第一話    絆【BOND】

第一話    絆【BOND

 

 

『ぬわぁ〜にぃぃぃぃぃぃぃ!!』
「あわわ〜だから〜前の整備の時にブースターの放熱フィンが不調で取り替えようと思ったんだけど他にもいろいろやる事があって替えるのを忘れてたんだよう〜ぁあ〜僕の頭そんな勢いよく振らないでぇ〜脳みそがシェイクされちゃうよぉ〜」
『ぬわにがシェイクされちゃうよ〜だぁぁ!!ソウスケ、お前がそう言う風に整備をちゃんとしないから俺とナナミは死にかけたんだぞ〜そのボケた脳みそは一回グチャグチャにしてもう一回作り直したほうがいいんじゃねぇかぁ〜!!』
俺が掴み掛かって頭を振っている男は日本防衛軍から一緒にココ(エジプト基地)に赴任してきた安藤 ソウスケという整備士だ。とろい、頭のねじが弛んでると他の整備士達からもお墨付きをもらっている、しかし整備の腕は最高なのにこういう重要な時に限って何かを起こす。たのむぜ〜まったく!!
「クスクス
「ナナミ〜そこで笑ってないでお前も何か言ってやれよ!!こいつのおかげで死に掛けたんだぞぉ〜」
「え〜と・・・その・・・今度からは気をつけてくださいね
「ナナミちゃ〜ん、キミはなんて優しいんだぁ〜シクシク」
目の前で俺の手から逃れわずか12歳の少女に泣きつく整備服の20歳の男・・・・、その男の頭をなでて励ます少女・・・・・。どっちが大人なんだか・・・・いやその以前の問題に、これでいいのか・・・・・ソウスケ。お前の精神年齢は12歳以下なのかよ・・・。同郷の俺はなんだかとても悲しいというかむなしいというか・・・・。

ココはエジプト基地内部、ユニットの第Cハンガー。前の戦闘の時のブースター故障の原因をソウスケに聞いたらこいつの整備ミスが原因だとわかった所だった。

「まぁとにかく先のミスを帳消しにする意味も込めて超高性能ブースター&ジェネレーターを【赤兎】に装備しといたから加速性能から最高速度までぐ〜んっと上がってるからね。偉いでしょボク」切り替え早く泣き顔から笑顔に変わりいばり散らしている。もうコイツとは付き合っていられないぜ・・・。
『ハッハッハッハ面白い漫才だな、少尉。』
「あっ!これは小隊長殿」
声に反応し振り返るとそこには小隊長と中国の民族衣装に身を包んだ男の子が立っている
「おっとそういやぁ〜自己紹介がまだだったな。俺は鳴海 ユウジ、知っての通り第一試験ユニット小隊の隊長だ。んでこいつが俺のパートナーの李 陽晃(リ・ヨウコウ)だ。よろしくな!!」陽晃と呼ばれた男の子は俺に向かって軽く会釈する
「こちらこそ!!昨日付けで第一試験ユニット小隊に着任しました、犬神 エイジと藤堂ナナミであります」
「え〜と、ボクは昨日付けで整備部に配属された安藤 ソウスケです。よろしくお願いしますぅ〜。」
そんな自己紹介を打ち砕く大声がハンガーに響く
『そんなに俺が気に入らないかよ!!』
『そうじゃないですよ!!私はただですねぇ〜・・・・・』
色黒な少年と痩せ気味の男が言い争っている
「あぁ、あそこで言い争ってるのがコードネーム【スナイパー】の佐脇 誠、滝 朗ペアだ。あいつらの言い争いはいつもの事だから気にしないでくれ。それから・・・・・」
『私がコードネーム【ソードマスター】の瑠 芳美(リュウ ファンメイ)よよろしくね少尉さん
『芳美、少尉さんいきなり後ろから声かけられるからビックリしてるじゃない。ゴメンなさい、私は芳美のパートナーで春風 ユイっていいます。よろしくお願いします』
彼女の言うとおり俺はめちゃくちゃ驚いた。やはり、この小隊の面々、キャラが濃い、濃すぎる。いきなり芳美が俺の腕を引っ張る
「ねえ、まだ町とかに出てないんでしょ?案内してあげるよ行こっ!」
すると小隊長が逆の腕を掴み
「その前に、基地の各お偉いさん方に挨拶に行け!」
芳美が俺の腕を引っ張る力を強くし
「そんなの後でもいいじゃないですか小隊長〜、ささっ町に行こうよ少尉〜。」
小隊長もひっぱる力をを強くし
「何を言っているんだ芳美!町の案内のほうこそ後でもできる、少尉!さっさと行くんだ!!」
「頑固小隊長!!」
「何を!!この暴走ガキンチョ!!」
うう!この二人の間で火花が散ってるような・・・・・・。それに俺は両方の腕をひッぱられすさまじく痛い。B.Cの子供たちは呆れ顔だ
『まぁまぁ芳美も小隊長も落ち着いて。少尉が腕を引っ張られて痛がってますよ。』
声の先にはさっき喧嘩していた『スナイパー』の佐脇 誠が立っていた
「誠さんは黙っててよ!!」
「誠は黙ってろ!!」
二人ともすごい顔で誠を睨んだので誠が一歩下がったのは言うまでも無い。にしてもこの小隊はキャラが濃い奴ばっかだなぁ〜付き合ってられん、まったく・・・・
「それでは俺は疲れているので部屋に帰ります。では、行こうかナナミ?」
「あっ!はい。」
そして基地をぐるっと見学した後ナナミと別れ、部屋に戻った。それにしても『スナイパー』コンビは何で喧嘩してたんだろう・・・・・・・。


熟睡していた俺を起こしたのは警報だった。くそぉ〜何が起きたんだ!!俺は軍服を着て廊下に出る。
「エイジさん、大変です!」
ばったり会ったナナミは慌てていた。
「どうした!?」
「敵ユニットが数十機コア内に侵入してきました!!」
「そんなバカな!!コアの入り口はこの周辺で一番堅い守りになっているはずだ!!」

【コア】、巨大な四角い核シェルターでその中に基地と町が入っている仕組みになっていてシェルター自身めったな事では破壊されず俺たちが基地に帰還する入り口は最低5機の守備ユニットに守られていて進入不可能なはずだった。

「誰かが手引きしたようです。住民の基地への避難はほぼ90%が完了。すでに他の小隊は出撃、私たち第一試験ユニット部隊にも出撃命令が出ています。」
俺はナナミの手を引きハンガーに急ぐ。くそっ誰だ!!手引きしたって奴は!!
いらいらするぜ、まったく・・・・・。
ハンガーに入るとすぐにソウスケを見つける
「おい!!ソウスケ!!【赤兎】は準備できているか!!」
「うん!今回は完璧だよ!いつでも出撃できるよ。」
「よっしゃ〜ナナミ、メインシステムに直結、【赤兎】を起動だ!」
「はい!メインシステム直結・・・・・・システムオールグリーン・・・・・、準備OKです」
「出撃するぜ!!」そしてハンガーを出て出撃すると小隊長から通信が入る
『遅い出勤だな少尉、作戦を説明するぞ、基地の守備は守備隊に任せ俺たちは中央広場で敵の迎撃だ!』
「小隊長!誰かが手引きしたと聞きましたが目星は?」
『いやまだわかっていない、その事は調査部に任せろ!!俺たちの任務は中央広場で敵の迎撃だ、いいな!?通信終了!!』
「了解・・・・通信終了」
という事はやっぱり市街戦になるのか・・・・・・あまり気の進まない戦いになりそうだな・・・・・。ふとそんな事を思いつつブースターを全開にし中央道路を突っ走る。すると後ろから巨大なブースター2基をつけた青龍刀を持ったユニット【剣舞】が横に併走してくる
『あら少尉、あなたも寝坊したんですか?』
「芳美、いや『ソードマスター』か・・・・・、まぁ寝坊のようなもんだ。」
『とりあえず急ぎましょう、少尉!!』
「あぁ!」
しかし目の前に敵ユニットが数機脇の道より出てくる。しかし芳美の機体はスピードを落とすことなく、むしろ上げていった。敵のアサルトライフルを見事に避け一番先頭にいた敵ユニットを真っ二つに切り裂く。そして二つの小さな爆発。そして二機三機と切り捨てていく
『このまま突っ切ります、援護お願いします!!』
「あ・・・あぁ了解だ」
しかし今度は後ろから数機追跡してくる。
「エイジさん!後ろより数機追ってきます!!」
「了解した、ナナミ。『ソードマスター』、先に行け!ここは俺たちがやる!」
『その必要はありません、少尉もこのまま中央広場に向かってください』
その通信とともにどこからかの狙撃により俺たちを追跡していた敵ユニットの一機が爆発する。
「『スナイパー』か!?」
『えぇ、後ろの追跡してくるユニットは私が引き受けます!早く中央広場へ!小隊長が自分一機で戦ってます!』
「なに!?たった一機でか!?おい、『ソードマスター』、スピード上げるぞ!!」
『了解〜』

しかし俺たちの援護は小隊長には要らなかったらしい。中央広場に着いた俺たちが見た物は敵ユニットの残骸の山とその中央に立つランスを持った茶色のユニット、そう小隊長のB.ユニット【鷹王】が立っていた
『おっ!やっと来たか寝坊組。敵が弱くてもう終わっちまったぞ、ハッハッハッハ
「も、もしかしないでもこの敵ユニット、全部小隊長が撃破したんですか?」
『おう!そうだぜ!』
マジかよ・・・・・こんな人数を一気に片付けてしまうなんて・・・・。俺は正直、小隊長が味方でよかったと思った。その少したった後他の場所でも戦闘が終わった。


で、俺は今高級レストランにいる、初めてのココでの戦闘前にナナミと約束した食事をってわけ。ナナミはレストランの感じにカチカチにおもしろいように緊張していた。
「フフ、そんなに緊張しなくてもいいって
「は・・はい、えと・・・えっとその約束守ってくれてありがとうございます。」
「ちょっと遅れてしまったけどな・・・・、あぁ、あとコレ、誕生日プレゼント。」
そう、【高級】レストランを選んだのもそのため。俺は足元においてある袋から包装紙に包まれた物を大小2つを取り出し渡す。
「えっ!いいんですか?なんだろう?あっ!コートだぁ〜かわいいこっちは日記帳?」
「おう!コートは似合いそうだったから、んで日記帳はやっぱこういう職業柄、過去を振り返るのも大切だろ、だから。」
そして俺とナナミの前に料理とシャンパン(アルコール抜き)が運ばれてくる。
「それじゃ〜ナナミ、誕生日おめでとう乾杯
「ありがとうございます。乾杯
そのあとレストランの感じに慣れてきたナナミと俺は雑談を重ねながら食事し3時間後店を出た


「美味しかったな
「はい、美味しかったです。今日は本当にありがとうございました。」
「いいって、ナナミの誕生日を祝っただけなんだから。・・・・・・あれ?あの走ってくる奴、ロウじゃないか?」
「あっ、本当だ。お〜いロウく〜ん!」
ナナミが呼びかけるが聞こえてるのか聞こえてないのかそのまま走り去ってしまう。そのあとを追って佐脇が走ってくる。
「おい佐脇!どうしたんだ!?」
「ああ!少尉。いえ、ちょっと・・・・。」
「ちょっとじゃねえよ、どうしたんだ?」
「聞かれてしまったんです・・・・」
「聞かれた?何を?」
そして佐脇は話し始めた

 

 

 

呼び出しに答え私は科学部研究室行ったのです

「お呼びですか?綺堂科学顧問・・・。」
「あぁ佐脇クンか・・・。よく来た。」
各部にはその部の最高責任者【顧問】がいる。科学部の顧問がこの綺堂 マモル。
B.C
の管理も担当している。
「ロウ君のことなんだけど、B.Cにしてはユニットとのシンクロ率も悪いし、あなたの狙撃の命中率にもひびいている。このまま行くとロウ君は処分される事になる。」
「処分ですって!?そんな・・・・・」
私の反論に綺堂顧問は眼鏡を軽く直し言う
「佐脇クン、B.Cはユニットの部品なんだ。消耗品なんだよ。部品だって使えなくなれば交換するだろ、それと同じだ。」
「しかしっ!」
「とにかく、次の戦闘で今以上の戦果がなければロウ君の処分申請を上に送る。いいな!?」
「っ!はい・・・・・・。」
そして科学部の部屋を出たらそこにロウがいて・・・・・・。



「その会話を聞かれてたって事か・・・・・・・。」
「はい・・・・・。それに毎回の事なんですが、すぐ意見のすれ違いでロウと喧嘩してしまうんです。それにロウは私と話すときなんか口調はいつも通りでも遠慮がちで・・・・・・どうすればいいんでしょう!?」
「あのぉ〜ちょっといいですか・・・・?」
「なんだい?ナナミ?」
「あの・・・・え〜とですね・・・・佐脇さんの言っている事少し間違っています。ロウ君は遠慮がちになんて話してはいないと思います。むしろ、そのですね・・・・あの・・・佐脇さんの方がロウ君のこと避けていると思います、いえ・・・・ロウ君を宝石のように大切に、傷つけないように一歩引いているという感じですか・・・・・。」
「ロウの事を大切に思って何が悪い!!」
ナナミは『ごめんなさい!』と言って俺の後ろに隠れる
「おい!そんなに怒るなよ佐脇!」
佐脇はハッとして『スイマセン』といい黙り込む
「それで?ナナミ、続けてくれるかい?」
「・・・・・はい。えっとですね、ロウくんは佐脇さんに大切にされなくてもいいんです。いえっ!佐脇さんが嫌いとかではなくて、その・・・・・・・、ロウ君は佐脇さんと兄弟になりたいんだと思います、『大切にする』という壁はイラナイからお互い隠し事も無い兄弟になりたいんです・・・・・・・私はエイジさんに妹のように可愛がられてとても嬉しいです。でも『ただ』大切なだけだったらロウ君みたいになってしまうと思います。」
『兄弟ですか・・・・・・。』
そう言い黙り込んだ佐脇の背中をポンと叩いてやり言ってやる
「行ってこい佐脇!ロウはお前が追ってきてくれるのを待っているはずだぜ!」
『はい!!』と言って佐脇は走っていった
「ロウの事はあいつに任せて大丈夫だろう、帰ろうか、ナナミ。」
「あの・・・・ちょっとよりたい所があるんですけどいいですか?」
そして歩き出したナナミについて行くと『コア』内にできた人工の湖が見渡せる丘まで来た
「ココ、私好きなんです。湖が見渡せて声がなぜかとても響く・・・・」
「そうか・・・・。」
「あのっ!エイジさんに歌を聞いてもらいたいんです。Y.A連邦で作られた歌なんですけどとても綺麗な歌なんです。今日のお礼もかねて・・・。」
「そうかい、いいよ歌ってごらん。」ナナミの顔がパッと明るくなる
「はい!それでは・・・・・
 Freude, schöner Götterfunken,Tochter aus Elysium,
Wir betreten feuertrunken, Himmlische, dein Heiligtum!

Deine Zauber binden wieder, was die Mode streng geteilt;
alle Menshen werden Brüder, wo dein sanfter Flügel weilt♪
・・・・・」
ベートーヴェンの『第九』か・・・・・・ふとそんな事を思い湖を見るとロウと佐脇が手を握り合って笑っているのが見えた。
Wem grosse Wurf gelungen,Eines Freundes Freund zu sein,
Wer ein holdes Weib errungen,Mische seinen Jubel ein!
Ja, wer auch nur eine Seele sein nennt auf dem Erdenrund!
Und wers nie gekonnt, der stehle weinend sich aus diesem Bund

Froh, wie seine Sonnen fliegen,durch des Himmels prächt'gen Plan,
laufet, Brüder, eure Bahn,freudig, wie ein Held zum Sigen.

ナナミの声がコアの天井に向かって、湖に向かって響く。佐脇達にも聞こえるだろうか・・・・『Wem grosse Wurf gelungen,Eines Freundes Freund zu sein,(一人の友人を得るという
大きな賭けに成功した者よ)、laufet, Brüder, eure Bahn,freudig, wie ein Held zum Sigen.(兄弟達が己〔おの〕が道を駆け抜ける、勝利に向かう英雄のように喜ばしく。)』

その日は珍しく出撃もなくナナミの歌の中ゆっくりと時間が過ぎていった。


第一話END

 

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