偽説:四国志

〜再生のための統一〜

 

 

 

 

「ふあぁ〜あ!!」

学ランを着た青年は眠そうな目を擦りながら学校までの道のりを歩く。

周りには同じように眠そうな顔をする男子生徒や、友人と談笑しつつ歩く女子生徒たち。

ここは平和な時代、ここは日本。

「道端で堂々と大あくびしてんじゃねぇよ♪司城!!」

後ろから走ってきた坊主頭にした同じ学生服を着た青年が、皮製の学生鞄で司城(つか

さき)と呼ばれたその青年の後頭部を思いっきり叩く。

しかし叩かれた張本人である司城は表情を変えず、リアクションも起こさない。

「あれ〜、司城?司城 慧く〜ん?うわっ!!」

坊主頭が司城の顔を覗き込むようにした瞬間、司城の腕がさりげなく坊主頭の首に回り、

一気にヘッドロックの態勢になる。

「俺は心が広いからな・・・怒らないでおいてやるよ、どうだ?俺って優しいだろ?な?慶次。」

「うげぇ〜、心が広くても体が俺のこと許し・・・てねぇ・・・・あ、ごめんなさい。

ギブギブ!!ギブアップ!放して下さい!!」

「フフ、なにやってんの、慶次君。君さ、空手部でしょ?」

そう言って二人の後ろから追いついてきたのは弓道用の弓などを抱えた細身の青年。

「げほっ!うるせえな、更来。慧の方が運動神経がいいし、父親から槍術を教えられてる

から強いんだよ!!更来、お前は射撃とか得意だし頭も良い。

俺だけ中途半端じゃねぇ?てか、俺可愛そうじゃね?」

「アホ・・・。」

慧がボソッと言うと慶次は、再びちょっかいを出すが、再び慧に黙らされる。

それを見て、更来が笑う。これがこの三人の毎朝の通学風景だった。

「・・・・ん?黒猫だ。珍しいな。」

三人の目の前に猫がいる。慶次がそれを見つけて指差すと慧は無言で猫の元に歩み寄り

撫で始める。

「そういえば慧君は動物大好きだもんね〜、あ、逃げた?」

見ると黒猫は近くにある林の中へと駆けて行った。

「残念だったな司城。そろそろ真面目に学校に行かないと遅刻だぞ・・・ってあの馬鹿、猫追いかけていきやがった!!」

「あははは、僕達遅刻確定だね♪」

「笑い事じゃねぇ!司城止めるぞ!!」

黒猫を追いかけて林へと消えていった慧を追って慶次と更来も林の中へと走りこんでいった。

二人がしばらく走ると、ある古ぼけた社らしき物の前に立つ慧を見つける。

「やっと追いついたぜ!!おい、司城、さっさと学校に行くぞ!今ならギリで遅刻免れるかもしれない!」

「・・・・・これは。」

「関帝廟だね、関羽が財神として祭られてるんだよ。確か中華街にあるのが普通だけど

こんな所にあるなんて、僕も初めて知ったよ。」

「関羽って誰だ?」

慶次が首を捻ると、慧が“ふぅ”と溜息をつく。

「関羽、字は雲長。美髯公と呼ばれる元となった長い髯が特徴の三国志に出てくる蜀の武

将だ。三国志では人気の有る武将の一人だな。」

「にゃぁ〜」

可愛らしいその鳴き声の聞えた方向を三人が向く。その声は社の中から聞えた。

その声に釣られるように慧は社の中へと入っていく。

社の中には1本の大きな薙刀が祭られていた。

「この薙刀は?」

ふいに慧がその薙刀に触れた瞬間、凄まじい光が薙刀から発せられる。

「慧君!!何、このすごい光り!?」

「司城!!どうした!?」

慧はそう言って二人が社の中に入ってきたのを視界の端に捉えたのを最後に視界が真っ白になった。

 

 

 

『救ってくれ・・・この世界を。』

慧の目の前には見事な髯を生やした古い時代の中国の武将が立っていた。

「あんたは?」

『我は関羽・・・・・・・頼むぞ・・・・救ってく・・・レ・・・』

「おい!!」

関羽と名乗った武将はゆっくりと慧から離れていき、それを慧は追いかけるが追いつけなかった。

そして再び凄まじい光が慧を襲った。

 

 

慧は小鳥の囀りにゆっくりと目を覚ます。

周りは木々が聳え立つ森林のようだ。

「自然一杯、いい空気だな。」

気がついた瞬間の慧の発言に、先に気がついていた慶次が慧の頭をどつく。

「アホか、ボケ!何、起きた瞬間自然を満喫してます的発言してんだよ?」

「アハハ、慧君はいつもこんな感じじゃん。それより、僕は気になることが二つあるんだよね〜。

一つ目はそれなんだけどさ・・・・・・。」

いつも通りニコニコしながら更来が指差した先、丁度慧が倒れていた場所の真横に、

関帝廟にあった大薙刀が突き刺さっていたのだ。

「おぉ〜、あと数センチで俺に突き刺さってるな。ってかこいつに触れたらすごい光が

放たんだよな。」

「なるほどな、その薙刀のお陰でこのわけ分からない場所に来たわけか。納得。」

「あははは、ってか慶次君は納得というより深く考えてないだけじゃん♪

まぁ今は確かにそんなこと考えてる場合じゃないみたいだよ、アレが気になることその二。」

指を指した先には小さな街があり、火の手が上がっていた。

「うぉぉぉぉ!!なんか火の手が上がってるぅ!!しかも時代錯誤MAXな中華風鎧つけ

た騎兵がなんかRPGに出てきそうな村人襲ってるぅ!!映画の撮影か!?いや、そうに違いない!」

「あははは、慶次君無駄にリアクションとらなくていいよ、てかウザい。

で、どうする、慧君。」

慧は“ん〜”と唸った後、立ち上がり大薙刀を地面から引き抜く。

「なんか騎兵の方が悪いっぽいし、村人っぽい人本当に切り殺されてるっぽい・・・このまま

人が殺されていくの見過ごすのヤダから助けに行こうかと考えた。

でも、実戦経験なんてないからな、まぁ騎兵が数騎だから対処できなくもないけど。」

「んなもん、悩む前に突撃ぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」

慶次は格闘器用のフィンガーグローブをつけて斜面を、燃え盛る村に向かって駆け下りていく。

それを見て慧は“ふぅ”と溜息をついて薙刀を構えつつ同じく斜面を下っていく。

「あはははは、選択の余地なさそうだねぇ〜。

ほんと、学生が何やってんだ、って話だけど確かにこのままじゃ目覚めが悪いよね。」

更来は普段どおりの笑顔を変えず袋から弓と競技用の殺傷能力なしの矢を取り出して後を追って行った。

 

 

 

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