PHASE-05「目覚める時」

PHASE-05「目覚める時」

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・ふぅ・・・・。」

カーペンタリア基地兵宿舎・・・・・外はまだ暗くまだ夜中である事が分かる。スクランブル要

員かこの時間の警備の者以外は普通寝ている時間なのだが、ミルズは寝れずにいた。

ゆっくりとベットから起き上がり服を着る。

「寝れない・・・・・・少し歩くか・・・・・・。」

廊下に出て歩き始める、宿舎を出て警備している兵士達と簡単に雑談し、そして足はクロニ

クルなどMSがあるドックに向かう。そしてクロニクルに触れながらミルズは呟く。

「戦いの意味・・・・・か・・・。」

「こんな夜分にどうしましたか?ミルズさん。」

「うわぁぁ!!」

静まり返ったドックでいきなり話しかけられ驚いて後ろを振り向くと、そこにはマリアの姿が。

「フフッ、そこまで驚かなくても。」

「アハハハ、すいません。」

ミルズが手すりに座り一息つく。

「ふぅ・・・・・・。」

「眠れませんか?」

いつの間にかマリアが湯気の立つ紙コップを持ってくる。

「ノンカフェインのコーヒーです。ドック内の休憩所にあるものを持って来ました。」

「すいません、頂きます。」

「それにしても珍しいですね、整備兵さん達ならともかくパイロットのミルズさんが

眠れないからといってドックに足を運ぶなんて。」

「いえ、ある人に言われた言葉を思い出すと何故かクロニクルを見たくなるんです。」

「ある人の言葉・・・・・・・ですか?」

ミルズはコーヒーを一口飲み、頷く

「ええ、“自分の目でこの戦争を見て、その意味を考えろ”って言われたんです。」

「戦争の意味・・・・・・・ですか。それは難しいですね・・・・・・ん?どうしました、私なんかじっと見つめて。」

本当に難しい顔をするマリアを真っ直ぐ見ていたミルズに気づきマリアが苦笑を浮かべて

言うとミルズは慌てて目線を逸らす

「え、っとそのマリアさんって本当に・・・・・・。」

「AIですよ、心臓の鼓動は聞こえませんし脈もありません。人が数人でやっと持ち上が

る物も片手で持ち上げられます。見ての通り背中にはヴァルキリーからのケーブルが

接続されていてその範囲でしか動けません。人型の機械ですよ。」

少々悲しい笑みを浮かべるマリアを見て慌ててミルズは謝る。

「す、すいません!!」

「いいんですよ。気にしてませんし・・・・・・、ノインの役に立てれば私はそれだけで幸せですから。」

「あの、ノインさんの恋人さんってどんな人だったんですか?」

マリアは“ん〜”と考え、自分の顔を自分で指差し言った。

「こんな感じです。」

「へ、えぇっ!?」

「私の外観・・・・ノインの恋人の容姿をノインがフィールドバックしたものですから。

名前も恋人の名前を頂きました。」

そしてしばらくマリアと雑談し、コーヒーを飲み終えるころにはすでにドックに来てから

一時間がたっていた。ミルズはコーヒーの入っていた紙コップを可燃用のごみ箱に投げ入れる。

「それじゃあ、そろそろ寝ますね。コーヒーご馳走様です。」

「いえ、明日、任務があるはずですからユックリ寝てくださいね。」

そしてミルズはドックの出入り口で立ち止まり、マリアを振り返る。

「さっき、マリアさんは自分を機械だって言ったけど・・・・・・・マリアさんは俺たちと変わん

ないですよ、貴女も人間です。」

そう言ってドックを出て行ったミルズを見送りながらマリアは苦笑を浮かべ呟いた。

「そう言われるのはノインに続いて二人目です・・・・・。」

マリアはまたゆっくりとヴァルキリーに歩いていった。

 

 

 

「あんた、なんでいるんだ?」

朝一番に輸送機に機体と共に乗り込み、マハムール基地に着いたミルズが

輸送機から機体をドックまで操縦し一段落したところで、聞いたことがある声に振り向く。

そこにはユニウスセブン破砕作業時に会った人物、シン・アスカだった。

「特殊MS部隊に転属になったんですよ。貴方がいるということはミネルバもこの基地に?」

「あぁ、まぁね。あとさ、同じ年に敬語使われるのはちょっと恥ずかしいからさ

タメいいよ。」

「それなら遠慮なく・・・・。」

そしてシンと話しはじめてすぐ、シンと同じ赤い軍服を着た金髪の男がシンに話しかける。

「おい、シン。アスランが呼んでるぞ。」

「またアイツか・・・・。」

ミルズはその名前に驚きの声を上げる。

「アスラン!?アスラン・ザラか?」

「そうだよ、ユニウスセブン破砕作業時に撤退命令出てんのに作業進めてたザク。

あれを操縦してたのが奴さ。」

「あのザク・・・・・・そうだったのか。」

「アイツにウダウダ言われんのヤダから俺は行くぜ。」

「わかった、またな。」

そしてシンは金髪の男とドックから去っていく。

「ここにいましたか、先輩!!」

入れ替わるようにキッカがミルズの元に走ってくる。

「先輩、ノイン隊長がお呼びです、ミーティングだそうで。」

「了解、すぐ行く。」

 

そしてミーティングルームに入るとノインが説明を始める。

「今回の任務はガルナハンのローエングリンゲートの戦力調査、威力偵察だ。ミネルバを

含む攻略部隊のより正確な作戦成功のための偵察を目的とする。範囲は陽電子砲台の射程距離外ギリギリまでた。」

「陽電子砲台の位置や射程距離はこの資料で正しいんですか?」

キッカが手持ちの資料を見ながら言うとノインはため息をつく

「信じるしかないだろう・・・・・作戦開始だ、各員搭乗開始。無理はせず危険だと思ったら

すぐに撤退する事。いいな?」

『了解!!』

そして全員がブリーティングルームを出てドックへ向かう。

クロニクルに乗り込もうとする時、ヴァルキリーのコクピットの前でノインを待つ

マリアと目線が合うと、マリアは何かを言う。口の動きから判断すると

“気をつけて”

ありがとうと返すとマリアは微笑み、走ってきたノインに向き直った。

ミルズもコクピットに乗り込みシステムを起動させるとすぐにノインから通信が入る。

『クルーガー隊から特殊ビームライフルが届いているぞ、使うといい。』

「了解。」

そしてビームライフル三つのうちの一つCタイプを取る。高出力のタイプだ。

「ミルズ・ハワード・・・クロニクル発進する!!」

発進した特殊MS部隊は数十分飛び続け、次第に渓谷が見えてくる。

『よし、先陣は俺がきる。全機ついて来い!!』

「了解。」

一気に加速したヴァルキリーはビームサーベルで警戒していた連合MSダガーLを斬り捨てる。

その後にブレードが続き、ヒートソードで敵を切裂くとその頭上をエアが飛びぬけ、

ビームライフルでダガーLを撃ちぬく。そしてクロニクルも肩部ブーメランを投げ

二機を撃破する。

『このまま陽電子砲射程圏ギリギリまで突っ込むぞ。』

「了解。」

すると三機のダガーLが一気にクロニクルに襲ってくるのをビームライフルCで反撃する。

一発で二機を同時に撃ち抜き、ヒートソードで残りの一機を交差ざまに切り伏せる。

「よし!!」

そう言った時だ、高エネルギーの接近を知らせる警報が鳴り出す。

「なにっ!?まだ陽電子砲の射程圏じゃないはず。」

『ぼさっとしてないで避けろっ!!!』

クロニクルを蹴り飛ばしヴァルキリーが庇うと陽電子砲がヴァルキリーの右腕とブースターを抉りとる。

ヴァルキリーはどんどんと高度を下げ、地面に着地する。

「隊長っ!!」

『撤退だ、撤退しろ!!』

「でも隊長は!!」

『そんなのはどうでもいい!!命令だ!撤退するんだ!!』

そういわれても助けようとするクロニクルをブレードが押さえる。

操縦していたミルズは唇を噛みながらその場からクロニクルを退避させ

他の機体も撤退を開始する。

 

 

 

 

 

 

 

火花が散り、警報が鳴り響くコクピット内でノインは何とか動かないヴァルキリーを

動かそうとコンソールを弄り回す。

「ノイン、この機体はもう動きません、脱出してください。」

マリアが言うとノインは首を横に振る。

「マリア、お前を置いて脱出など出来ない!!」

その間にも連合のMSが動けなくなった“ヴァルキリー”に接近してくる。

「私はこのMSのAI、機械です。だから・・・・・。」

「違うっ!!お前も生きなきゃいけないんだ!!」

「でも・・・・・・。」

「俺は前に言ったはずだ、お前は使い捨ての機械じゃない、俺たちの仲間なんだ!!人間なんだよ!」

その時だ、接近してきていた連合のMSがビームライフルに撃ちぬかれて爆発した。

「なんだっ!?」

「これは・・・・・・クロニクルのビームライフルCです。」

マリアがそう言うと同時に軽い振動がコクピットを揺らす。ブレードとケルベロスが

ヴァルキリーを持ち上げていた。

『すいません隊長、どうしても先輩が隊長やマリアさんを置いて、撤退しないって言うもので。』

『ってことだから勘弁してね、隊長。』

「フッ、しかし陽電子砲は?」

『クロニクルとエアが引きつけてます・・・。』

 

 

 

 

そしてヴァルキリーを運び始めるが、十機の連合MSが接近してくるのをレーダーが知らせる。

ミルズは軽く舌打をし通信を繋ぐ。

「ケルベロス、ブレードはヴァルキリーの搬送に集中してくれ、エアはそれの護衛を。

俺は連合のMSを食い止める。」

『一機で連合のMS十機は無理だぜ。陽電子砲もあるんだぞ!!』

ルドルフの通信を強制的に切り、決意を見せるとエアがクロニクルから離れていく。

そして一気に連合のダガーLの編隊に突っ込む。

ビームライフルで一機葬り、横からビームライフルを撃とうとしていたダガーLに

ビームブーメランを投げつけ腕を斬りおとす。

そして一気に接近してきたダガーLのビームサーベルをヒートソードで受け止める。

その時、計器が高エネルギー反応を見てクロニクルがビームサーベルを払いのけ

その場を離脱すると陽電子砲の光がダガーLを巻き添えにしてその場を貫き爆発する。

「連合は敵を倒すためなら味方も巻き込むのかよぉぉぉぉ!!」

ミルズは頭の中で何かが弾けるのを感じ取った。

残りのダガーLが全機でクロニクルに襲い掛かる。クロニクルはその内の一機をヒートソ

ードで串刺しにして、遠心力を利用しビームライフルを撃とうとしていたもう一機のダガ

ーLに投げつける。ビームライフルを構えていたダガーLは間違えて投げられてきたダガ

ーLを撃ちぬいてしまい爆発に巻き込まれてしまう。

「このっ!!」

爆発の煙を抜け突っ込んできたダガーL三機の内の二機にビームブーメランを投げつけ、

残りの一機に投槍のようにビームソードを投げつけ撃破する。

そしてクロニクルはそのダガーLの爆発により発生した煙を利用し、煙に隠れたクロニク

ルを捜していた最後の二機のダガーLの頭部に掌底を叩きつける。

「終わりだっ!!」

掌底に装備された衝撃波発生装置がダガーLの頭部を吹き飛ばし破壊する。

『先輩、撤退完了しました。先輩も早く。』

「わかった。」

クロニクルは陽電子砲の次弾が来る前にその場を離脱し、マハムール基地へ帰還した。

 

 

 

 

ノインは基地に着くと修理を整備兵に任せ医療兵の制止を振り切り足早に司令室に向かう。

そしてノック無しに司令室に入り机に手を叩きつける。部屋では基地司令が司令官である

白い軍服の女性が話をしているところのようであった。

「どういうことですかっ!!あの資料はまるで違う!!危なく部隊全滅でしたっ!!」

「何を言っている、威力偵察なのだからそれもありえる話だろうが!!」

「ですが!!」

異論を唱えようとするノインの声を遮り女性が口を開く

「ちょっとその資料見せてくれるかしら?」

ノインが女性に資料を渡すと、女性は自分の持っている資料と見比べる。

「これは・・・・随分前の資料ですわね、私の持っている資料の方が正しいわ。

これはどういうことか説明していただけますかしら、司令?」

「いや、それは、だな、タリア艦長・・・貴女が持っている資料は特殊MS部隊が出撃した

後に手に入った物でな・・・・・・。」

「では、特殊MS部隊の威力偵察の失敗は資料の不備でノイン隊長、他隊員に不備は無

かったという事でよろしいですね?」

タリアと呼ばれた女性の鋭い目線に冷や汗をかきながら司令が頷く。

「それでは私も用事は済みましたので失礼しますわ。それじゃあノイン隊長

行きましょうか?」

「あ、はい。」

司令室を出てノインはタリアに頭を下げる。

「助言ありがとうございました。」

「いいのよ、基地司令の不備は明らかなんだから・・・・・それじゃあ私はこれから出撃だから

失礼するわね。」

歩いていったタリアを見送った後ノインはゆっくりとドックに歩き出した。

 

 

 

ミルズはその夜、戦闘の興奮が冷めず眠れずにいた。

そして昨夜と同じようにドックに向かう・・・・ヴァルキリーが基地に運ばれてからマリアも見ていなかった

ため心配でもあったのだ。

ミルズがドックに入るとそこには先客がいた。

「あれ、キッカにルドルフ、それにエリシアさんまで。」

『しぃ―!!』

キッカはヴァルキリーの足元に立ち、ルドルフは床に座り込み、エリシアは

ヴァルキリーに寄りかかっていたが全員が口に人差し指を立て“黙れ”のポーズをとる。

静かに近づくとドック入り口からは見えなかったがヴァルキリーの影で座り込んだマリア

のひざ枕でノインが静かに息をして寝ていた。

「ノインったら、帰還してから休まないでヴァルキリーの修理してたんですよ。」

ノインの寝顔を見ながら微笑むマリア。

「先輩、コーヒーです。」

「ん、サンキュ。」

ミルズはキッカから貰ったコーヒーを一口飲むとルドルフが口を開く。

「にしてもお前凄かったな、ダガーLを十数機も一機で全滅させてしまうなんてよぉ。」

「そうね、なんか相手の攻撃を先読みしていた感じで凄かったわ。」

「本当に凄いですよ先輩!!」

ルドルフの言葉にエリシアも頷き、キッカも褒める。

「いや、あの時は必死で実はあんまり覚えて無いんだ。」

「でも貴方が来てくれなかったら私もノインもやられてました・・・・・・

本当に感謝してます、ありがとうミルズさん。」

「いや、そう言われると照れるな、ハハハハハ。」

ミルズ達は戦場の事など忘れ、その場でしばらく話し続けたのだった。

ゆっくりと戦局が変化しているのに気づかずに・・・・・・。

 

 

PHASE-06

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