第二章 崩壊【BREAKDOWN】
「10時、2時方向に敵機です!!」
「ちぃ!何機いるんだ!!むやみに突っ込んできやがって!」
【赤兎】のガトリング砲が火を噴き突っ込んできた敵機を撃破する、これで30機目だ・・・・・。そしてカラカラと音をたててガトリング砲が自動的に止まる
「弾薬が切れました・・・・・エイジさん、いったん基地に戻りましょう。」
「そうだな、ナナミ。・・・・・基地本部、こちら第一試験ユニット小隊所属【赤兎】、弾薬補給のためいったん戦線離脱します。」
『こちら基地本部、了解しました。現在第一通常小隊がそちらに向かって行ってます。引継ぎをして帰還してください。通信終了』
「通信終了っと。さて基地に戻って少し休もうな、ナナミ。」
そして基地に帰還した。
現在戦闘が始まって三日目・・・・・・敵ユニットは量に任せて突撃してくる。まるでそれしかできないようなそんな感じ。倒すのは容易いがやはり量が多いと弾薬消費が激しい。戦果はもう撃破敵ユニット数各小隊合計300機は優に超えている。まさに敵は死を恐れない特攻をしているようだった・・・・。
「おつかれぇ〜エイジ、ナナミちゃん♪整備している間少し寝たらどうかなぁ〜?」
ハンガーに戻るとすぐさまソウスケが整備器具を持って走ってくる
「ああ!ソウスケだって次から次へとユニットの整備大変だろう」
「そうですよ、ソウスケさんこそ少し眠った方がいいのではないでしょうか?」
ソウスケはテレながら言う
「エヘヘ、でもパイロットよりは楽だからね、もう少し頑張るよ。それで整備ついでに要望はあるかい?」
「そうだなぁ〜脚部の移動用ローラーが磨り減ってるから変えてもらえば嬉しいな。」
「私も一つ。右腕の骨格部分の反応が5%ほど鈍ってきてるので調べてもらえますか?」
「うん、わかった。交換と点検だね。やっておくよ。他のユニットの整備もあるから三時間くらいかかるし、二人とも休んできなよ。」
そして通路に出てナナミと別れ、自分の部屋に戻りベットに横になったのはいいのだが・・・・・
「眠れない・・・・・ってか戦闘直後で寝れる方がおかしい・・・・・・・・・・・・・・・、しゃぁ〜ない、酒でも飲みに行くか」
バーに入ると誰もいなかった、まぁ住民は戦闘中は基地に避難することになってるから当たり前だが・・・・・・・。ふと見回すとカウンターの後ろの棚にウイスキーのボトルがあるのを見つけ手に取ると半分ほど残っていたので一気に飲みきる
『おうおう、言い呑みっぷりだこって。』
「わぁ!なんだ、小隊長ですか・・・・。」
バーの入り口には小隊長が立っていた
「なんだ、はねぇだろぉ、まぁいいけどな。」
小隊長は棚から慣れたように日本酒のビンを取り出しグラスに注ぎ一気に飲む。そして俺にビンを差し出す
「あっ、頂きます。」
「なぁ少尉・・・・最近の敵さん、変じゃないか・・・・。」
「変・・・・・、そうですね、敵ユニットの戦闘のパターンが大体同じで、しかも黒鬼、白鬼級のエースも出てこない。」
「実は今さっきココに来る前に聞いたんだが、ここ三日で攻めてきた敵ユニットの90%以上がAIによる自動操縦、つまり無人で動いていたんだ。AIだから同じパターンの攻撃しかできないってなわけ。そこで一つ疑問が沸いてこないか?」
「AIを使っている分の人員をどこへ使うのか?」
「そうだ・・・・、少尉はどう考える?」
「そうですね・・・・・・・・、人員が不足・・・・?いや違う、Y.A連の中で何か起きた?ありえるけどそれならばAIとはいえユニットを大量投入する余裕はない・・・・、となると・・・・・他のAI搭載の自動操縦ユニットでココの前線は押さえつけて、他の戦線に戦力を回した、これが一番有力ですね。回すとしたらアメリカ戦線、いや・・・・・ロシア・中国戦線ですね。」
ロシア・中国戦線は亜連の最終防衛ラインと言っても過言ではない。なぜなら技術は日本中心だが物資に関してはほとんどが中国中心だ。それに中国には【放射能除去装置】がある。確実に守らなければならない場所だ。
「お前もそう考えるか・・・・・・ん?」
小隊長の通信装置が鳴りなにやら話し出す
「あぁ俺だ・・・・・・そうか・・・・なに!?・・・わかった。こちらで何とかしておく」
そして通信装置を切り俺の方を見ていう
「やはり俺たちの予想通りロシア・中国戦線の敵攻勢が強くなったそうだ。」
「そうですか・・・・では私たちの小隊もそちらに送られるかもしれませんね。」
「そうだな・・・・お前は行けないがな・・・。」
「え!?」
驚いて小隊長を見るとこちらに銃を構えていた
「小隊長、何の冗談ですか?」
「すまないが冗談ではないんだ、前、基地への敵ユニットの侵入の手引きをした犯人を調査部が判明させた。犯人は、B.ユニット【赤兎】専属整備士《安藤 ソウスケ》。調査部が安藤を逮捕しようとしてハンガーに向かったが安藤は【赤兎】と共に行方を眩ました。そしてお前は安藤と同じ時期に赴任してきた事や個人的に親しい事から共犯者として捕縛命令が今出された。」
「そんなバカな事!?・・・・・・グッ!」
反論を言おうとした時、首筋にすさまじい衝撃が走り
「クソッタレが・・・・・」
俺は意識を失った。
「・・・・・・・・・ィツツツ。ったくまだ首が痛いよ・・・・。」
俺は首をなでながら周りを見渡す。窓の無い壁が立つ牢屋・・・・・。
自分の服のポケットを探るが当然ながら何も入っていない・・・・もちろん没収されてしまった。
「あぁ〜あ、それにしてもソウスケの奴が敵のスパイだったなんてな、ショック大きいぜ。・・・・・・・ん?」
誰かが入ってきた。
「よう!少尉、元気にしてるか?」
「私に銃を向けたあなたがよぉ〜くそんな事言えますねぇ〜小隊長。まだ首が痛いですよ、ズキズキしますよ」
「ハッハッハ、陽晃のチョップは効くだろう。おっとそうだった、ホレ!差し入れだ。」
渡されたのはおにぎり一つ。
「小隊長・・・・・思いっきり俺の事バカにしてるでしょ。それにそっちの箱はなんですか?」
「ハッハッハ、バカになんかしてねぇよ、食っといた方が正解かもよ?あとこれか?これは一分後に交代でココに来る看守への差し入れだ。まぁ、看守用の机に置いとくから取れたら中を見てもいいぜ、じゃあ俺は帰るぞ。」そしてさっさと出て行ってしまう
「小隊長のばかやろ〜う♪」
おにぎりを半分にすると中から小型の爆弾がでてくる
小隊長の言葉を俺流に訳すと
『おにぎりの中にある高性能爆薬で牢の鍵を壊して、看守が戻ってくる一分の間に逃げ出せ、武器は看守用の机の上に置いてある箱の中だ。』
俺は牢の鍵の部分に爆薬を詰めて爆発させる。ボンという音と共に鍵が壊れ外に出て箱の中身を確認すると麻酔銃。
「お前!!脱走か!!くそ、誰かを呼んで・・・ウッ!!」
とりあえず戻ってきた看守を眠らせる。
さて、次に、
「ナナミはどうなったのか調べないとな・・・・・。」
その時警報が鳴り、基地内がランプの光で赤く染まる
「なんだ!!脱走がばれたのか!?」
「違うよ・・・・・。」
「あっ!あなたは確か・・・・・」
目線の先には白衣に眼鏡着をつけた男が監房の入り口に立っていた
「綺堂 マモルだ・・・・・科学部の顧問をしている。」
「それでは綺堂顧問・・・この警報はなんですか!?」
「ふむ、敵ユニット軍団の第三陣が来たという所だ。ちなみに私が独自に索敵した所、敵の数は前回の倍、敵の指揮ユニットは【赤兎】と判明した。」
「なんですって!!その事をみんなは!?」
「私が独自に検索したと言った筈だが・・・・?」
「知らせに行かなきゃいけない!!」
俺が走り出そうとすると綺堂顧問の手が俺を止める
「離して下さい!!」
「もう他の奴らは出撃した。無線もすでに妨害電波が出されて基地からは交信できん。お前は徒歩でユニットに追いつく気か?流れ弾なんかに当たって死ぬだけだぞ。」
「そんなこと言ったって行くしかないでしょう!!【赤兎】の力は俺が良く知ってます!」
綺堂はやれやれという顔でこちらを見る
「藤堂ナナミはこちらの意図をすぐに察してくれたのだがな・・・・・まったくどっちが大人なのだか・・・・。」
「意図?ってかナナミは無事なのか!!おい!答えろ!」
「そういきり立つな、藤堂ナナミはこちらで保護しすでに第一ハンガーで【黒兎】〈コクト〉の起動設定準備をしている。」
「黒兎??」
「B・ユニット【黒兎】・・・・・【赤兎】のプロトタイプだ・・・・・。」
「プロトタイプ・・・・・・。」
「あぁ、【黒兎】はあらゆる亜連の最新研究機器を積んだ超高性能ユニットだ。しかし操作難度が高く、試験型ブースターの使用によりすさまじいGがパイロットに掛かる。ついに扱いきれるパイロットがいなかった為使われなくなった第一ハンガーに格納された。【赤兎】はその問題を解消して操作性のアップと通常ブースターの使用による速度とGのダウンさせて扱いやすくしたユニットだ。」
「じゃあ俺に黒兎を操縦しろと?」
「ああ、いまユニットで動けるのは【黒兎】だけだからな・・・・・。まったく、鳴海の頼みじゃなければお前なんかに貴重な研究ユニットを渡しはしない。」
「小隊長の?」
「鳴海と俺はとりあえず幼馴染でな。あいつには借りがいくつもある。そんな事はいいが早く行った方がいいのではないか?」
「そうだ!!第一ハンガーでしたね!失礼します!」
綺堂は走り去って行く俺の後姿を見てポツリと言った
「まったく・・・性格どころか後姿まで鳴海に似ているとはな・・・・。」
そして研究室に戻っていった。
「ひゃ〜古いな〜!」
第一ハンガーを見てまず思った俺の率直な感想だ。鉄筋の建物だが錆がすさまじかったりシャフトが折れてたり屋根は穴が開いている。
崩れないか、という思いと共に中に入る。
「っ!!エイジさん!!」
システムの設定をしていたナナミが俺に気づき抱きついてくる
「エイジさん・・・・・よかったぁ・・・・。」
「ナナミ、迷惑かけたなぁ〜。」
俺の胸に顔を押し付けながら首を横に振る、しかしナナミの肩が小刻みに震えている。泣いているのだろう
「ナナミ、いいか?そろそろ行かないとみんなが危ない。」
「はい・・・・。システムチェックは出来てます。すぐに出撃できるはずです。」
「あれが【黒兎】・・・・・・。」
俺が見上げた先には全体的な形は【赤兎】と同じだが武装や装飾が違う。黒、真っ黒ですべてを飲み込む黒の装甲、ヘッドには兎の耳のように長めのセンサー、武器は左手にシールド付きガトリング砲、右手には接近戦用のダブルのアーミーナイフが装備され両肩に垂直発射型ミサイルが装備されている。
「よし!!行くか、ナナミ!?」
「はい!!」
そして【黒兎】を起動させる。
「なぁ〜ナナミ、ハンガーの入り口をいちいち開けて出撃するのってめんどくさいからガトリング砲で吹っ飛ばしていいかなぁ〜?」
「クスクス、いいんじゃないですか?だって私もエイジさんも脱走兵ですよ?」
「ハッハッハッハ、それもそうだな、うっし戦闘モード起動・・・・・・武装起動。」
「了解・・・・メインシステムにアクセス・・・・武装起動します」
そして轟音と共に入り口をふっとばす。サイレンが鳴るが敵軍との戦いで出払っているため【黒兎】を遮る者は無い。そのままブースターを点火し一気にスピードを上げる、それと同時に俺やナナミにすさまじいGが掛かる
「クッ!なんて加速だっ!!ナナミ!大丈夫か?」
「・・・・・・っはい!なんとか・・・・。」
「よし!スピードを上げるぞ!・・・・ナナミ、コアのメインシステムにハック!!門を開けろ!!」
「はい・・・・コアメインシステムにハッキング開始・・・・・・・・・ハッキング成功!門を開けます。」
目の前で巨大なコアの門が開いていく。
しかし門を過ぎた所で待っていたのは10機以上の敵AIユニット・・・・・。
「ナナミ・・・・小隊長達が戦闘しているところを検索してくれ。その間にこのポンコツ野朗どもをぶっ壊す。」
「わかりました。」
その時敵ユニットのユニット用騎兵銃が火を噴く。
急いで横に回避、それを追って他の敵ユニットも射撃を開始する、しかし照準が【黒兎】のスピードに追いつけない。俺は【黒兎】のブースターを一気に最高スピードまで上げ近場にいた敵ユニットに突っ込む、相手が接近戦用武装を取り出す前にダブルアーミーナイフでボディを貫く。すぐさま抜きまた回避行動、さっきまで【黒兎】が居た所が弾丸により抉れる、俺はちょうど目の前にいた二機の敵ユニットをガトリング砲で撃破。
「・・・・・・エイジさん、小隊長と繋がりました。でも妨害電波のせいであまり通信状況は良くありませんが・・・。」
「わかった、繋げてくれ!」
『・・・・・れだ・・・・誰だ!?』
「小隊長!こちら【黒兎】、エイジです!聞こえますか?」
『少・・・か?どうした!こっちは戦闘中なんだ!お前はさっさと逃げろ!!』
「そんなわけにはいきません!敵に【赤兎】がいるんです」
『赤兎がな・・・だっ・・・・ガガガガガッ』
「小隊長?小隊長!?」
「エイジさん、通信が切れました。」
「クソッ・・・・・・クッ!」
通信に気を取られ敵ユニットのタックルを食らう。いつの間にか囲まれていた
「ナナミ!通信はもういい!戦闘の方を手伝ってくれ!!」
「わかりました!」
敵ユニットがランスを取り出しまっすぐ構えブースターで突っ込んでくる
回避するためブースターを使い垂直にジャンプそして
「ナナミ、下にいる雑魚どもに多重ロックオン!」
「えっ!?わかりましたロックオンします・・・・・ロックオン完了」
「うっし!!垂直発射ミサイル・・・・発射!!」
【黒兎】の背中から発射されたミサイル数十発が下にいる敵ユニットに雨の様に降り注いだ。ジャンプから着地すると敵機は原型が無いほどに破壊されていた。
「さてナナミ、レーダー索敵範囲を広げて【赤兎】を探せ!!」
「はい!・・・・・・・索敵中・・・索敵中・・・・見つかりました、やはり敵本隊の奥にいます・・・・・・あっ!敵本隊に一小隊突っ込んでいきます、まさか!!」
「ぁはは……まさかといわなくても小隊長たちだろうなぁ〜そんな無茶するのは・・・・。こりゃ〜急がなくちゃな!」
そしてブースターを全開にした・・・・・。
「敵ミサイル郡来ます。」
「ふん!あたりゃ〜しね〜よ!!」
陽晃の警告を流し、小隊長はさらにブースターの出力を上げ突っ込む、ミサイルが続々と飛んでくるのを避ける。
『小隊長〜飛ばしすぎですって〜』
「何言っているんだ、スナイパー!!ソードマスターは俺より飛ばしまくってるぞ!!」
そう、小隊長のユニット【鷹王】よりずっと前に【剣舞】が突っ込んでいた。
「イヤッホ〜!!」
「ちょちょっと〜芳美!!突っ込みすぎなんじゃない!?」
「何言ってるのよ、ユイ、このユニットは接近戦が得意なの!!」
「それはわかってるけどさぁ〜小隊長とか追いてっちゃってるよぉ〜!!」
「大丈夫でしょ。スグ追いついてくるって♪はい今日20機目!!」
敵長距離用ユニットの懐に入り込み真っ二つに切り捨てる。爆発。
次々と長距離用ユニットを斬り捨て敵のミサイルの雨が止む
「へへっ!楽勝ね!」
「芳美〜油断するのはまずいと思うよ、ココは戦場だし・・・・・。」
「わかってるよ〜クゥッ!!」
「キャア!十時の方向からの砲撃!・・・・・まずいわよ芳美!!ブースターが爆発しかけてる!!」
「わかってるわよ!ブースター強制排除!!この場から一旦離脱するわよ!!」
そしてその場から離れると切り離したブースターが爆発する
「ユイ、索敵開始!それから小隊長達に敵狙撃ユニットがいるから注意してと伝えて!!」
「わかった!索敵開始するわよ・・・・・・・・・・・・・・・・」
「索敵まだ!?クッ!」
またどこかから射撃を受けてしまう。
「止まらないで回避運動を続けてよ!いま探してるから・・・・・・・見つかった!!ココから三時の方向の森の中!!」
「わかったわ!!いっけぇ―――――!!」
【剣舞】の青龍刀をブーメランのように敵がいる森に投げる!投げた青龍刀に斬られたのか森の奥で爆発音がする。
「敵ユニット反応消失!やったね芳美♪」
「当たり前よ♪私と剣舞を舐めないでよね!」
「何言ってるのよ、私の索敵のおか・・・・・えっ!?ロックオン反応!きゃぁぁ!!」
森の中から攻撃が来て当たる
「なによ!まだいるんじゃないの!!回避運動!!・・・・・・・・・あれ?脚部が動かない!!ユイ!?」
「ちょっと待って!!・・・・・!今の攻撃が脚部に、それも弱い関節の部分に被弾、脚部が使い物にならない!!」
「そんな!?小隊長たちは!?」
「まだ追いつくまで時間か借りそうよ!!、あっ!敵ユニットが近づいてくる、あ、あれは!?」