偽説:四国志

〜再生のための統一〜

 

 

 

 

「・・・・・・この街、人っ子一人いないな。」

匈奴の部隊120人を預かった匈奴の武将・・・去卑は腰にかけた袋から木の実を出し口の中に入れ噛み締めながら、

馬上から街を見渡し呟いた。

偵察に出した兵達が次々と戻ってくるが答えは全て「住民が一人もいない」だった。

「我々の軍を見ていち早く逃げたか?」

去卑が再び木の実を口に含んだとき、最後の兵が大声を上げつつ帰ってくる。

近くの山で住民を見かけたという報告だった。

去卑はガリッと木の実を噛み、剣を抜いて剣先をその山へと向けた。

「なるべく殺すな、捕虜として連れ帰るのだからな!!いくぞ!!」

匈奴の部隊は街から山へと進軍していく。

そして山の麓まで行くと、そこには数人の農夫が目深に頭巾を被り立っていた。

農夫達は匈奴の部隊を見ると慌てて森の中へ駆け込んでいく。

「追え!!逃がすな!!」

兵達は去卑の掛け声に一気に森の中へ駆け込んでいくが、しばらくすると農夫を見失ってしまう。

「何処へ逃げた?・・・よし、私の護衛を残し散開して捜索しろ!!」

兵はゆっくりと森の中を捜索すると一人の農夫を見つける。

そして農夫に向き直り1歩を踏み出した瞬間、何かを踏む。1本の綱・・・。

兵は綱の続く先をゆっくりと目で追っていくと・・・そこには巨大な丸太が自分へ向かってきていて・・・・・。

綱によってぶら下がっていた巨大な丸太が振り子の要領で襲い掛かり、兵数人を吹き飛ばす。

また、ある兵達は落とし穴にはまり・・・また獣用の罠で吊り上げられ、掴まれ身動きが取れなくなる。

周りで兵達の悲鳴が多数聞えて去卑は慌てて見回す。

先ほどまで見えていた兵達がどんどんと罠にはまっていき視界から消えていくと、去卑は

顔を引きつらせつつ馬を翻させ、一気に元の道を戻り始める。

兵達もそれに習い、去卑の後を着いて行く。

そして視界に太陽の光が差し込み、出口が近い事を知らせ・・・・森から飛び出た。

そこに待っていたのは・・・・弓矢を持った臧覇とその子分達。

去卑は包囲されていた。

「しまった!?こちらが本命かっ!?」

去卑が驚いたときにはもう遅かった・・・。

臧覇の合図と共に多数の矢が放たれ、去卑の兵達は討ち抜かれて絶命していく。

「ひ、退けっ!!本隊に合流するぞ!!」

去卑は包囲の薄い所から命かながら逃げ出していく。

その様子を山の見渡しの良い場所から見ていた慧が後ろを振り返る。

そこには蔡エンを含む街の人々が寄り添うようにして集まっていた。

「避難前に言ったとおり、分隊は追い払いましたが、おそらく逃げた奴が本隊に報告して

本隊・・・もしくは先ほどより遥かに多い軍勢がやってくるでしょう。

そうなれば押さえきれません。

では皆さん、手はず通り袁術軍の駐在している街まで移動します。

もう、しばらくはこの街には戻って来れないと覚悟して、今から街に戻り荷造りしてください。」

やはり命が大切だと分かっているのか街の人々はゆっくりと街へと向かっていく。

それを見届けた慧は更来に捕虜の回収を頼み、山の麓にいる臧覇に向かって叫ぶ。

「臧覇!街周辺を警戒してくれ!!」

『任せてくだせぇ、兄貴!!』

 

 

 

 

「で、逃げ帰ってきたわけか、30人の部下を殺され、囚われ、のこり数十人も散りじりになって・・・・去卑?」

「は、はい・・・劉豹様・・・。」

去卑が膝を地面に着き、見上げる先には見事な髯を蓄えた長身の男・・・・匈奴軍総指揮官・・・左賢王・・劉豹。

ここは匈奴軍の拠点・・・・次々と小隊がこの拠点に奪い取った捕虜や金銀財宝を持ち帰る。

そんな中・・・なんの戦果もなく、しかも部隊が壊滅した状態で帰ってきた去卑は劉豹に直々に呼び出されていた。

劉豹はゆっくりと腰にかけている剣の鞘に手を触れ・・・・・

「お待ちください!!もう一度だけ挽回の機会を、劉豹さ・・・。」

劉豹の振り下ろされた剣によって去卑は物言わぬ物となった。

「去卑殿の死体はいかがなさいますか?」

近くにいた大柄の男に問われた劉豹は“ふん”と興味なさそうに鼻を鳴らす。

「放っておけ・・・須卜骨・・・お前は兵300を率いてその街を焼いて来い・・・。俺は本隊と共に先に帰る。」

須卜骨が了承のため膝をついてお辞儀をするのも見とどけずに、劉豹は自分の愛馬に飛び乗ると、まだ血のついた剣を空に掲げ叫んだ。

「全軍進路変更っ!!戦果は収めた・・・故郷に帰還する!!」

『うおぉぉぉぉぉぉ!!』

1000を越える兵達がそれに答え雄たけびを上げた。

しかし劉豹は自分の部下の小隊を、それより遥か少ない人数で追い返した名も知らぬ指揮官に敬意と・・・・

そして次の侵攻の際は自らの手で再戦を・・・と思っていた。

 

 

 

小屋に収容された去卑の兵達・・・・捕虜にした兵達に向けて更来はいつもの笑顔を浮かべて口を開く。

「ごめんなさい、手ごろな牢屋とかないんで小屋に入ってもらうことになりました。

きっと貴方達の後続部隊が助けに来てくれるでしょう。」

そう言ってその場から離れようとした更来に一人の捕虜が声をあげる。

「ちょっと待ってくれ!!こんな小屋に捕虜を入れるなんて変だ!!ここならすぐに脱出できるじゃないか、何を考えている?」

捕虜全員が同じように声をあげる。

「別に何も。暴れられると面倒だからここに入れているけど、実際逃げちゃっても良いし、

ここで何をしようが構わない。ただし、ここの人達に危害を加えたら・・・許さないよ?」

普通とは違う、寒さを感じるような笑顔を更来が浮かべると、捕虜たちは一斉に静かになる。

しかし、更来は小屋から出るときに、捕虜の呟きを聞いていた。

“どうせ殺される”・・・・・・・・・・と。

 

 

「で、どうするんだよ、これから。」

慶次と慧は街の出入り口付近で今後の事について話していた。

「とりあえず街の人々を安全な所まで護送したら、前に言った通り劉備さんに会う。」

臧覇達はどうするんだ?あいつらは完璧お前の子分になる気満々だぜ?」

「あいつらは何かしら理由をつけて避難先で別れる。俺達は山賊をやるわけじゃない。」

「いい奴らなんだけどなぁ〜。」

慶次の言葉に“あぁ”と頷いた慧の視界に驚きの光景が見えた・・・街の一部から煙が出ていたのだ。

慧と慶次は煙の上がる場所へと走る。

「おいおい、捕虜がやったのか!?」

「いや、それはない。半分自由にしているとはいえ更来が監視しているはずだ!!

慶次、お前は臧覇達を呼んで来てくれ。」

「あいよ、任せろ!!」

慶次と分かれた慧は一目散に煙の上がる場所へと走っていく。

すると案の定火が上がっており、その炎の前には蔡エンが立っていた。

「蔡エンさん、この火は一体!?」

「あ・・・慧さん。えっと・・・その・・・書物を燃やしているんです。・・・蔵に・・あった・・。」

「なっ!あれは貴女の父親が集めた・・・貴女にとっても大切なものだろ?」

「そう・・ですけど・・・・、持って行けませんから・・・・・。」

“でも・・・”と食い下がる慧に蔡エンは苦笑する。

「また書けばいいんです・・・・内容は・・・すべて・・覚え・・てます・・から。」

その言葉に慧は口をあんぐりとする。

「すべて覚えてるって・・この蔵にあった見た感じ数百は在る書物全部か?」

「はい・・・、なんなら・・・その・・・何か書物の・・・内容・・・・を・・・言いましょう・・・か?」

“でも”と蔡エンは言葉を続ける。

「父・・・・の形見でも・・・ありましたか・・らちょっと・・悲しいです・・ね・・・。」

そう言って苦笑する蔡エンの目に涙が溜まっているのに慧は気づいていた。

そして、それを見て何故か無性に悔しくなっている自分に驚いていた。

 

 

 

「はぁ・・・はぁ・・・この私が・・・何故・・・このような・・・・。」

少女は白い馬に乗り走った・・・・普通の民ならば一生手に入らないような高価な服をボロボロにし・・・走った。

少女の耳そばを矢が通り過ぎていく。少女の背後からは十数騎が砂埃を上げて追っていた。

少女の名は董白・・・・献帝を擁し、宮廷で権勢をほしいままにした今は亡き(192年初平3年7月)董卓の孫娘であった。

 

 

C     E

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