PHASE-03 『迷いの時』

PHASE-03 『迷いの時』

 

 

 

 

「ん・・・・?」

爽やかで心地よい風と子供のはしゃぐ笑い声でミルズは目を覚ます。

「ここは・・・・・・ッ!!」

上半身を起すと体に凄まじい痛みが走る、それをこらえ、周りを観察すると一見普通の部

屋・・・・。窓が開いており海が見え子供の声もそこから入ってきたようだった。

「ここはいったい・・・・?」

「オーブのとある場所、と言っておきましょうか・・・・・・。貴方は海に落ちたMSから助け出されたんですよ。」

その声に目を向けるとドアの前に落ち着いた雰囲気の、おそらくは盲目だろう男性が立っている。

「助け出された・・・・・・・・・そうだっ!!ユニウスセブンは!?」

「・・・・・・・破砕は失敗、ばらばらになったユニウスセブンの破片が世界中に降り注ぎ多大な

被害が出ています、しかも酷い所では住民によるコーディネーター排泄運動まで起きています。」

「そうですか・・・・・・・・っ!」

ミルズが痛む腕を押さえると男性が近寄ってきてユックリとミルズを元のベットに寝かせる。

そして閉じられているのに全てを見通している雰囲気でミルズを向く。

「貴方の乗っていたMSは森に隠しておきました・・・・。」

「すいません・・・・・え〜と・・・・。」

「マルキオです。今はゆっくり寝ていてください。夕食は誰かに持ってこさせますので。」

そう言ってマルキオが出て行くと様々な思いを巡らしながら窓の外を見る。

外では子供達と一緒に遊んでいるピンクの長髪の女性・・・・・・。

「ん、あの女性(ひと)見たことあるような・・・・・・・ん?」

そして子供たちとは少し離れた場所では一人の青年が何を考えているのか、ずっと海を見続けていた。

数日後にはミルズは動けるようになり、その青年や女性、そして子供達と食事をしていた

が名前は聞かなかった。ミルズはこの平和な場所に深く入り込んで壊してしまってはま

ずいと思っていたからだった。そしてしばらくしてマルキオからクロニクルの

隠してある場所に案内してもらった。

「ここです・・・・・。」

そこはうっそうとした林の中、クロニクルは木の葉などがかぶせられカモフラージュされ

ていた。よく見ると装甲は焼け、右側等から海に落ちたのだろう右半身の様々な場所が破損していた。

「ん〜、とりあえず最低限直してどっか近くにいるザフト軍戦艦か基地に拾ってもらうしかないな。」

「そういえばミネルバがモルゲンレーテの軍港で修理を行っていたはずです。少しならば

部品なども提供できるので提供しましょう。」

「何から何まですいません・・・。」

「いえ、困ったときはお互いさまですから。」

数日後・・・・・・地球連合は、「ユニウスセブン落下事件」をザフトの仕業と決め付け、プラン

トを敵性国家と見なす共同声明を発表。ミルズは驚いたが、ザフト軍が何とか連合の攻撃

を凌いだということにホッと胸をなで下ろした。しかしそれだけで終息した訳ではなかっ

た。プラント側の降下作戦に呼応し、オーブが事実上連合との同盟を締結。ミネルバは逃

げるようにオーブ領を離れてしまった。

その後風の便りでミネルバがカーペンタリアに向かったと聞き、ミルズは急いで修理を

続けた。その夜・・・・・・・・。

コクピットで最後の調整を行っていたミルズが額の汗を拭い口を開く

「ふぅ・・・・・これで明日にはカーペンタリアに向けて出発できるな。ん?」

いきなり近づいてくる複数の足音に、ミルズはクロニクルに葉をかけ直し草陰に隠れる。

すると十数人の銃を持った男達が走っていく。

「あれは・・・・コーディネーターの特殊部隊・・・・・・・、で向かっていった先は・・・?」

しばらくすると遠くから銃声・・・・・。スコープで確認するとそこはミルズをかくまってくれ

ていた家だった。スコープをしまい、走り出そうとするがミルズはその場で立ち止まり

振り返ってクロニクルを見つめる。

「・・・・・特殊部隊がいるって事はもしかしたら・・・・・・よし。」

ミルズはクロニクルに乗り込み、起動させる。

「システム良し、ブースターは出力70%・・・・仕方ない。武装は・・・・チッ、ビームソード

が無い・・・・・使えるのは頭部ガトリング砲と掌底の衝撃波発生装置か。味方を攻撃するのも

なんか気が引けるが民間人を攻撃するのはゆるせないな。」

そしてブースターを吹かせて一気に飛び出す・・・・・・するといつの間にか家の前に複数の

特殊部隊専用MSアッシュがおり、何かのシェルターに攻撃を仕掛けていた。

「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

クロニクルは奇襲をかけ、一機のアッシュの頭部をメインカメラごと衝撃波発生装置で

破壊する。

するとその場にいたアッシュの半分の数がクロニクルに襲い掛かり、残りがシェルターへ

の攻撃を続けた。

「クソッ、こっちは本調子じゃないのに・・・・・このっ!!」

アッシュの放ったミサイルを頭部ガトリング砲で叩き落し、煙を利用して二機を

衝撃波発生装置で葬り去る。しかしついにシェルターが攻撃で破壊されてしまった。

「しまった!!!・・・・・・・・・・っ!?」

その時だ、何処からかの砲撃で複数のアッシュが撃墜され、砲撃が来た方向を見るとそこ

には青と白を基調としたガンダムの姿。ミルズにも見覚えのある・・・・・

「フリーダム?」

フリーダムは一気に接近して残ったアッシュを瞬く間に一掃してしまった。

『ありがとう・・・・・助かったよ。』

フリーダムからの通信にミルズは驚く、なぜならその声は、ミルズがベットから見た外で

海をずっと眺めていた青年の声だったのだ。

「まさか・・・・・貴方がキラ・ヤマト・・・・・。」

『うん、ごめん、だまってて。』

「謝らないでください・・・・でも何で特殊部隊が・・・・・フリーダム奪取のため?」

『おそらく違う・・・・・たぶん狙いはラクスの・・・・・暗殺だろうね。』

その言葉にミルズはピンクの髪の女性を思い出し声を上げる。

「そうだ!!彼女は前の大戦の時に行方不明になったラクス・クライン・・・・・、

でもじゃあプラントの放送で出ていたあのラクスさんは・・・・・・。」

『偽者・・・・・たぶん本物のラクスに出てきてもらっちゃ困る理由があるんだろうね、プラント議長には・・・・・・・。』

「・・・・・分けがわかんないですよ!!なんなんですか、ガンダムは奪取されるし、

議長は本物のラクスさんを暗殺しようとするし・・・・・わけ分かりません!!」

『君はザフト軍に戻るべきだと僕は思う。自分の目で確かめるんだ、

これから始まるかもしれない大きな戦い・・・そしてその意味を・・・・・。』

「自分の目で・・・・・・。」

『そう、自分の目で・・・・早く行くんだ。僕たちもここにはいられなくなったからね、他の所に行かなくちゃ・・・・・さぁ。』

「・・・・・・すいません!!」

そしてミルズはクロニクルのブースターを全開にし、進路をカーペンタリアにとった。

 

 

 

 

 

 

「見えてきた・・・・・ん?」

カーペンタリアに向かうクロニクルの横にザフト空中戦用MSバビ数機が取り囲む。

『所属不明機に告ぐ、これよりはザフト軍カーペンタリア領内である。直ちに引き返さな

い場合はそちらを攻撃する。』

「こちらザフト軍クルーガー隊所属ミルズ・ハワード。ユニウスセブン破砕作業中誤って

大気圏に突入してしまったクロニクルのパイロットです、至急確認願います。」

『了解・・・・・しばらく待ってくれ。』

数分後・・・・・

『確認が取れました、歓迎します。誘導しますのでついて来て下さい。』

「了解・・・・。」

基地に到着し着地すると一斉に整備士達が集まってくる。整備士の一人が装甲を見ながら呟く。

「こりゃ〜ボロボロだな。フレームもガタガタだ。」

「すいません、ここまで飛ぶための補修くらいしか出来なかったので。修理お願いできますか?」

「時間はかかるけど直せるだろう、任せてくれ。」

整備士が親指を立てて言うと、兵が一人ミルズに走ってくる。

「司令がお呼びです、落下してからの経過を知りたいとの事で。」

「了解しました、すぐに行きます。」

そして司令室に行くと基地司令が座っておりその横で黒の髪を肩より少し長めに伸ばして

いる男性が立っている。

「ミルズ・ハワード、出頭命令により参上しました。」

そして大気圏に突入した事から話し始める。キラやラクスのことは一応伏せて。

「なるほどな、よろしい。さて君の今後だか辞令が降りた。」

「え?」

「特殊MS部隊に転属だ、君には戦地を回ってもらう事になる。彼が新しい上司だ。」

司令が目で横に立つ男性を指す、男性はミルズに手を差し出す。

「ノイン・クラウドだ。」

「ちょ、ちょっと待ってください。いきなり辞令って。」

「現在連合との戦いは地上だ、戦力を地上に集中しなくてはいけないのだ。」

「ま、そういうことだ、よろしくな。」

「は、はぁ・・・・・・。」

「とりあえず仲間を紹介するからついて来てくれ、それじゃあ司令、失礼します。」

そしてノインに連れられ司令室を後にし、通路を歩いているとある部屋の前でミルズは

見慣れた女性を見つけた。

「ん、キッカか?」

「先輩・・・・先輩ですか!!」

驚いた様子でキッカが走ってくる。

「そういえばミルズはキッカと同じ隊元所属だったね。彼女にも長距離特化試験MSケル

ベロスのテストパイロットとして宇宙から降りてきてもらったんだ。同じ所属の仲間が転

属先でも同じだと安心するだろ。

どうやらミルズの転属はノインのキッカに対する計らいでもあったようだ。

キッカはミルズの前まで来ると涙くんだ目でミルズを見つめる。

「先輩が単機で大気圏に突入したって聞いて心配だったんですよ、しかも数週間も連絡無いですし!!」

「悪い。まぁ、また会えたんだからそう泣くなよ。」

キッカの涙を拭ってやるとキッカも泣き止み、ノインが“さてと”と割り込む。

「んじゃ、この部屋に同僚になる仲間がいるから入ってくれ。」

そして部屋に入るとそこには二人の男女が座っていた。女性のほうは黒の長髪にきっちり

と軍服を着ている。男性の方は赤い短髪にだらしなく軍服を着ていた。

「紹介しよう、彼女がエリシア・シモンズ、近接特化格闘MS“ブレード”のテストパイロットだ。」

「同じ近接特化機に乗る者同士宜しくね♪」

「よ、よろしく。」

「んでそっちの赤髪の奴がルドルフ・ハイマン、高機動偵察MS“エア”のテストパイロット。」

「おっす、まぁ気楽に行こうや。」

エリシアは面倒見のいい姉のようなタイプに対しルドルフは服装と同じくあまり真面目ではなさそうだ。

「で、改めて俺が新型AI搭載MS“ヴァルキリー”のテストパイロットでこの部隊の隊

長、ノイン・クラウドだ、宜しくな。ミルズ、この部隊のルールを知っているか?」

「ルール?」

「一つ、試作MSを使うのだから戦闘データは必ず持ち帰ること、無理ならば必ず破壊すること♪」

エリシアが言うと続いてルドルフが両手を伸ばして口を開く。

「ふたぁ〜つ・・・堅苦しい事は無ぁ〜し。敬語なんか使わなくてO〜K〜。」

最後にノインが笑いながら指を三本立て

「三つ、そんな戦地でも必ず生きて帰ること。死んだらそこでお終いだからな♪」

「は、はぁ・・・・・・。」

「先輩、改めて宜しくお願いしますね。」

軍隊らしからぬ雰囲気に、状況を把握し切れていないミルズは脱力状態だった。

その時、基地に警報が鳴り出し、連合の艦隊が接近してきたという放送が流れた・・・・・・。

そしてその中連合の艦隊の中にはミルズが追っていたあのMSがいたのだった。

 

PHASE-04

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