーをするのを無視しテスタメントは

ザク部隊の追跡速度と自部隊の移動速度を頭の中で計算する。

「ちっ!余り時間がないな・・・・、ミラー伍長、ホバーにスモーク・ディスチャージャーは?」

『装備されていますが一時しのぎ位にしか・・・・・。』

「ふん、誰が撤退に使うと言った?」

『?』

 

 

 

『全機、敵MS小隊をもう少しで目視距離に入る。気を引き締めていけ。』

「了解。」

シュウは隊長からの通信に答え、メインモニターに意識を集中する。

雪山を横にした場所を移動する。

すると小さくだが小型の連邦の車両が雪煙を上げ走っているのが見えた。

“仲間の仇!!”

逃走する車両に向けザクマシンガンを撃つが射程ギリギリなこともあり当たらない。

シュウのザクに習い、別のザクもトラックに攻撃を開始する。

すると銃弾の嵐の中、連邦の車両は何かの弾を数発ザクに向け放つ。

飛んできた弾はザクに直撃する直前に爆発し、視界を奪う煙を撒き散らす。

「煙幕!?あの車両は囮か!?」

ザク部隊は煙幕の中で足を止め、ザクのモノアイが忙しく左右に動く。

「どこだ・・・どこから来る・・・?」

『・・・グッ!しまった・・・!』

「隊長!?」

ゆっくりと煙幕が晴れる・・・・すると部隊長の乗る指揮官用ザクがジムのビームサーベルで

コクピットを貫かれていた。

「この連邦のゴミがぁぁぁ!!」

シュウ機は指揮官用ザクにビームサーベルを突き刺しているジムにマシンガンを見舞うが、

ジムは上手くシールドで防ぎ退避し、ザク部隊から一定の距離を取る。

「何?狂ったか?」

ジムは距離を取った直後にコクピットを開き、パイロットらしきヘアバンドを額に巻いた

男がニヤつきながら出てきて挑発するように煙草を吸う。

『くそっ!なめやがって!!』

「待て、ナック!!これは何かある!!」

シュウ機の隣にいたザクがヒートホークを構え、ジムに向け突っ込んでいく・・・。

すると遠くから何かが飛んできてザクに直撃し大破させた。

シュウはすぐさまメインカメラを何かが飛んできた方向に向ける。

するとその先には背中にキャノン砲を背負ったジムが雪に身を隠すようにしていた。

「キャノンタイプ!?全機散開!!砲撃来るぞ!!」

そうシュウが叫び、ザクがそれぞれ退避行動をし始めた瞬間、キャノンタイプのジムはキャノンを連射する。

しかし弾はザクには当たらず全て雪山の斜面に直撃し派手な爆発を見せただけだった。

『へっ・・へへへ・・驚かせやがって・・・何処狙ってやがるんだ!』

「・・・ジムがいない!?」

メインカメラをジムに向けると先ほどまでコクピットを開いていたジムが姿を消していた。

そして凄まじい揺れがザク部隊を襲う。

「揺れ?・・・・しまった!?全機飛べ!!雪崩だ!!」

山頂部分から大量の雪がキャノンの爆発で一気に雪崩となり、一気にザク部隊に襲い掛かったのだった。

 

 

 

「な、なんてことするの・・・・。雪崩なんて・・・・。」

「ふん、別に正面から堂々と戦う必要などないからな。」

ルカの言葉にテスタメントはニヤつきながら言う。

「でも、同胞が死んでいくのを見るのは・・・辛いわ。」

涙目でそう言うルカをしばらく見たテスタメントだが、ジムの動作の再チェックの為にモニターに視線を映す。

「お前、本当にパイロットか?雪崩の先に崖があるならまだしも、ただ凄い勢いの雪に流

されただけなんだ、MS自体が動作不能になったとしても死にはしないさ。

しかもザク部隊の数機はバーニア吹かしてジャンプして難を逃れたしな。・・・・・くっ!」

「きゃあ!!」

テスタメントのジムは砲撃を受けてシールドごと右腕を吹き飛ばされていた。

「くそったれ!ミラー伍長!!どこからだ?」

『六時の方向!MSの移動音です・・・・この音は・・・・・・我が軍のジムです!!数機!!』

バーニアを吹かし、移動しつつメインカメラで確認すると3機のジムがこちらに向かって移動してきていた。

その内一機は長距離支援用のキャノン砲を装備していた。

そして肩には『05』のエンブレム。

「エルアド軍曹のキャノンとの合流は?」

『敵との接触のほうが早いです・・・。』

05小隊と別の方向からさらに銃撃が来る。

雪崩を回避したザクが一機、攻撃を仕掛けてきたのだ。

『沈め!!連邦のMS!!』

そのザクの外部スピーカーから聞えた声にハッとなったルカがジムの外部スピーカーをONにする。

「おい、お前何を!!」

「ちょっと黙って!!シュウ!!聞える?私よ、ルカよ!!」

ルカの声を聞いたザクは動きを止める。

『ルカ・・・ルカ!生きていたのか!?でも何で連邦のMSに!?』

反応を見せたザクを見てテスタメントは密かに何かを思いついたようにニヤリと笑う。

「事情は後!!今は協力して・・・・きゃあ!!」

テスタメントは右手でルカの口を押さえる。

「おい、ザクのパイロット!このジオンの女パイロットを殺されたく無ければコクピットを開け!」

『なに!くそっ!』

ザクはその場に立ち止まりユックリとコクピットを開く。コクピットから現れたのはパイロットスーツを着た、

十字架のペンダントを首にかけた青年が出てくる。

その表情は怒りに満ちており、人質を取られてなければ今にも襲い掛かってきそうであった。

テスタメントはジムをザクの目の前まで移動させ、コクピットを開く。

そして・・・・ジムの手をザクのコクピットに触れさせる。

「え?」

突然腕から解放され背中を押されたルカは疑問の声を上げる。険しい表情をしていたシュウも驚きの表情を浮かべる。

「邪魔だ、そいつとどこかへ行くといい。」

冷静になったシュウはジムの腕に片足を乗せ、ルカに手を伸ばす。

ルカが納得できないようにテスタメントを見ると、テスタメントは銃をルカに向ける。

「行け、行かないならこの場で殺してやる。」

「ルカ、こっちへ来るんだ!」

ルカは少し考え、意を決したようにジムのコクピットに、自分に銃を向けるテスタメントの元に戻ろうとする。

「戻るな、こっちへ来たら殺す!」

再度テスタメントが言った時、ルカは大声を上げる。

「何でよ、いきなり行けってさ!!訳分からないよ!何、柄にも無く私の心配でもしているわけ?ふざけないでよね!!」

「面倒くさい女だな・・・何故助かるというのにわざわざ戻ろうとするのか?俺にはそのほうが不思議に思えてならない。何が気に入らない?」

その時にルカは顔を伏せる・・・その両手は力いっぱい握られており爪が手の平に食い込んでいた。

「自分でも分からないわよ・・・・でも離れたくない・・・・。」

“子供だな・・・駄々をこねた子供だ”

テスタメントはそう思った・・・・そして自分のヘアバンドを外しルカに渡す。

「これをやるから行ってくれ、いい作戦を思いついたがお前が居るとやり辛いんだよ。」

ルカがヘアバンドを受け取るとシュウに導かれザクのコクピット内へと消える。

座席に着いたテスタメントはすぐに通信を繋ぐ。

「ミラー伍長、緊急退避ポイントDへ移動しろ!現在の時刻から5時間以内に俺が合流しない場合はすぐに基地に帰還しろ。

エルアド軍曹に伝えるのも忘れるなよ!!」

『隊長、一体何をするおつもりですか?』

「なぁに、少しデカイ花火を打ち上げるだけだ。ザクのパイロット!!お前も死にたくなければこの場から退避しろ!!」

『言われなくとも・・・・っておいルカ!!』

『死なないで!!もう誰かが死ぬのを見るのはいやなの!!』

「敵軍のパイロットに何を言っているんだ・・・。」

テスタメントの苦笑を含んだその声と共にジムがザクから離れ、接近中の05小隊に向け移動を始める。

移動するジムのコクピット内でテスタメントは忙しく様々な機器を弄る。

「まったく・・・変な女だな・・・・。接触まであと五分・・・・・さぁ大博打の始まりだ。」

 

 

 

ザクのモノアイはジムの小隊に突っ込んでいく片腕のジムを映し出していた。

「何をする気だ・・・あのジム・・・あれじゃあ蜂の巣にされるだけだ・・・。」

シュウが呟く横でルカはテスタメントから貰ったヘアバンドを握り締めていた。

テスタメントの乗るジムが第五小隊の攻撃でどんどんと破壊されていく・・・

しかしテスタメントのジムは動きを止めず真っ直ぐ第五小隊に突っ込んで行き・・・第五小隊と接触した瞬間に・・・・・・凄まじい爆発が起こった。

「自爆?なんて事を・・・・。」

「あ・・・あぁ・・・・・・・そんな・・・。」

ルカはヘアバンドをさらに強く握り締め、煙の上がるジムの爆発地点を映し出すモニタを、呆然と見つめていた・・・・。

 

 

第五話

【お買い物なら楽天市場!】 【話題の商品がなんでも揃う!】 【無料掲示板&ブログ】 【レンタルサーバー】
【AT-LINK 専用サーバ・サービス】 【ディックの30日間無利息キャッシング】 【1日5分の英会話】