第十話 ニヴルヘイムの支配者

第十話 ニヴルヘイムの支配者

 

 

 

 

 

 

「マスタ―、ニーベルゲンの指輪・・・出力30%にダウン。次の一斉射撃を受けると

ニーベルゲンの指輪が展開不可能になります。」

「ッ・・・・・・。」

フォボス軌道上・・・・・ヴァルキュリアと大型砲撃戦艦ヘルが激戦を繰り広げていた。

『フフフ、打つ手無しってトコロかしら?』

ヴァルキュリアに強制通信が入り、スクリーンに右半身を布で隠した女性が微笑んだ

表情が映し出される。大型砲撃戦艦ヘルのメインシステムだ。

「ヘル。」

『久しぶりねぇ、ヴァルキュリア・・・・・。』

「どうしたんですか、ヘル、その右半身は?」

するとヘルの顔が一変し怒りの顔になる。

『てめぇのせいだろうが、私がこんなになったのは!!』

ヘルが右半身の布をはがすとそこには火傷で皮膚がただれた肌が露になる。

『お前が私を撃沈したからこうなったんだろうが!!お前を見るとこの火傷が

疼くんだよ!』

「ず、随分恨まれてるね、レナスちゃん。」

「正確に言えば逆恨みだけどね。」

苦笑を浮かべながらカジ。クリスも頭を押さえて言った。レナスも口調や表情を変えずに

アッサリと言う。

「ヘル、貴女は勘違いをしていませんか?あれは戦争で貴女と私は敵同士だったはずです。

撃沈した事で恨まれる謂われはありません。」

『アッサリ言ってくれるじゃないの!!ある地点に誘導されているのにも気づかないくせにさっ!!!』

「・・・・・・!?」

レナスの眉が一瞬ピクッと動く。

「ヘルからフォボス地表バルハラへの射線上に誘導されています。

このままだとヘルの砲撃を回避すればバルハラに直撃してしまいます。

避けなければ・・・・・。」

「こっちがニーベルゲンの指輪の出力切れと共に落とされるってわけだ。」

『ハハハハハ、さっさと決めておくんだね♪』

一方的にヘルが通信を切るとヨウが頭を押さえる。するとバルハラのオーディンから

通信が入る。

『諸君、こちらは大丈夫だ、回避してくれて構わんよ。』

「何か対策でもあるんですか?」

『・・・・・・まぁ・・・・・な。』

その時レナスが口を開く。

「警報、ヘル、巨大重力砲に高エネルギー反応・・・・砲撃が来るものと予想されます。」

「本当に避けていいんですね、オーディン!!」

ヨウの問いにオーディンは深く頷く。

「よし、緊急スラスターも使って回避するぞ、何かに掴まれ!!!!!!」

そしてヴァルキュリアの側面にある緊急用の複数のスラスターが火を噴き、普通よりも早

いスピードで平行に移動するとその横をヘルの巨大重力砲が通り過ぎていき・・・・・・・

フォボス地表で破壊を撒き散らした。

「なっ!?レナス、オーディンに通信を!!」

「はい、マスター」

『ザザッ・・・・・なに・・・して・・・い・・・・・』

「通信が聞こえない、レナス、通信レベルを最大にしてくれ。」

『何をしているヴァルキュリア!!!避けるはずも無いとたかをくくっていたヘルは

今隙だらけだ、早く決着を!!』

「しかし!!」

『早くしろ、バルハラはすでに自爆シークエンスに入っているんだ!!いくらやられ様が

構わない!!!!』

「!?」

『この状況はすでに予想された事だ、すでにこちらにある全てのデータはそちらのメイン

システムに転送してある。君達は生きるべきだ、そして決して二度目のラグナロクを起し

てはいけない・・・・・・。』

「オーディン・・・・・・・・。」

『『ふざけんじゃないわよ!!』』

割り込んできたのはミズキ、珍しく感情を乱している・・・つまりは怒っている。

『『どうしてあんたはそう勝手に決めるのよ、オーディン!!』』

『すまないな、ミズキ。今までこの気まぐれに付き合ってくれたこと、感謝する。』

まだ何か言おとするミズキの肩をトールが掴む。ミズキが振り返るとバルドルが残念そう

に首を横に振った。

ヨウとミズキが悲しい顔をするとオーディンは微笑み

『そんな顔をするな・・・・・君たちならやれると信じているよ。任せたぞ。

君たちの行き先に幸あれ・・・・・・・。』

そう言った瞬間、バルハラを中心に巨大な爆発が起こり、同時にオーディンとの通信が切

れノイズのはしっているスクリーンからザザッという雑音とクリスのすすり泣きがヴァル

キュリアの操縦室に響いていた。

「・・・・・・レナス・・・・・・。」

「はい、マスター」

ヨウはうつむいた頭を上げ命令する。

「可変モード・・・・・同時にバークヌーバーエネルギーチャージ・・・・・・。

カジ、今使える武装を全部起動・・・・・やれるな?」

「あぁ、やってやるさ・・・・・・やってやる。」

「クリス、ナル大佐に通信。巻き込まれないために基地を襲った艦隊を始末してもこの宙

域に来ないように。」

「わかった・・・わ・・・・・。」

ヴァルキュリアが可変を開始し人型になる。

「ブースター、フルバースト・・・・・・。」

ヴァルキュリアの背中部分にあるメインブースターに火がともり、ヴァルキュリアが一気

に加速する。それに反応し、ヘルは巨大重力砲他、武装を全てヴァルキュリアに向け発射する。

ニーベルゲンの指輪起動・・・・・・・。」

ヨウの指示でヘルの一斉射撃をニーベルゲンの指輪が弾く。

「マスター、ニーベルゲンの指輪起動不可能になりました。」

「わかっている・・・・・カジ、うるさい観客(ヘルの武装)を黙らせろ。」

「あぁ。」

カジの手がキーボードを鮮やかに走り回り、撃つという指示をヴァルキュリアの

各武装に伝える。するとバークヌーバー以外の武装が全て起動し、発射する。

そして発射された破壊エネルギーや砲弾はヘルの武装を次々と破壊する。

「ヘル、巨大重力砲がこちらをロック。直撃コースです。」

そしてヘルから重力砲が発射されるとヴェルキュリアは緊急スラスターを使い

回避を行うが左腕部と左脚部を抉り取られる。

「左腕部、左脚部損失、損害部分の隔壁閉鎖。損失した部分の武装は使用不可能。」

レナスの報告が聞こえているのか聞こえていないのかヨウは反応もせずに操縦していた。

「バークヌーバーのチャージ状況は?」

「現在75%。発射可能です。」

ついにカジの射撃技術でヘルの重力砲も沈黙する。するとヘルはブーストを吹かせ、

戦域を離脱しようとする。

「逃がさない・・・・・・・。」

ヘルに接近したヴァルキュリアはバークヌーバーを一気にヘルに突き刺す。

「バークヌーバー発射!!!!!!!」

「了解です、マスター。バークヌーバー発射します。」

バークヌーバーがヘルに突き刺さった状態で発射されヘルの船体は真っ二つになり消え去

った。ヘルの断末魔が聞こえたような気がした・・・・・。

「ヘル、撃沈、消滅を確認。」

「バルハラは?」

「・・・・・外部カメラで確認。完全に消滅しています。」

「クソッたれ!!」

カジはキーボードに手を叩きつけて叫ぶ。クリスは顔を両手で覆い泣いている。

ヨウは悔しそうに歯をかみ締めた後、レナスに帰還の指示を出す。

「火星基地に戻って修理だ。ソーバルにもそう伝えてくれ。」

「了解しました、マスター。」

一通り作業が終わり火星基地に向かうためにヴァルキュリアはユックリとフォボスから離

れる。外部カメラに映し出されるバルハラ跡のクレーターを見ていたレナス。

「さようなら、オーディン・・・・・・私もしばらくしたら・・・・・・。」

そう呟いたレナスの瞳から一滴の涙が流れた事に気づいた人はいなかった。

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・困りましたね・・・・。」

ヴァルキュリアからの状況の報告通信を聞いたナルは通信を切った後、ため息をつき

第十三艦隊所属旗艦【白燈】の艦長席に深く座り込む。

「よい中継基地(バルハラ)がなくなってしまいましたからね。」

オペレーターが振り返り言うとナルはやれやれといった感じで首を横に振る。

「違うんですか?」

「確かに私達宇宙軍にとっては、貴方の言ったとおりです。しかし問題はヴァルキュリア

の船員達の事のですよ。」

「よく理解できないのですが。」

「そうですね・・・・・、彼ら(ヨウ達)にとってバルハラは頼みの綱だったんですよ。

異文明の戦艦に乗り、異文明の戦艦と戦う。見たこともない、原理も分からない武器を使

い、そんな武器で逆に攻撃される。その不安を考えると疑問に答えてくれていたオーディ

ンさんが居たからこそ異文明の戦艦、武装を信用できたわけです。なによりヴァルキュリ

アに乗る彼らを一番暖かく見守っていたのはオーディンさんでしょう。」

「・・・・・・・寄りかかれる唯一の物を失ってしまったんですね、彼らは。」

ナルはヴァルキュリアが見えてくるだろう方向を見つめながら呟いた。

「このどん底から彼らは復帰できるでしょうか・・・・・、いえ信じるしかない・・ですね。」

 

 

第十一話

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