第十二話 嵐の前の静けさ

第十二話 嵐の前の静けさ

 

 

 

 

ハートネットはヴァルキュリア乗員他最近連戦に疲れていた兵士たちに太陽付近での戦い

に備え3日の休暇を与えていた。

「はぁ〜〜。」

地球…日本………成田空港、ヨウは戦いの前の短い休暇を母国で過ごそうと日本に帰っていた。

ヨウはため息をつきながら後ろに視線を移す。そこにはレナス、クリスやカジ、ナルまで

来ていたのだった。レナスは行くところがないのでヨウが連れてきたのだが・・・。

「なんでお前らまで日本に来ているんだよ……」

「いやぁ〜半分家で状態で家を出て軍に入ったからいまさら帰れないしよぉ〜、行くとこないし・・・・・。」

「同じく行くところがないのよね〜、ね?大佐。」

「ええ。」

ラフな格好で歩くカジが言うと清楚なスカートとTシャツを着たクリスとジーパンに半そでシャツを着たナルが頷いた。

「もう勝手にしてくれ。ただし俺は実家に帰るだけだからな。大佐やお前らの面倒までは

見られないからないからな。レナス、行こう。」

「はい、マスター。」

そして歩き去っていくヨウを見送った三人は“さてと…”と呟きそれぞれバラバラに歩き始めた。

 

 

 

「懐かしいなぁ〜〜。」

ヨウは自分の故郷の久々の風景に声を上げ、清楚な袖なしワンピースに地球人ではありえ

ない銀髪を麦藁帽子で隠し、夏なのに汗ひとつ掻いていないレナスを振り返る。

「これが地球だ。やっぱレナス達が来たときとは全然違うんだろうな。」

「はい、地球人の文明もここまで進化してませんでしたから。」

静かに答えるレナスの右手をヨウは掴み、自分の実家に向けて一気に走り出した。

レナスの気持ちはわからなかったがヨウは手を握り走り出すことで休暇後の決戦への緊張

を忘れ去ろうとしていた。

 

 

そのころ・・・ナルは都心の慌しくも賑やかな街並みを歩いていた。

「あれ、ナル大佐。何やってんの?」

ナルが振り返るとそこにはカジが立っていた。

「カジさんこそどうしたんですか?いつもご一緒のはずのクリスさんもいませんが?」

カジは苦笑し両手をすくめる

「クリスは恩師が火星から日本の大学に避難がてら赴任していたとかで会いに行そのまま

帰りに一人でビジネスホテルにでも泊まるってよ。んで、俺も祖父の家が日本にあるから

来たわけだけどそのまま行っても、ほら、田舎だからさじいちゃんの家。都会を楽しんでおこうと思って。」

「私も同じようなものですね。やることがないので歩き回っているだけです。

アインも知り合いに預けているので久々にひさびさに一人っきりになれますしね。」

カジはその言葉を聞いて何か思い出したようにニカッと笑い言う。

「んじゃ俺と遊びに行かないっすか?これから服のブランド店やらなんやら行くつもりなんっすけどねぇ〜。」

「フフフ、良いですよ。行きましょう。」

そして二人はブランド店に入り、カジが安物を着るナルにさまざまな洋服を着させたり

逆に自分の着る服を選んでもらったりしていた。

そしてナルはカジの“今日はその服ですごせば?”と言われカジのアドバイスで買った白

のスパンツに白いシャツ&ブラウスを試着室で着て、パンプスを履いた。

その後場所を遊園地に移動し遊びまわり、カジはジェットコースターやお化け屋敷が苦手なことが判明したりした。

やがて陽が沈みあたりが暗くなると二人は遊園地を出て適当なファーストフード店に入る。

「いやぁ〜すいませんね、ナル大佐。俺ばっか楽しんじゃって。」

「いいんですよ、私街に出てこうやってショッピングや遊んだりするの初めてなので助か

りましたしとても面白かったです。」

ナルの言葉にカジは首をひねる。

「いや、初めてって軍に入る前とか、軍に入ってからの休暇とかどうしてたんっすか?」

「別に隠すことじゃないので言っちゃいますけどね。

私は優秀な人間を作るプロジェクトで遺伝子操作されて生まれた・・・・

研究者から言えば“サンプル”だったんで、子供時代はずっとスイスの研究所の中暮らしだったんですよ。

唯一の友達がアインでした。軍に入ってからもいきなり戦艦一つ任されちゃったものです

から…その後もどんどん昇進して艦隊指揮官までいっちゃって休暇なんてほとんどなかったものですからね。」

「あ、すいません。つらい時期のこと聞いちゃったっすね。」

「いいんですよ、それと今はプライベートなのですからヨウさんやクリスさんと話すときみたいで良いですよ。」

「あ、そう?んじゃお言葉に甘えて。にしても今回のフレイとのファーストコンタクトも

第十三艦隊にやらせるって・・・・十三艦隊を前線に出しすぎだと思うんだけどそこんとこどうよ?」

するとナルは苦笑する。

「それは当然でしょう。ヴァルキュリアやソーバルという強力な戦艦が所属しているので

すから自然に多用したくなるでしょう。」

「あちゃ〜、俺たちの所為か・・・・。」

「まぁそういうことになりますかね。でもね・・・あなた達は宇宙艦隊全体の希望なんで

すよ。あなた達がいればこの戦いは勝てる・・・そう思ってみんな勇気付けられているんです。

だからあなた達の所為とか言わないでください。命にかけても我々第十三艦隊が

あなた達を守ります。」

ナルがそう言うとカジは先ほどまでのニヤけた顔をしまい、真剣な顔になる。

「命を懸けてなんてやめてくれよ、大佐。俺たちはみんな生きて帰らなきゃ嬉しくても素

直に喜べないんだからさ。っつうかナル大佐には生きててもらわないと悲しいしさ。」

その言葉とカジの真剣な顔にナルはなぜか顔が熱く、鼓動が早くなるのを感じていた。

カジとしては単純に友人を心配した、というだけなのだが・・・・(笑

 

 

 

ヨウが実家にレナスをつれて帰ると両親に予想通り“彼女か?”と茶化された。

レナスが麦藁帽子を脱ぎ銀髪をあらわにするとヨウの両親は”その髪色が都会のハヤリなの?“

と聞いてきたためヨウは心の中で”田舎万歳“と叫んだ。

ヨウは姉であるミズキが生きていることを伝えたかったのだが

ミズキ自身が戦いが終わった後に自分で言うと言って口止めされたので言わなかった。

そんなこんなで今までのことなどを差し支えない程度にヨウが両親に話していると

外が騒がしくなっていた。ヨウは今日が近くの公園で祭りが毎年行われている事を思い出

しレナスを連れて祭りへと赴く。

「これが祭りだよ、はい綿飴。」

ヨウが綿飴を渡すとレナスはしばらく不思議そうに綿飴を見つめていたが、ヨウが食

べ始めるとそれに習いレナスも食べ始めた。

「おいしいかい?」

「とても甘いです。」

ヨウは綿あめを舐め、レナスと並んで縁日を歩く。その後金魚すくいで金魚を取ってやる

とレナスは歩きながらもじ〜とヨウが取った金魚が透明なビニールの中で泳ぎまわるのを

見ていた。

そんな姿を微笑みながら見ているとヨウの視線に射的の店が入ってきた。

「射的でもやるか。レナス、来なよ♪」

「はい・・・・。」

そして店主に金を払い射的用の銃を借りると人形に向けて撃つが当たらない。

「くそっ、レナスもやってみたらどうだ?」

そう言ってレナスに銃を渡すとレナスはどんどんと景品を撃ち落として行き

最後には店主が泣きついてきて銀のネックレス(安物だろう)をもらう代わりに

射的を止めることで解決したのだった。

「レナスってやっぱすごいな・・・・・。」

「そうですか?」

レナスの首に銀のネックレスをかけてやり、そんな会話をしながら公園の近くにある丘に

上る。

「そろそろだな。」

丘の一番高い場所まで来てヨウがそう呟きながら星空を見上げたと同時に、轟音とともに花火が撃ちあがり、空に炎の花を咲かせる。

「花火っていうんだ。綺麗だろ?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

ヨウの言葉も聞こえないくらい一身にレナスはじっと花火を見ていた。

そして花火が終わり、実家への帰り道・・・・レナスは不意に口を開いた。

「また・・・・花火というもの・・・見れますか?」

「え?」

「自分自身よくわからないのですが・・・・花火を見ていたら何かにひきつけられたよう

な・・・・・だからもう一度見てみたい・・・。」

その言葉にヨウはフッと笑いレナスのまっすぐ見つめてくる目を見ながら頭を撫でる。

「わかった、来年も来ような♪」

 

 

 

クリスは某ホテルの1階にある高級レストランで一人の老人と話していた。

「お久しぶりです、アソウ先生。」

「ああ、本当に久しぶりだね、クリス君。」

アソウ教授は機械工学・・・とくに戦艦などの兵器などに関して権威と呼ばれていた。

しばしの雑談の後・・・・。

「そういえばクリス君は軍に入って今は何をしているのかね?」

「・・・・・アソウ先生なら話しても良いかな・・。」

そしてクリスはヴァルキュリアの事やヴァルハラの事等を話すとアソウは“ふむ”と

頷く。

「そうか、それは興味深い話だ。ぜひ直接そのヴァルキュリアを見てみたいものだね。」

そしてアソウはワインを一飲みし、一息あけてから口を開く。

「それじゃあ私もうわさ程度だが聞いた話を君に教えておこう・・・・・。」

そしてアソウはゆっくりと“ある重要な情報”をクリスに話し始めた。

 

フレイとのコンタクト、太陽付近での戦いがもうすぐ始まる。

 

 

第十三話

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