GUARDIAN BULLET
【LOAD9 I LOVE Father!!】
「・・・・・・随分大所帯になるわけっすね。」
「いやはや、細目部長にそんな人望があったとは思わなかったわよ。」
目の前にいる15人の同僚を見て静流と瑞次は呆れた。
なんとさっそくの追撃者達だと思っていたガーディアン達は、会社を退社し
近田に会いに来ていた・・いわいる近田派とでも言えるようなグループだった。
その中には東京都庁占拠事件で見かけたガーディアンも含まれていた。
「今のあたし達にはありがたいことだけど・・・・でもまずいわね。」
ミッシェルの言葉に近田は顎に手を当てて頷く。
「ええ、我々は中途半端に強力な戦力になってしまった・・・・。」
「そうだな・・・、前までだったら追撃小隊も3〜4小隊だろうから迎撃も楽だったが
これだけの人数になると敵も大部隊で本腰を入れて潰しにくる。」
黒幽霊が銃を点検しつつ言うと全員が押し黙り、必死に打開策を探る。
そんな重苦しい雰囲気の中静流は意を決したように携帯を取り出す。
「何処にかける?」
「内緒・・・まぁ私達の不利にはならないから大丈夫よ。あぁ、盗聴の心配も要らないわよ。
あっちも情報管理には厳しいから。」
デワンの問いに静流は番号を押しながら言い、携帯電話を耳に当てる。
「あ、・・・・かしら?・・・・・・いる?え〜アポ?静流からの電話って言えば分かるわよ。ええ・・」
その場にいたほぼ全員が電話をする静流を見守っている中、近田は嬉しそうに笑った。
「なるほど・・・そういえば静流さんには巨大なバックがあったのを忘れていましたよ♪」
「六本木なんて向かってどうするの?」
永樹がワゴンを運転しながら静流に聞くが静流は気乗りしない顔で“いけば分かる”と呟く。
「あれが六本木ヒルズっすね!!」
ワゴン車の窓からは巨大なビルが見えてきた。六本木ヒルズ・・・・。
大地震後、半壊したそのビルをある財閥が買い取り、丸ごと社屋としていた。
「そういえばあの六本木ヒルズ・・・うち(蒼威警備保障)に次ぐ警備会社・・・・・
天神警備の本社ビル・・・・・・ってまさか、お前?」
「そうよ、うちと犬猿の仲のあの会社にかくまってもらうの。」
「むりっすよ、そんな!!ライバル会社が匿ってくれる訳が・・・。」
永樹が声をあげると、一人黙っていた近田の口から笑いがこぼれる。
「それが匿ってくれるんですよね?ねぇ?天神警備社長、岬 重祇のご令嬢・・・・岬 静流さん?」
静流は突然ショットガンを取り出し機嫌悪そうに、近田の首に銃口を突きつける。
「うっさいわね、あんな奴を自分の父親と思ったことはないわ。
それにアンタには言ったわよね?父方の苗字で呼ぶなって。」
「これは失礼・・・・失言を撤回させてくださいね。フフフ・・・。」
静流はショットガンを収めたが、車内は静流の普段以上の殺気に全員が黙り込んでしまった。
そんなこんなで静流達を乗せたワゴン数台は六本木ヒルズ、天神警備本社前に到着する。
本社の正面玄関から数十名の天神警備のワッペンをつけた警備員が出てくる。
ガーディアン達がそれぞれの銃器に手をつけるが、静流が制しゆっくりとワゴンから降りる。
すると、警備員達の間から純白のスーツ姿の女性が出てきて、真剣な表情で真っ直ぐ静流へと歩いてくる。
静流の目の前まで歩いてきた女性はしばらく静流の顔を見た後、表情を微笑みへと崩し
静流に抱きついた。
瑞次達は驚きの表情を浮かべるが静流も表情を崩し、抱きついてきた女性の頭を優しく撫でる。
「久しぶりね・・・・元気してた、晶香?」
「はい、お姉様・・・・お久しぶりです。とても会いたかったんですよ♪なのに電話すらくれないんですもの・・・・寂しかったですわ。」
その場にいたガーディアン達(近田を除く)が口が開いた状態で塞がらない。
「お姉様ってまさかあの娘・・・・怪力馬鹿女の・・・・。」
「そうです・・・妹さんの晶香さんです・・・一応天神警備の重役でもあります。」
ミッシェルの呟きに近田は答え“本当に静流の妹か疑っちゃいますけどね”と苦笑する。
静流といろいろ話していた晶香は立ち尽くしている瑞次達に気づくと駆け寄ってきて
丁寧にお辞儀をする。
「いつも姉がお世話になっております、妹の岬 晶香です。
事情は姉から聞いております・・・・お疲れでしょう、軽いお食事を応接間の方に用意しておりますのでどうぞこちらに・・・・・。」
晶香の案内でガーディアン反乱組の面々は本社へと入っていき、応接までつかぬまの休息を取った。
もちろん近田は“だれが私と大違いだって?”と地獄耳の静流にボコられた事もここに追記しておく。
静流は一人応接間を抜け出し、廊下で待っていた晶香を引き連れてエレベーターに乗り込む。
押したボタンは最上階・・・・社長室がある階であった。
最上階に到着したエレベーターから降りて社長室に向かうと、社長室の扉の前には
白いスーツに白コートを着た男が二人警備のために立っていたのだが、静流を見ると
その二人の内、首付近まで伸びた髪の毛を後ろで結んでいた男の方が驚きの表情を浮かべた。
「お、お嬢様!?何時お戻りに?」
「相変わらず落ち着きがないわねぇ〜貢?私の世話役時代からちっとも変ってないじゃない・・・・。」
貢と呼ばれた男は“申し訳ございません”と頭を下げる。
「貢さん、お父様にお姉様が来たことをお伝えしてくださらない?」
「は、はい!!ただいま!!」
貢は慌しく社長室をノックし、中へと入っていく。
そしてしばらくすると社長室から出てきて静流を社長室内へと通す。
かなりの広さのある社長室の奥に社長の高級事務机があり、その机の上に腰掛けた初老の男性が静流の入室を確認するとコーヒーを一啜りし、
机から降りて、両手をズボンのポケットに入れ、静流に向かって立つ。
「随分大所帯で来たみたいだな?静流・・・・・・。」
「うっさいわね、出来れば二度とあんたの顔なんか見たくなかったわクソジジイ・・・・。」
今日最高に重苦しい雰囲気が社長室を支配し始めていた・・・・。